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1人で王都ダンジョンへ潜るようになって、まず優先したことが狩場を決める事だった。
浅瀬の手前はムカデが。
奥は倒せはするものの数が多く、1人で狩りをするのは少々危険。
中々いい場所が無い…とウロウロしていた時に見つけたのが、上層へ繋がる中で一番外側の通路だ。
少し開けた場所で、そこで出る魔物は少し小さいサイズのゾウ位のデカいウシ。
他の冒険者と戦っているのを見たが、数は少ないが力が強く足も速く、小回りは利かないものの、巨体に見合う体力もある中々の強さだ。
上層へ遠回りということもあり、あまり人気は無いようでほとんど人がいない。
俺にはうってつけだ。
というわけで、しばらくそこに通っていた。
倒す数が少ないからペースは落ちるが、周りを気にすることなく、順調に聖貨を貯める事ができた。
「むっ⁉」
目標数に到達し、ウキウキで帰還していたところ、視界の隅に今まで見たことの無い発光を感じた。
何となく嫌な予感がし高度を下げたところ、天井が爆発し同時に左肩に強い痛みを感じ【浮き玉】のバランスを大きく崩した。
「うぐっ⁉」
痛みをこらえ何とかバランスを取り戻そうともがいていると更に太ももに強い痛みが走り、【浮き玉】ごと落下した。
「ぐぇっ⁉」
肩は焼け焦げ太ももは矢でえぐれ血が流れ、地面に血だまりを作っている。
そして倒れ伏す俺。
何が起こったのかと思ったが、痛みと血を見てようやく攻撃を受けたことを理解した。
最初のあれは魔法か…。
「だっ…大丈夫か⁉」
「だいじょーぶじゃねーよ…」
男たちの声に何とか返す。
「すっ…すぐ治療するからな!大丈夫だ任せろ!」
よく見えないが、声と何やらドタバタしていることから随分慌てている様子がわかる。
とりあえず治療してもらえるようだ。
結構シャレにならない怪我だが、この世界の魔法を始めとした治療は、病気はわからないが、怪我や毒にはとにかく効く。
このまま死ぬ事は無さそうだ。
でも知ってるぞ!
攻撃して来たのお前らだろう‼
◇
アンデッド。
死体に魔素が宿り、本能のまま生物を襲うゾンビ。
魂が魔素と混ざり合い、ゾンビと違い知能があるレイス。
人間、動物、魔物の区別無く生物に襲い掛かってくる。
通常の武器では効果が薄く、魔法やガチャ産の武具、魔道具といった物でなければまともに戦えない、強力な魔物だ。
死体が消えてしまうダンジョンには存在せず、外にのみ存在する事が特徴で、魔境や戦場、稀にスラムなどにも現れる事がある。
最初聞いた時の感想は、魂ってあるんだ…だった。
ただ、ここ最近王都のダンジョン浅瀬にアンデッドが現れた。
凄まじい速度で空中を動き回り、魔物の命を刈り取って回る。
黒く小さな姿をしているらしく、まだ人間に被害は出ていないが本来いない場所にいる場合、所謂ボスモンスターの可能性が高く、放っておくと強力な魔物に育つことがあるとかで、近く討伐隊を組むらしく目下調査中らしい。
俺も受け付けで気を付ける様に言われた。
1人で潜っているから尚の事だ。
アンデッドの情報を耳にしたらしく、セリアーナやエレナからも念を押された。
…まさか俺の事だとは思わなかった。
あの後応急処置を受け、出口近くだったこともありすぐギルドで本格的に治療を受ける事が出来た。
さすがは王都の冒険者ギルド。
デカいだけあって、ギルド内に救護院の分院があり、処置が早かったこともあり傷痕すら残っていない。
パないなファンタジー…。
【浮き玉】も回収してあるし、服がボロボロになったことを除けばすっかり元通りだ。
後はこの青ざめているおっさん達をどうするかだな…。
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・8枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚