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親父さんとの話が終わると前回と同じ部屋に通された。
ただ、その部屋には俺達が持って来た物とは別に、何やら荷物が置かれている。
梱包された箱でベッドの半分くらいを占めている。
「これは?」
なんぞ?と部屋に案内してくれた使用人に訊ねると、すぐに答えが返って来た。
「お二人の着替えですよ。リアーナからの荷はまだ届かないのでしょう?旦那様から揃えておくように指示がありましたから……。あくまで間に合わせになりますが、サイズは前回採らせていただいたので、問題無いと思います」
「ああ……それは助かります」
前回は余裕があったが、今回は用意を始めてからまだ4日しか経っておらず、必要な物は【隠れ家】に詰め込んでいるが、フェイク用の荷物はまだ届いていない。
荷を開くと、着替えやら寝間着やらが色々入っていた。
これだけあれば当座をしのぐのは十分だろう。
「それでは、失礼します」
使用人は一通りの説明を終えると、部屋を出て行った。
大分あっさりした説明だったが、数か月前に滞在したし、何より俺がいるからな。
気を利かせたんだろう。
「昼食まで時間がありますし、着替えを済ませましょう。荷物が届くまではこちらで用意して頂いた物を使いますが、構いませんか?」
と、テレサは手にした服を見せながらそう言って来た。
薄い青のワンピースで、飾り気がなくシンプルだが、シルエットが妙に可愛らしい。
……これもルシアナのお下がりかな?
「うん。この恰好で屋敷の中をうろつくのもね……」
俺もテレサも今着ている服は【浮き玉】での移動用だ。
一時的に立ち寄ったとかならともかく、領主の客として屋敷に滞在する以上、あんまりみっともない恰好はね……。
しかし……。
「腰回りが緩いの無いかな?」
そういった流行なのか、上流階級の女性はウェストが細く絞った服を着ている事が多い。
コルセットとかはしないようだが、全体的にスッキリしたスマートなデザインだ。
だが、そう言った服はゴロゴロするには向いていない。
ベッドの上に広げられた服の中には緩いのもあるにはあるが……寝巻だな。
「そうですね……」
口元に手をやり真剣に考えるテレサ。
「あ、無理なら無理で良いんだよ?」
ついつい思った事を口に出してしまったが、そんな事で頭を悩ませてしまっては申し訳ない。
「いえ……お任せください」
……なんかやる気になっている。
仕事人の血が騒ぐのかな?
まぁ、今日はやることは無いだろうし、任せてしまおう。
◇
その夜、食事を済ませ部屋で休んでいると、ミネアさんから部屋に呼ばれた。
何といっても領主夫人だ。
気安い関係ではあるけれど彼女も忙しい身だし、会おうと思ってもすぐに会う事は難しい。
その為挨拶も出来ずにいたが、向こうから誘ってくれるのなら丁度いい。
そう思ったのだが……。
「……セラさんにしては珍しい恰好ね」
「服と言うより着こなしですね。確かルシアナが着ていた服でしょう?あの子はこういった着方はしなかったわ」
部屋にはフローラさんもいて、2人で興味深い様子で俺が着ている服を見ている。
【浮き玉】で浮いているからその方が見やすいのか、目の前に浮いた俺をくるくる回している。
少し動くと「じっとして」と言われるし、人形にでもなった様な気がするな。
「姫の好みは動きやすい恰好ですから、少々手を加えました。腰回りの糸を数か所切っただけですから、すぐに戻せますよ」
テレサは服の解説をしている。
俺が今着ている服は、テレサがあれこれカスタムしたものだ。
腰の所を絞っていた糸を切り、街で調達してきた布を使って胸元で帯の様にして留めている。
当たり前と言えば当たり前だが、俺は着たこと無いから詳しくはわからないが、マタニティードレスみたいな感じに仕上がっているんだと思う。
着替えた時に少し体を動かしてみたが、俺があちこちペッタンコだって事を抜きにしても、動きの邪魔にならないし、苦しくもなく実に楽だ。
この人、料理もだが裁縫も上手かった……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




