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「セラ殿、少し残って貰って構わないか?」
会議が終わり、出席者が会議室から出て行く中、オーギュストに呼び止められた。
会議中は団長という立場からか毅然とした雰囲気をまとっていたが、終わった今はいつも通りだ。
「いいけど……何?」
リーゼルや支部長も既に出ているし、部屋に残っているのはテレサ、アレクとジグハルトにフィオーラのセリアーナチームと、後は地図の片づけをしているオーギュストの副官のミオだけだ。
「うむ。少し確認したいことがある。……ああ、そちらの皆も一緒で構わない」
「わかりました。貴方達も良いですね?」
テレサが答え、3人も頷いている。
「ありがとう。ミオ、君は戻っていろ」
「はい。では皆様失礼します」
と、ミオは一礼し部屋を出て行った。
これで部屋に残るのは俺達だけだ……しかし、彼が何の用だろう……髪か?
まだ若いし、フサフサだけれど……?
「魔王種討伐の流れは頭に入ったか?……どうした?」
「ん?ああっ、大丈夫。ちゃんと聞いてたし、理解したよ」
ちょっと彼の頭髪を見てしまっていたが、違ったか……。
領都から北に半日ほどの所にある、ミュラー家の分家の者が代官を務める村がある。
そこから更に10キロほど東に向かうと、魔王種との戦闘予定地だ。
他の2部隊は俺達より先行し、その村から半日ほど行った所にある開拓村に宿泊し、これまた先に行動を開始する。
俺達はその村で一泊し、翌朝に出発だ。
その際にジグハルトとフィオーラは、魔王種に気取られない様に何かしらの方法を使って気配を消しておく。
これはこの場で聞かなかったが、恐らく馬車内で【隠れ家】を発動して、中に潜んでおくんだろう。
戦闘予定地に到着後、他の2部隊の状況を見てから戦闘を開始し、俺は合図があれば彼等の本陣がある開拓村にポーションを配達する、と。
大分アバウトだけれど、如何せん魔物が相手の事だから、あまり行動を厳密に決めるよりも状況に合わせて臨機応変に動く方針らしい。
うむ、頭にちゃんと入っている。
「訊ねるが、君のソレは、速度はあるが重たい物を運べないのだろう?ポーションを君が運ぶ事になっているが、可能なのか?それに、村との往復を繰り返し続ける事になるぞ?」
ジッと俺を見ていたオーギュストが口を開いた。
「む?」
なるほど、彼が気にしているのはそれか!
「恐らく何かしらの加護を持っているのだろう?詳細は答えなくてもいいが、部下への説明もあるし、なにより兵士や冒険者の多くの命に関わる事だ。答えて欲しい」
2番隊も冒険者組も、回復魔法を使える者はあまりいない。
で、魔物達との長時間の戦闘を行うとなると、いくら集団で戦うとは言え怪我人も出てくるし、そのうちポーションが尽きる可能性もある。
だからこその俺なのだが……、そりゃ彼の立場からしたら、そこは確認しておきたいだろう。
「うん、大丈夫大丈夫」
……この言い方で信用してもらえるかな?
彼もリーゼルも信用はしているが、如何せん立場的に他領どころか他国のお偉いさんと会談する機会もある者達だ。
頭の中身を、とまではいかなくても、ウソ発見器みたいな恩恵品や加護があってもおかしくは無いし、何かしら察してはいるだろうが【隠れ家】の事は秘密にしている。
さて、どうしよう。
上手い説明は思いつかないし、ここは頼れるテレサかアレクに丸投げを……。
そう考えていると、頭の上に手が置かれた。
ポンではなく、ガシっとだ。
「オーギュスト、あまりうちの姫さんを困らせるな。これでも意外と真面目なんだぜ?」
予定外の援護が来たな。
「ふむ……だがな、ジグハルト殿」
尚も続けようとするオーギュストを今度はフィオーラが遮った。
「貴方の懸念もわかるけれど、問題無いわ。高品質、高濃度のポーションを多数備蓄してあるから、私が前もって現地で調整をしておく……それでいいでしょう?」
「…………わかった、信じよう。時間を取らせて悪かった」
そう言うと、話は終わりだと、部屋を出て行った。
「……怒ったかな?」
「大丈夫でしょう。彼が自分で言った通り多くの命に関わる事ですから、何かしらの確証が欲しかったのでしょう。それに、結局姫が運ぶことが出来るのは事実ですし、問題ありませんよ」
「お前の言葉だけじゃ弱かっただろうが、ジグさんとフィオさんの保証付きだ。十分過ぎるだろう」
少々不安になったが、テレサとアレクがフォローを入れてくる。
「そんなもんか……」
確かに、事実とはちょっと違っているが、俺が運べるって事に変わりは無い。
二人の言うとおりだな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚