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「ほっ!」
ゴブリンの頭部目がけて尻尾を振り回すと、良い一撃が入ったようで、少々よろめいている。
すかさずシロジタの追撃が入り、勝負ありだ。
まぁ、ゴブリン君にしてみたら勝負なんてしている気は無いんだろうけれど……。
「中々いい感じじゃないかー!」
見下ろせば地面に転がる4体のゴブリンの死体が目に入る。
そのうち2体は、尻尾で一撃加えてから倒したものだ。
今日は、見習冒険者達はオフの日だ。
彼等が森に入る日は、俺が引率じゃない時でも下手に森を荒らして影響が有ったらいけないからと、狩りは控えていたのだが、今日は気兼ねなく森の浅瀬で【蛇の尾】の実戦試験を行っている。
そして何度かの戦闘を経て、とりあえずゴブリンやオオカミ程度になら尻尾アタックは通用する事がわかった。
その一撃で倒す事は出来ないが、それでも一瞬でも動きを止める事は出来る。
まぁ、ゴブリンはともかくオオカミは動きが素早く狙って当てるのは難しいが、【緋蜂の針】で群れに突撃して、そこから振り回せばしっかり牽制になる。
長さが3メートル近くもあるし、それだけの空間が出来れば、不意打ちを受けてもアカメ達が反応できる。
まだまだ俺の操作精度が低く、ポテンシャルを発揮できていないが、枝を掴んだりも出来るし、究めたらちょっと面白い事が出来そうだ。
もう少し試したい気もするが……オオカミの群れ1つにゴブリンの群れ2つ……数はもう十分かな?
「ほっ!」
回収の隊を呼ぶ為の魔法を打ち上げた。
そう時間をかけずにやって来るだろうが、それまでの間にもうひと働きしておこう。
「ふんっ……!」
尻尾の操作に集中して、死体の足に尻尾を巻きつける。
そして、ズルズルと引きずり、一ヵ所にまとめていく。
【蛇の尾】と言うより【浮き玉】の問題になるが、尻尾の力だけならそれなりの重量物でも持ち上げられるのだろうが、【浮き玉】に乗っているとそれは出来ない。
その代わり、引きずる事は出来る。
少し離れた所に、オオカミとゴブリンの死体が放置されているが、そっちも片付けるか。
今まで外で魔物を倒した場合は、応援に呼んだ兵が回収に来てくれるまで、倒した場所に放置していた。
結局回収を任せる事に違いは無いが、ちょっと人としてランクアップした気がするな……。
◇
倒した魔物の死体回収はいつも兵に頼んでいて、それの売却金は手間賃として受け取って貰っている。
浅瀬の魔物だし、数はそこそこでもそれ程大金になるわけでは無いが、それでもその日の酒代の足しにはなると喜ばれていたのだが……ここ数日は特にそうだ。
先日行われた、聖貨の高値での買取の件が、冒険者の間で支部長伝手に広まった。
その結果、領主側への売却が増え、大金を手にした冒険者も増えた。
で、その彼等も武具に投資する様になり、職人はもちろん素材を調達する冒険者、そして、通常よりも高値で素材を買い取っている為、聖貨の売却程では無いが、小金を手にした冒険者達が飲み食いで使ってと、領都はちょっとした冒険者バブルに沸いている。
あくまで聖貨の買取を起点にした一過性のものなだけに、バブルの様に弾けたり、欲に目が眩み、森の奥に行き過ぎたりしないかと不安ではあるが、そこはリーゼル達が上手くコントロールするらしい。
問題は職人の数が足りない事。
このまま雨季に突入すると、装備のメンテナンスの依頼も増える。
新調する者もいるだろうが、皆が皆そうするわけじゃ無いしな。
だが、そこで滞ってしまうと領内の治安に影響が出てしまう。
「んで、どうするの?」
狩りから戻りシャワーを浴びて、皆のいる執務室に行くと、今の領都の状況の説明を受けた。
まぁ、どうするもこうするも人手が足りないなら外から引っ張って来るしかないんだろうけれど……。
「ゼルキスに月末に行く予定だったでしょう?それを前倒しして欲しいの」
セリアーナの口から出た言葉は、妥当な案だが……。
「それはいいけれど……あっちの職人は雨季にこっちに来るんじゃなかったっけ?その前から呼んじゃ、向こうの冒険者達が困るんじゃない……?」
流石にそこをごり押しして呼び寄せても、ゼルキスと揉める事になるかもしれないし……。
どうするんだろう?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚