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「ふへ~…」
気の抜けた変な声が思わず漏れてしまった。
何度かの戦闘を繰り返し、ようやく外だ。
朝から潜って、まだ昼を少し回った位のはずだが…疲れた。
1体1体はそれほどでもないのに、複数で、更に途中で参戦してくるのもいて中々神経を使う。
特に俺の場合掠っただけでも致命傷になりかねない。
…なんでここでもメイド服なんだろうか?
「俺は遺物の売却を済ませてから帰るが、お前たちはどうする?」
核を潰した場合、稀に落とす遺物。
小さい魔晶だったり、魔素が濃縮している魔物の体の一部だったりと色々あり、それらは街の工房などで利用される。
一応個別に買取をしているそうだが、狙って出るような物では無いので効率が悪く、大体はギルドで一括で買い取ることが多い。
「王都での売買を見てみたいし、付き合うわ」
「オレもー」
ゼルキスでは一人で探索している時に何度か利用したことがあるが、折角だし覗いてみたい。
「わかった。ま、面白いもんじゃないがな…。こっちだ」
そう言って歩き出したアレクの後を追った。
◇
ゼルキスのダンジョンは妖魔種しか出ないため、魔物の死体は全て核を潰すが、魔獣種や魔虫種は死体を利用することが出来る。
遺物と違ってこちらはギルドに部位を指定し、依頼を出している。
そのためあえて核を潰さずにダンジョンの外に死体を持ち帰り、解体し依頼にある部位を取り出し売却する。
「先に言ってよ…」
我ながらひどい顔をしていると思う。
油断していた。
いやすげーわ。
王都ギルド、サッカーコート位あるし妙にデカい建物だとは思っていたんだ。
その割に受付やダンジョンへ降りる階段は入口のすぐ側にあった。
その理由がこれか…。
魚河岸…?
大量の魔物の死体がごろごろ転がっている。
それも食用じゃない為、血も内臓も抜いていない。
つまり、臭い。
「…聞いてはいたけれど、酷い臭いね」
エレナを見ると、鼻と口を手で覆い顔をしかめている。
「俺は戦場を経験しているし、多少はましだったが、それでも慣れるまでは辛かったからな…、慣れるまでは頑張んな」
臭いに苦しむ俺達を尻目に普段と変わらない様子のアレクはさっさと買取窓口に向かっていく。
遺物と魔物の部位買取所が同じなのはどうなんだろう…。
分けられなかったんだろうか?
「行きましょう」
悪臭から上に逃げようとする俺を、そうはさせまいと掴んでいるエレナに引っ張られながら、アレクについて行く。
買取窓口はいくつかあり見た感じ数組いるが、混雑している様子はない。
待たなくて済みそうだ。
「混んでいないけど、すぐ終わるのかな?」
「部位買取の場合だと解体があるからな。預けて数日後に代金を受け取るって事がほとんどだ。俺たちの場合は全部遺物だし、数と重さを量るだけだからすぐ終わるさ。後時間帯もある。遺物だけの場合はこの時間だとまだまだ探索を続けているからな」
手続きをしながらアレクが王都での流れの説明をしてくれる。
手続き自体は簡単なものだ。
探索時に提出した探索届は帰還時に申請すると渡され、それと許可証を一緒に買取窓口に提出する。
基本的に他所のダンジョン産の物は買い取らないらしい。
ダンジョン外の魔物の買取などはしているが、それは核が無いから一目でわかるとか。
そして、番号の書かれた札を渡され、査定が終わるとその番号が掲げられる。
日本でもあったようなシステムだ。
どの世界でも同じなんだろう。
「終わったな」
窓口の方に目をやると、受け取った番号が掲げられていた。
大体10分ほどだったろうか?
買取金額は金貨5枚。
3-4時間でこの額は多いと言えば多いが、俺達は3人だったが、他はもっと大人数だ。
危険な仕事だということを考えるとちょっと少ないか?
そう考えると部位買取の方が割が良いのかもしれない。
まぁ、他所は他所、だ。
さっさと外に出よう!
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・4枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚