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「お前…こっこれは⁉」
俺の手にある5枚の聖貨をみて、2人は驚愕の表情を浮かべている。
そうだろうそうだろう。
もっと驚いてくれ。
何もただ単にムカデにビビッて叫んでいたわけじゃ無いんだ。
コウモリにもビビっていたんだ。
ムカデから逃げるべく天井近くまで上昇していたのだが、そこをどこに居たのかコウモリの群れが襲い掛かってきた。
羽を広げたカラス位はあっただろうか?それが20数匹だ。
幸い速度はそれほどでも無く、【影の剣】を振るえば簡単に真っ二つにすることができた。
数こそ多かったものの無傷の勝利だ。
「オオコウモリが居たのか…」
「オオコウモリっていうの…?」
なんだその残念な名前。
「まあ、大きいコウモリとしか呼びようがないからな…。ただ気配は無いわ上から襲ってくるわで中々手強い相手なんだが、よくやれたな」
【祈り】は発動していたのだが、アレは多分筋力だけでなく、身体能力全般が上がるんだと思う。
動体視力や反射神経もだ。
この子供の体はテレビやゲーム等に触れておらず、視力が衰えていない。
それでも、あの数のコウモリの動きを見切る事は出来ない。
回復や筋力上昇だけなら俺にメリットは無かったが、これなら十分有用だ。
「ふふん!余裕だね!」
◇
「おおおおおっ‼」
牛ほどの大きさのイノシシの体当たりを、アレクが雄叫びを上げながら【赤の盾】を構え受け止める。
更にその後ろから2頭のイノシシが突進してきている。
【祈り】の効果があってもさすがに厳しそうだが、どうするのか?
「セラ!アレクの正面をやって!」
指示を受けるべくエレナを見ようとすると、丁度指示が来た。
エレナはそう言うなり【緑の牙】を鞭状に伸ばし、イノシシの頭部に強く打ち付け牽制をしている。
攻撃を受けたイノシシは、それなりに衝撃があったのかたたらを踏んでいる。
今のうちにやれって事か。
「ほっ!」
上から急降下し、【影の剣】を頭部に突き立てた。
核を持つダンジョンの魔物は、頭部に赤い瘤の様な物がある。
そこの直線上に核があるそうだ。
上手く突く事が出来た!
「よしっ次だ!右を狙え!」
アレクは盾越しでも息絶えたのがわかったのか、そう言うなり後ろの2頭のうち右のイノシシに盾を構え突っ込んでいった。
「せいっ!」
動きが止まっているのならさっきと同じ要領で一撃だ。
核を貫き2頭目も倒した。
3頭目を…と左へ顔を向けると既にアレクが切りかかっていた。
…よくあんなデカい生き物に襲い掛かれるな。
残りの1頭は2人に任せ、俺は上昇し周囲を警戒する。
今いる場所は浅瀬の奥だ。
同じ浅瀬でも手前と違い、魔物の強さが違う。
一度に出てくる数こそ数頭程度だが頻度が高く、戦闘中に近くに出現し、さらに襲い掛かってくることもあった。
そのため残り1頭になったら俺は戦闘に参加せず、警戒に回ることになった。
周囲を見るが、魔物の姿は無し!
下を見るとエレナが首を貫いていた。
戦闘終了だ。
「お疲れ~」
声をかけながら2人の下へ降りていく。
「おう。お前もな。周りに魔物はいないか?」
「壁の向こうで戦ってるのはいたけど、この周辺は何もいないね」
「ふむ…今日はあくまで様子見だしな、戻ろう。エレナ、それでいいか?」
「そうね。【隠れ家】が使えるとはいえ余力は残しておいた方がいいしね」
倒したイノシシの処理をしていたエレナも話に加わる。
「休憩しなくていいの…?」
「ええ、問題無いわ。セラは疲れた?」
「いや、大丈夫だけど…」
俺からしたら【隠れ家】でコソコソしながら行った方がいいと思うんだけど、この世界の人間は恩恵品はともかく、加護は極力隠匿しようとする。
もしくは、派手に知らしめるかだ。
それにしてもダンジョンで周りに人が居なくてもそうなのか。
…タフだなー。
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・4枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚