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「凄いじゃない」
俺が置いた、目の前にある4枚の聖貨を見たセリアーナの言葉だ。
「それなら2枚頂くわよ」
2枚取り残りをこちらに差し出した。
やはり勘違いしている。
まあ、無理もないか。
「違う違う」
「3人の合計なの?」
それも違うぞ!
「今日セラが入手した聖貨は10枚です。お嬢様…」
「っ⁉」
エレナにネタ晴らしをされてしまったが、そういうことだ。
その4枚はセリアーナに渡す分の聖貨だ。
初戦のオオコウモリの後も順調にゲットし続けその数10枚。
これどういうことなんだろうな?
何か才能でもあるんだろうか。
「……」
自分のあるかわからない才能に恐れ戦いている間、セリアーナは神妙な顔で黙って机の上の聖貨を見つめている。
はて?そんなに悩むような事が有るんだろうか?
2人の方を見ると、そっちも何やら同じような表情だ。
「結構。セラ、【隠れ家】に入るわ。出して頂戴」
何か重要な事でも話すんだろうか…?
◇
大森林同盟。
約500年前にこの中央大陸に入植がはじまり、リグレス帝国の前身であるリグリア王国が最初の国として誕生した。
そこから大陸西部にいくつもの国が興ったが、更なる自由を求めて、魔境・大森林の開拓に身を投じた者達がいた。
いくつもの開拓村ができ、離合集散を繰り返し、国となった。
それが東部の始まりの国、同盟の盟主ルゼル王国だ。
さらにそこから100年程経ち、独立を前提に特に優秀な家臣に開拓を進めさせた。
そして、北からシュベル王国・バルカ王国・メサリア王国の3国が興り、その4国が互いに協力し合う為に大森林同盟を組んだ。
「って本に載ってたよ」
【隠れ家】に4人で入るなり大森林同盟について聞かれたので、本からの受け売りだがそう述べた。
「あら?よく知っているわね。といってもそれはあくまで表向きの内容よ。エレナ、アレク。貴方達は今後も私に仕える気はあるかしら?」
「もちろんです」
エレナは即答し、アレクも頷いている。
「結構。セラ、お前は拒否させないわよ」
「あ…はい」
何の話か分からないけれど俺に拒否権は無いらしい。
「在学中に第4王子と婚約し卒業と同時に発表され、その1年か2年後に結婚。これはもう決定しているの。そして恐らくルトルの街を含む開拓地を束ねた土地が私たちの領地となるわ」
「…独立?」
これは結構大事なんじゃなかろうか?
あの辺は彼女のじーさんが切り開いたとか言ってたし…大丈夫?
「ゼルキスは広くなり過ぎたわ。目が届かなくなった領地の端を国の援助付きで自分の子供に与えられるんですもの。お父様もおじいさまも乗り気よ」
そう考えると確かにお得なのかもしれない。
聞くところによると、大森林は魔境と呼ばれる天然のダンジョンの様な物で、強力な魔物がうじゃうじゃいるらしい。
とは言え、ダンジョンと違いたとえそこでどれだけ死者が出ようとペナルティがあるわけでも無く、また探索に出るのに許可や代価がいらないので、人は集まる。
そこの拠点になる場所が開拓村だ。
あのまま孤児院に居たら俺もそこに送られていたかもしれない。
街や商人が主導だったのが今後は国や領主主導で進めることになるって事だろう。
「この事は王家とごく一部の貴族しかまだ知らないわ。ミュラー家内でもお父様とお母様、それにおじい様だけよ」
なるほど…でもそんなに隠さないといけないことなんだろうか?
第4王子って事は上に3人いるんだろうし、王妃になるってわけでもなさそうだけど、【隠れ家】にわざわざ入る事と言い、気を使い過ぎなんじゃ?
そう思い2人を見ると、何か納得している。
あれ~…?
何か俺の知らないことがあるのかな?
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・8枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚