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通路にコツコツと響く硬い足音。
俺のでは無い。
ふよふよ浮いている俺のすぐ隣を歩く、オーギュストの副官、ミオのものだ。
ミオ・ライト……20歳だったかな?
髪を後ろにひっつめて、服も皺一つ入っておらず、お堅い印象だ。
「……」
「……」
会話がねぇ……。
窓が無く魔道具の照明が灯ってはいるが、昼間なのに少々薄暗いだけに、沈黙と相まって若干ホラーチックな雰囲気がある。
この通路は領主屋敷の地下から外の騎士団本部まで繋がっている。
現在複数の通路を建設中だが、今後冒険者ギルドや外の様々な施設と繋ぐ様になるらしい。
今俺達が騎士団本部を目指しその通路を進んでいるのは、先日引き受けた【祈り】による治療を行うためだ。
本来なら俺の副官であるテレサが付き添うはずなのだが、今日彼女はセリアーナに仕事を頼まれそちらに出向いていて、その代わりとして、ミオが付いている。
「セラ殿」
と、もうじき到着するという所で、ようやく口を開いた。
彼女もオーギュストに倣ってか、俺の事はセラ殿と呼ぶ。
「はいはい。なんでしょ?」
「本日は45人が対象になります。人数が大分多いですが……大丈夫でしょうか?」
45人……見回りは3人1班で行うそうだから、15班か。
1-2班前後する事はあるが、一度に大体これ位の人数で見回りを行っている。
それが1日3交代制……そりゃ人員がカツカツになるに決まっている。
「問題無いよ」
とは言え、俺にとっては大した問題じゃー無い。
1回2回【祈り】を使えば完了だ。
「わかりました。それでは参りましょう」
「おう!」
◇
騎士団本部にある、待機所。
そこに兵を集合させ【祈り】をかけている。
今日は予想通り2回で終わった。
終わったわけだし帰ってもいいんだが、兵士達は体調も良くなるし何となくその場でお喋りをする事が習慣になっていて、俺や、今日はいないがテレサもその場で混ざって、街や周辺の状況を聞いたりしている。
「なあ副長、テレサ様が女集めて何かの訓練をしているってのは本当なのか?家の娘に聞かれたんだ」
今日もその場に混ざって、適当にお喋りをしているとその場の1人に声をかけられた。
ちなみに娘さんは16歳らしい。
「まだ訓練はしていないけれど、若い女性を集めているのは本当だよ。この街の兵士はほとんどが男だし、屋敷の警備に女性兵を入れたいんだって……。今はまだいないけれど、屋敷に泊まる客の中に女性が加わるかもしれないしね」
セリアーナの防衛に関しては、エレナにテレサとそこに居るミオに、敷地内に部屋を持つフィオーラがいる。
俺は数に入れないでおくが、何より本人の防衛能力が高い。
テレサは俺に付いて領都を離れることがあるしフィオーラもそうだが、それでもそう簡単にセリアーナに手が届く事は無いだろう。
だが、今はまだいないが、屋敷に泊まる女性客に何か起こったら自分の身は自分で守れって言うのは、ちょっと問題だ。
その為、今のうちに、テレサが領都出身の女性の中から募集し選別を行っている。
「何か条件があるのか?」
横で聞いていた者が加わってきた。
何やら彼以外にも興味がある者が多い様で、こちらを見ている。
「この街出身の若い女性って位かな?武器の扱い方とかはテレサが教えるらしいし……そうだよね?」
あまり詳しい事は知らないので、後ろに控えているミオに確認する。
「ええ……。戦闘経験や礼儀作法など経験があれば尚良いですが、そちらもテレサ様が教えて下さるようですし、未経験でも問題無いそうですよ」
「そうかー……ウチのガキは他所の生まれだからな……今回は諦めるように伝えておくか」
最初に声をかけてきた男がやや気落ちしたようにこぼした。
そういや、2番隊はこの街出身の冒険者だった者が多く含まれているが、1番隊は王都だったり王妃様の実家絡みの領地から連れてきた者も多い。
この街出身って条件がネックになるのか……。
「今回の募集はこの街出身の者のみ、と絞っていますが、上手く行くようでしたら今後も募集を行っていくそうですよ?」
「そうかー……。わかった伝えてみるよ」
16歳だしなー……次の募集が何時になるかもわからないし、難しいかもしれないな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚