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「無いわね……。体に異常は?」
両手を広げている俺を見て、セリアーナが聞いて来た。
「無いよ」
テレサとエレナに額や手首に手を当てられ、脈や熱を測られながらセリアーナに、異常は無いと答えた。
【蛇の尾】の発動に成功したのか失敗したのかはわからないが、とりあえず意見を仰ごうと皆の下に行くと、こんな事になった。
そして、一歩離れて俺達の周りをアレクとフィオーラがグルグルと回っている。
今のところ何も変化は見つかっていない様だが……。
「……ああ。ここね」
「?」
今まで俺の周りを回っていたフィオーラが、何かを見つけたのか足を止め、一言呟き……。
「わぁっ!?」
後ろからスカートを思い切り捲り上げた。
次いでパンツを引っ張られた。
いつだったかセリアーナにも同じ事をされた気がするな……その時と違って今回はパンツも下ろされているが。
他の3人も後ろに回り覗き込んでいるが、アレクは正面に立ち肩を竦めている。
……紳士じゃないか。
「何かあったの?」
自分じゃ見れないし、何があったのか教えて欲しい。
「刺青の様に模様が刻まれているわね。魔力の流れを感じたし【竜の肺】に近いのかもしれないわね」
なるほど……俺の周りをグルグルと回っていたのは、魔力の流れを調べるためだったのか。
「ここからよ。わかる?」
「む」
腰から尾てい骨あたりにかけて、セリアーナは何かをなぞる様に指を動かした。
とりあえず、その辺に何かがあるってのはわかった。
【竜の肺】……あれの要領か。
発動しなかったのは、意識を向ける場所が違っていたからだったのかな。
「ちょっと離れて」
やれそうな気がする。
ベルトを巻いた腰ではなく、セリアーナがなぞった辺りに意識を集中して……。
「ふん!」
気合を一つ入れた。
「!?」
前に立つアレクに変わりは無いが、後ろの4人が驚いている気配がする。
成功したかな?
「生えたわね」
生えたのか。
「ええ……少し離れましょう。姫、動かせますか?」
「はいよ」
後ろが空いた事を確認し、軽く左右に振るようなイメージで、先程の発動と同じ要領でやってみたところ、その通りに動いているのが何となくわかる。
尻尾を動かすってこんな感じなんだろうか?
体を捻って後ろを見ると、何か黒い物体がユラユラ揺れているのが見える。
俺の尻尾は黒いのか……!
「ちゃんと動くわね」
「ええ。服の裾も揺れていますし、物に触れる事も出来るようですね」
「そうなると……普段使いするのは難しいかもしれませんね。あの位置に穴を空けるわけにも行きませんし……」
俺が尻尾を楽しんでいる一方、女性陣は冷静に分析をしている。
そうか……これ楽しいけれど、外で尻を出すわけにもいかないよな。
……どうしよう?
◇
今俺は1の森の浅瀬で、見習冒険者達が薬草採集をしているのを、尻尾を木の枝に巻き付ける事で【浮き玉】に乗った体を固定し、見守っている。
恩恵品【蛇の尾】。
ベルト状だが、発動すると体に直接刻み込まれるタイプだ。
長さは3メートル弱、太さは根本が直径10センチ程で徐々に細くなっている。
そこそこ力が強く、同じくそこそこだが器用さもあり、今の様に巻き付けたりする事で物を掴んだりも出来る。
非力な俺にとっては、丁度いいサポートアイテムだ。
そして、身に付けている物は装備者の一部とみなしている様で、肌からだけではなく、服からも生やせる事がわかった。
【猿の腕】の持ち主が肩当から腕を生やしていたのも、その効果のお陰だろう。
アレクや報告を聞いたオーギュスト達は、恩恵品の警戒を目に見えない部分にも広げる必要があると、少々慌てていた。
セリアーナの命令で【蛇の尾】には一つ二つフェイクを入れるが……懸念だった服の問題が解決し、俺は満足している。
「隊長ー終わったぜー!」
採集を終えた様で、下から声が飛んで来た。
「副長だ!ふーくーちょーうー!」
先週と同じメンバーだが、緊張で破裂寸前の風船みたいだった前回とは違い、大分余裕を持てている。
やっぱ、1回目……それも自分達が最初って事であんな感じになっていたんだろう。
こっちが素の彼等か。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚