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「どうしたっ⁉」
悲鳴が聞こえたのか、作業の監督をしていたじーさんが部屋に飛び込んできた。
【浮き玉】を使っているし、俺の監視も兼ねているのかもしれない。
大当たりだぜ…じーさん。
「なっ⁉…これは…?」
そして驚いている。
そりゃ部屋にいる人間が光ってたら驚くか。
程なくして発光も落ち着き、そして消えた。
「い…今のは何なのだ?」
俺の方を見てそう言った。
まぁ、俺以外新顔いないしすぐわかるか。
素直にごめんなさいをしておこう。
「ごめん。多分今のオレ」
「ふむ…。作業はこのまま続けよ。お前はついてこい」
「へーい…」
仕方が無いと、大人しくじーさんについて行く。
向かった先は1階の奥にあるじーさんの執務室。
「そこにかけよ」
言われた通り、椅子に座る。
ちょっとした応接スペースがあり、剣と槍が飾ってあることを除けば割と普通の部屋だ。
向かいにじーさんが座った。
「あの光は加護だな?多分と言っていたが、まだ使いこなせていないのか?」
「うん。そもそも使ったのはあれが初めて」
「ふむ…お前にもかかっていたようだが、何か変わりはあるか?」
「うーん…特に変わった事は無いかも…?」
体調に変化は無い。
まぁ、子供なんて大体絶好調か絶不調のどちらかか。
後は…
「お?」
「どうした?」
どこか変わったかな?と手を眺めていたら指先のあかぎれが治っていることに気づいた。
他にも心なしか肌荒れもよくなっている気がする。
【祈り】が発動したと思うんだけど、あれの効果って…スキンケア?
◇
「お前らしくない失態ね」
いつの間にやら先に1人帰ってきていたセリアーナに見つかってしまい、事情を説明することに。
まぁ、その言葉は甘んじて受けよう。
加護や恩恵品は実際に使われないと効果がわからない物がほとんどだ。
身内相手とは言え、どこから漏れるかわからないし温存できるならその方がいい。
まぁでもお陰でこの強面のじーさんと多少は打ち解けた気がする。
見た目はド迫力だが、意外と気さくで【祈り】の検証にも付き合ってくれた。
ただ言わせてほしい。
「掃除してたら発動するとか思うわけないじゃん…」
しかも鼻歌で。
「それもそうね。許してあげるわ」
「…ありがと」
「それで?おじい様まで一緒になっていたくらいだし、何かわかったのかしら?王都までの移動中色々試していたけれど、成果は無かったでしょう?」
「うん。いろいろじーさんと検証したけど、わかったよ。オレが何か行動している時に祈ると発動するみたい。で、オレと一緒に行動をしている人間、パーティーメンバーだね。それが対象。人数制限はわからないけど、最初オレ含めて6人にかかってたから、結構たくさん行けるんじゃない?」
「…?移動中私たちは一緒にいたわ。何が違うの?」
「アレクは馬車を、お嬢様とエレナは読書。で、オレがクルクル踊りながら祈る…、あれ別行動ってなってたんじゃないかな?」
道中の様子を思い出しながら答える。
あれは一緒にいただけだ。
「…そう言われたらそうね。効果は何かわかったの?」
「そっちはまだはっきりとは分からないね。傷が少し回復するのと力が上がるのはわかったけど、どれ位なのかとか他にもあるのかとかは、ここじゃ試せなかったから…」
力に関しては、バーベルでもあると差がわかりやすいが、騎士団の訓練場にはあるそうだが、残念ながらここには無い。
椅子や机を動かしたりして調べてみた。
体感だが1割くらい上がった気がする。
俺じゃ大して効果は出ないが、アレクなら中々効果は大きいはずだ。
「そう。ダンジョン探索はお前の分も許可を取ってあるからそこで試すといいわ。ダンジョンでの戦闘中にいきなり発動するような事が無くて何よりね」
確かに。
部屋の中でもいきなり光った時は驚いたからね…。
「ダンジョン行けるの?」
「ええ。でも一人で行くのは駄目よ。2人はまだいくつか準備があるから、それが終わってからにしなさい」
む…まぁ、ゲームじゃないし初見でソロプレイをする必要はないか。
それまであれこれ実験しておこう!
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・4枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚