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王都行きの話をリーゼルから聞いて数日。
その間は、移動中に【隠れ家】で消費する物資の用意や、ルートの確認、到着後の予定等の確認をしていた。
王都についてからは、一旦ミュラー家に挨拶に行って、それからリーゼルの叔母……王妃様の妹さんの嫁ぎ先の屋敷に一泊する事になるそうだ。
セルベル伯爵家ってお家の長男に嫁いだらしい。
まだ家督は譲られていないが、王都で王家や他家との繋ぎ役を任されているんだとか。
王都滞在は一日か二日と、少々慌ただしいスケジュールだが、俺が行くことは決定していたようで、魔王種討伐前から準備をしていたらしい。
それ用の俺の服まで用意されていた。
「サイズは合っているわね」
「そうですね。仮縫いもせずによくここまで合わせられるものです。よく似合っているよ。セラ」
「……そか」
討伐前に何か採寸していたとは思ったんだが……コレだったか。
俺が今着せられているのは、なんというか……騎士服?
今日仕立て上がったようで、屋敷に届けられた。
黒のパンツに赤のジャケットと少々派手な色合いで、デザインはほとんど同じだが騎士の正装じゃ無い。
王都で魔王種の素材を献上するのは、代理人としてリーゼルの叔母さんの夫がやってくれるのだが、一応俺も立ち会うことになっている。
そして、その際はメイド服ではなく正装する必要がある。
まぁ、それは当たり前だ。
昨年王妃様に施療関係で会ったのはお忍びだったり、プライベートだったりってことで許されていたが、今回はオフィシャルな場になる。
一応俺もその場に相応しい恰好をすることになるが、そこで問題になるのが、俺の身分だ。
身分に即した服装があるそうだが、俺の公的な身分はリアーナ騎士団の2番隊副長だ。
ただ、爵位と言う意味では俺は騎士じゃなく、ゼルキス領都出身の平民の少女に過ぎない。
結果、騎士の正装では無いが、それに近い雰囲気の何ともコスプレっぽい恰好になってしまった。
ちなみにデザインはセリアーナらしい。
これにブーツを履くことになるが、どれも特注でサイズはピッタリだ。
いい素材で仕立ててあるし、お値段も相応の物なんだろうが、着る機会は恐らく今回だけだろう。
少々大袈裟で恥ずかしくはあるが、二人の反応を見るに、悪くは無いようだ。
「後はこれにマントを羽織ります。動きにくかったりはしませんか?」
着付けをしていたテレサが後ろから声をかけてきた。
言われたことを確かめようと、少し屈伸や腕を回してみたりもするが……、タイトなデザインなのに何の問題も無い。
流石フルオーダー……。
「問題無いようですね」
そう言うと、テレサは服を脱がしにかかる。
思ったより動きやすかったが、かといってこれを着ていくわけにもいかないから、【隠れ家】に入れて、向こうで着替えることになる。
「素材はもう奥なの?」
「うん。ケースごと預かっているよ」
「そう。なら出発は明日の夜ね」
人目に付かない事と、夏という事も有り日中の移動は避けたい。
やはり夜の出発がベストか。
◇
額にかけていたゴーグルを下げ、窓辺に移動して外に目を向けると、星と月がよく見える。
今日も一日快晴だったし、昼に比べたらマシだがきっと暑いだろうな。
【浮き玉】を飛ばすしそれくらいでちょうどいいかな?
「よいしょっと」
窓を開けるとムッとするような暑い空気が部屋に入って来た。
「王都についたら屋敷に向かう事。後はおじい様に全部任せればいいわ」
「うん」
「リーゼルの手紙もあるわね?必要な事はアレに全て記してあるから、渡せば全て済むわ」
「ほい」
誤魔化す為に、日付だけはセリアーナが書いているが、リーゼルから何通か預かっていて、それを渡せば俺が喋る必要はないってくらいに、細かく書いてあるらしい。
実に助かる。
このキャラを王様の前でやるのは、ちょっとね……。
「まあ、あまり到着までの日数の事は気にせず行ってらっしゃい」
「ほいほい。セリア様とエレナも気を付けてね。テレサも二人をよろしく。じゃ、行ってきますね」
三人と挨拶を済ませて、窓から外に飛び出した。
夜……それも一人での移動は久しぶりだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚