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「よく来たな。護衛を連れぬと聞いていたから心配していたが、無事について何よりだ」
屋敷に着き中に入るなり強面のじーさんの出迎えを受けた。
アリオス・ミュラー・ゼルキス。
セリアーナの祖父で、今は当主の座を息子に譲り、その補佐として王都で暮らしている。
俺の居たルトルの街を起点に、領地西部の開拓を先頭に立って進めたパワフルな人らしい。
野盗討伐などゼルキス領のみならず周辺の治安維持にも積極的で、王国東部の発展の中核を担った凄い人。
それがこのじーさんだ。
「バゼット家の娘に傭兵の小僧の事は知っておるが…そいつは何だ?」
その強面&パワフルなじーさんに睨まれている。
マジで1人や2人どころじゃない人間を殺してきた人の眼力は相当なものがある。
「…うっ」
すげぇ迫力だ…。
つい後ろに流れていきそうになるのをアレクに掴まれた。
【浮き玉】は考えたように動いてくれるが、無意識な反応にも応えてしまう。
「領都で私が拾った子ですわ、おじい様。独力で恩恵品を揃えている中々の人材で、いい機会なので王都に連れてきましたの。私が学院へ通っている間、エレナ達と王都ダンジョンを探索させる予定ですわ」
セリアーナの言葉に反応し、こちらをギロリと睨んでくる。
「その小娘がか…?」
「ええ。ご安心くださいミュラー家の損になる様なことは致しませんわ」
後ろからだから表情まではわからないが、多分ニコニコしながら言っている。
祖父、孫の関係とは言え、あの顔を前にこれだけ堂々と言えるんだから大物だわ。
一方じーさんの方は、いかにも信じられないって表情だ。
気持ちはわかる。
「…まあいい。さあ、入りなさい」
玄関ホールでの立ち話を切り上げ、中へ案内される。
お邪魔しまーす。
◇
王都に着いた翌日。
セリアーナ達は何かと手続きがあるようで、エレナ、アレクと一緒にあちこち出かけている。
俺もついて来るか?と聞かれたが、断った。
王都に来る前に、冒険者ギルドで所属変更の手続きをした際について行ったのだが、何をするでもなくただただ浮いているだけだった。
この世界、戸籍管理が進んでいるからか、妙に書類文化が進んでいる。
ただ、何をするにも人力。
アナログだ。
お貴族様パワーをもってしても、何をするにも時間がかかる。
てことで、領都の屋敷と同じく、こちらでも使用人といい関係を築くべくお手伝いをしている。
【浮き玉】は相変わらず大活躍だ。
流石に領都のあのバカでかい屋敷に比べたら小さいが、こちらも十分デカい。
昨日来る途中に馬車から見ただけだが、他の屋敷に比べても大きい方だ。
大きいホールを含めて3~40部屋位は有りそうだ。
他を知らないから比較できないが、ミュラー家ってのは中々の大物なのかもしれない…。
「セラちゃん、上を支えて頂戴」
おっと手伝い手伝い。
【隠れ家】に詰め込んでいるため、馬車1台ではありえない量の私物がある。
どうやってあのじーさんにスキルの事を話さず誤魔化したのかはわからないが、昨日一旦別室に置いていたがセリアーナが出かけている間に、部屋に荷物やそれを収納する棚などを運びこんでいる。
「いや…しかし多いなー」
「やっぱりミュラー家の令嬢ともなると、1年とは言え王都で生活するには必要な物が沢山いるのね」
「本当ね。凄いわ~」
と、お喋りしつつも忙しそうに大量の荷物を運び入れている。
済まん…、俺のスキルがあるから詰め込んでいるのであって、別に王都で順次買っても問題無い物ばかりなんだ。
申し訳ねぇ…と考えつつも、運び込まれた棚に荷物を詰めたり掃除をしたりする。
そして、綺麗になーれ~と何となく口ずさんだその瞬間だ。
『きゃっ⁉』
悲鳴が聞こえ慌てて振り向くと、何か皆光っていた…。
ついでに俺も薄っすら光っている。
…なんだこれ?
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・4枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚