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雨季が明けた!
マーセナルから出張してもらっていた職人達は、明けるや否やすぐに街を発った。
チラっと伝え聞いた限りでは、相当な額を稼いだらしいが、それでも一月以上家や職場を空けるのは容易な事じゃ無いんだろう。
その事はリーゼル達もわかっている様で、馬車を用意し、更に1番隊の厳重な護衛も付けての、速度重視の編成で送り出した。
彼等のお陰で冒険者の装備の更新やメンテナンスは十分に行えたが……もう彼等は出張してくれないと思う。
そこら辺の話は商人経由で伝わりそうだし、ウチの領地がブラック領地って思われていたらどうしよう。
まぁ、そこら辺は偉い人達に任せるとして、彼等と入れ替わりにルバンがやって来た。
彼が任されている村は領都の南にあって、馬車で半日かからない程度の場所らしく、アレクはちょこちょこ寄っている。
俺は行った事が無いが、順調に規模を拡大しているらしい。
資源では北の村が鉱山を有していたりと有利だが、マーセナルまで繋がる川の畔にあるだけに、水運が軌道に乗ればガンガン発展していくだろう。
彼は各地に伝手があるそうだし、簡単だろう。
で、そのルバンを【隠れ家】に入れた。
これでここの事を知っているのはセリアーナ、アレク、エレナ、テレサ、ジグハルト、フィオーラに続いて7人目だ。
じーさんも一応何かあるって事だけは知っているが、中に入ったことは無いから、番外だ。
中に入れると「……ぉぉ」と静かに驚き、しばらくアレコレを見ながらアレクに質問をしていた。
そして、それが一段落したところで、セリアーナの指示で場所を【隠れ家】から談話室に移して、魔王種の情報と討伐方法についての説明が始まった。
ルバンは出席していなかったから、先日の会議の内容も一緒にだ。
「倒し方は簡単。貴方達は10分間時間を稼ぎなさい。その間に私が準備をして、それが完了したらジグが撃つ。それだけよ」
フィオーラが準備して、ジグハルトが撃つ……合体魔法かな?
「……簡単だね」
簡単じゃね?
魔法の方はどうなのかわからないが、アレク、テレサ、ルバンの3人ならそれ位余裕だろう。
「確かに簡単だが……それだけならアレクとテレサ殿だけでも十分だろう?俺を呼んだり、これだけの大部隊を動かす必要も無いはずだ。魔境産は無いが、これでも俺は魔王種とは何度か戦ったことがある。混合種か?」
「ふっ……驚かせようと思ったんだが……つまらんな」
「だから言ったでしょう。こいつなら気付くって……」
ルバンの言葉を聞きガッカリするジグハルトに、苦笑するアレク。
お茶目なおっさんだな。
「オレは聞いた事無いけど、混合種って何さ?」
屋敷や冒険者ギルドの資料室には、この辺の魔物だったり採集できる物の資料は揃っているが、高度な情報等はまだ不十分だったりする。
その混合種ってのも初めて聞いた。
「セラ、多頭の竜は知っているか?」
ルバン相手に不発に終わった代わりか、ジグハルトは俺に説明をする気だ。
「言葉の方?それとも北に出た方かな?」
「よく勉強しているな。北の方だ」
この世界には「多頭の竜」という言葉がある。
たとえ竜種といえども、頭が複数あればそれぞれの意思がぶつかり合って、その力を発揮できない……「船頭多くして船山に上る」と同じ様な意味だ。
会議が収拾付かなくなった時とかに使ったりするそうで、メサリアのみならず、大陸各国で昔から使われている言葉だ。
……ところが、今から何十年か前にその多頭の竜が大陸北東部で発見された。
そして、めっちゃ強かったってオチもある。
発見したのは同盟未加入の小国で、その故事通りたやすい相手と喜び勇んで大部隊を率いて討伐に乗り出し、あっさり返り討ちに遭い国が崩壊してしまうという、むしろそこまで含めて故事になりそうな出来事だ。
「それが混合種なの?」
「まあ、そう慌てるな」
俺の問いに、両手を上げ押しとどめるような仕草をした。
意外と語りたがりなんだよな……周りを見ると仕方ないという顔をしているし、付き合うか。
この世界の不思議生物の情報だし、俺も興味が無いと言えば嘘になる。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚