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俺の声とほぼ同時に、尾が振り抜かれた。
生えている高さは3メートルくらいだが、長さと重さから垂れさがっていて、その軌道は高さ1メートルくらいで、丁度二人に直撃するコースだ。
尾の重量とその勢いを考えれば、これも当たればただじゃ済まないだろう。
「くっ!?」
「うおっ!?」
あの猶予の無い中でも、流石と言うべきかしっかり反応出来ている。
テレサは転がる事で回避し、アレクは盾で受ける事でその一撃を凌いだが、衝撃は殺し切れなかったようだ。
体勢を崩し、膝をついている。
それを見たサイモドキは、角で突こうとしているのか、頭を下げた。
アレクはまだ立ち上がれていない。
これはいかん!
【緋蜂の針】を発動し、サイモドキの頭部目がけて突貫する。
【影の剣】で安全にダメージを与えるのが難しい以上、蹴りしかない。
狙う場所はここだ!
「たっ!」
狙い通り鼻先に蹴りを当てて押し付け続けている、加速する距離が足りずに魔人戦の時ほどの威力は出せていない。
それでも、目のすぐ側でバチバチしてるのが、鬱陶しいのだろう。
俺を振り払おうと、頭を上げて振り回している。
だが、ダメージは取れなくても注意は引けている!
このまま畳みかけよう!
「はっ!」
【浮き玉】をコントロールし位置を下にずらして、今度は下顎を後ろに回転しながら蹴り上げる。
サマーソルトキックだ。
頭を振り回していた為、首にそれ程力が入っていなかったんだろう。
上手く頭を跳ね上げさせる事が出来た。
「ていっ!」
さらに追撃で、浮き上がった顎に回し蹴りを叩き込んだ。
だが、蹴った感触でこの二発もダメージになっていないことがわかる。
表が硬いんだから、裏は柔らかくてもよさそうなのに……。
次をどうすべきかと考え、動きが思わず止まってしまったその時、轟音と熱波、そして赤い光が襲って来た。
「ぬっ!?」
威力は抑え目にしているが、ルバンの赤光だ。
それを右側の胴体に打ち込んだようだ。
硬い皮膚に跳ね返されて大したダメージにはなっていないが、俺の蹴りよりは衝撃があったのか、サイモドキはルバンがいる右側に視線を向けている。
「セラ、いいぞ!離れろ!」
そして、その間にアレクは体勢を立て直し、盾を構えている。
「りょーかい!」
テレサも起き上がっているし、仕切り直しだな。
◇
「ぬーん……。これ厳しくないか……?」
仕切り直したはいいが、ちょいと押され気味だ。
既に数度繰り返しているが、とにかくあの尻尾の一撃が怖い。
尻尾アタックはサイモドキの体に隠れて繰り出されるため、俺が上から指示を出している。
初回と違って、今は崩されずに凌げているが、それも三人が今までよりも間合いを少し遠めに取っているからだ。
特にアレクは、突進を不発に終わらせた後に踏み込む事で、前足の薙ぎ払いを引き出していたが、尻尾のコンビネーションを避けるために逆に後退している。
届かない位置にいるわけだし、結局薙ぎ払いを凌いでいる事に変わりは無いが、その分サイモドキとの間合いが開き、注意を引き付けられなくなってきている。
横の二人が魔法を撃ち込む事で押さえているが、このままだとジグハルト達のもとに行ってしまいそうだ。
首に下げたタイマーを引っ張り出して時間を見るが、まだ5分も経っていない。
上手く動きをコントロールして安定しかけていたのに、尻尾のたった一振りでひっくり返されてしまった。
ダメージなんてほとんど入っていないのに、やる気出すの早すぎないか?
強いんだし、もっと舐めプしてくれよ……。
「次、尻尾右!」
大きく左に振りかぶった尻尾を見て下に指示を出すと、アレクとルバンが一旦動きを止めて回避に専念し、その間にテレサも威力のある魔法を撃つために、魔力を溜めている。
まだ何とかなっているが……とにかくこの尻尾が駄目だ。
範囲が広く二人の動きを潰せるだけに、これを多用されてきたら消耗が増えて、凌げなくなる。
こうなったら……やるか?
確かにあの重く硬そうな尻尾は掠るだけでも危険だし、何より不規則にユラユラ動くアレを捉えるのは難しい。
だが、根本ならほとんど動いていない。
そこなら、俺でもやれそうだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚