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ルシアナはミュラー家の次女でフローラさんの娘だ。
俺より1歳年下だが、発育は良いね……。
髪と瞳は親父さん譲りの茶色だが、顔立ち何かはフローラさんによく似ている。
が、物静かな母親と違って、表情豊かだな。
アイゼンとの関係はわからないが、セリアーナとは結構仲が良かった気がする。
その為か、この屋敷の元使用人である俺に対しても当たりが柔らかい。
当たりは柔らかいが……。
「セラ様、いかがでしょうか?」
俺の指先から目を離し、そう伺いを立てるルシアナ。
顔の前にかざしている両手の指の爪が、一つ一つ丁寧に黒く塗られている。
今しがた、ルシアナが塗ったものだ。
「う……うん、ありがとう。よく出来てるよ」
ルシアナに、ややどもりながらも何とか答える。
それを聞き、嬉しそうな顔をしている。
しかし、年下の女の子に様付で呼ばれて世話を焼かれるってのはどうなんよ……?
テレサにもメイドさんにも世話を焼かれていた自覚はあるけれど、年上だしそこそこ親しい相手ばかりだったんだ。
ルシアナは……見た目だけなら俺の方がチビだけれど、何か犯罪の香りがするんだ。
俺の倫理観的に、これはアウトだ。
◇
その夜、俺の部屋でもミネアさんの部屋でも無く、談話室に集まった。
ちょっとしたルシアナに関しての報告会みたいなものだ。
本人はいないが、親父さんもフローラさんもいる。
「それで、ルシアナさんはちゃんと仕事をしていましたか?」
親父さんでも実母のフローラさんでも無く、ミネアさんが切り出した。
そう言えば、アイゼンの場合は家庭教師主導だったけれど、ルシアナはミネアさん達なのかな?
「して……たと思いますよ?」
何というか、返答に困ってしまう。
起きてから、身なりを整える手伝いだったりはしてもらったが、今日の俺はずっと部屋でゴロゴロしていた。
食事とトイレ、後は本を取りに図書室に行ったことを除けば、ほとんどベッドの上だったからな。
それでもルシアナは部屋に待機していたし、決してそんなつもりは無いが嫌がらせをしているような気がしてきて、飲みたくもないのにお茶を頼んだりしていた。
「大分姫が気を使っていましたね。私は口出しはしませんでしたが、ルシアナ様は客人が用が無いのなら、部屋を外したりしても良かったと思います。あるいは、自身で……例えば外出など、何かを提案しても良かったでしょうね」
「ほぅ……」
テレサが言うように少々融通が利かない感じではあった。
まぁ、いくら俺相手とは言え、初めてやる事でアドリブを利かせるのは難しいと思う。
「とは言え、仕事そのものは悪くありませんでした。よく気が付きますし……、いっそルシアナ様が主導では無くて誰かの下に付けて勉強させてもいいのではありませんか?」
「ふむ……。ジーナかリーリアの下に付けるか?彼女達ならルシアナに遠慮するようなこともあるまい」
ジーナはミネアさんの、リーリアはフローラさんの侍女だ。
どちらも中々しっかりしている人で、ルシアナ相手でもビシバシ行くだろう。
「それも悪くは有りませんが……一日で決めてしまう事も無いでしょう。セラさん、どうでしょう?もう少し付き合ってもらえませんか?」
ミネアさんは親父さんの提案を肯定しつつも、もう少し続けさせてみたい様だ。
俺も少々気まずいってだけで、別に嫌だってわけじゃ無いし、受けていいかな?
「多分オレのやる事は今日と変わらないだろうけれど、それでも構わないのなら受けますよ」
「それで構いません。フローラさんも良いですね?」
「ええ。セラさん、お願いします」
親父さんの方を見ると、それでいいのか軽く頷いている。
んじゃ、続行だな。
「はーい」
しかし、引き受けたはいいけれどどうしたもんだろうか。
別に全部自分で出来る事だから、人に任せずやっても良いんだが、でもそれだとルシアナの勉強にならないのかもしれないし……。
人に仕えられるってのも存外難しいもんだな。
テレサが俺の侍女になった時は、最初は違和感があったけれど、すぐに慣れたし……やっぱり経験とかの違いなんだろうか?
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セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
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