287
「そろそろだな」
見ると残りのオーガは3体まで数を減らしている。
一方冒険者側は皆健在だ。
「門番とボス達抜きで40分ってところか……悪くないんじゃないか?」
「そうだな……ボス達は無理にしても、そろそろ門番もやらせてみるか?時間を考えても後2-3回ってところだろう?」
「ポーションはまだ余っているし、俺達も余力はある。いいんじゃないか?」
もうこの広間での戦闘は終わりとばかりに、おっさん達は次の戦いについて話をしている。
ダンジョンという冒険者同士の不戦が義務付けられ、尚且つ資源が尽きる事の無い鉱山の様な場所があるからか、所属するクランは別でも同じ街で活動する者同士結構仲が良いそうだ。
無所属の者はもちろんどこかに所属している者でも、若手は共通して育てるって意識が根付いているんだろう。
◇
上層の奥で呼び止められた時、中層まで一緒に行かないか?と言われた。
呼び止めた当人もだが、若手達にリアーナや魔境の魔物の話を聞かせて欲しかったそうだ。
あの場所からだと10分そこらだったしその位ならと俺も了承し、適当にお喋りをしながら向かったのだが、いざ中層入り口前に着くと、ベテランと若手冒険者という同じようなパーティーが2組いた。
何事かと話を聞くと、こちらと同じくオーガの見学に来たそうだった。
なんで3組も重なったんだ?と思い聞いてみると、今日は狩りを再開するグループが多いそうで、引率役の自分に万が一の事があっても、救援を呼びに行きやすいからっていう、慎重なんだか何だかよくわからない理由だった。
その後おっさん同士知り合いという事もあり、とんとん拍子に話が進み俺に同行を依頼する流れとなった。
報酬は得られる聖貨全部という大盤振る舞いだ。
多過ぎないか?と思ったが、支部長から通達があり【ダンレムの糸】の事を知っていたらしい。
戦力にというよりは、若手に疑似的とはいえ強力な攻撃魔法を軸にした戦いを経験させたかったそうだ。
そう言われると、確かにこの威力を出せる魔法使いなんてそうそう居ないだろうし、出るかどうかわからないとは言え聖貨を代価にする価値はあるんだろう。
ボス達さえ仕留めてしまえば俺は戦わなくていいと言われ、それならアカメ達の戦闘能力や【影の剣】の事は隠せるし、俺も他者との共闘の良い訓練になるので、引き受けることにした。
外ではそもそも【ダンレムの糸】を撃つこと自体危なっかしくて訓練のしようが無さそうだからな……こういった部屋毎に区切られた空間は有難い。
もうすぐ3時間位になるが、今のところ彼等の出した聖貨は1枚。
あの若手達も自力で上層で狩りが出来るレベルだそうだし、そんなもんかもしれない。
まぁ、それでも聖貨1枚といえば金貨20枚相当のお宝で、13人で割っても稼ぎで見たら十分だ。
出た瞬間に歓声が上がりそして俺に支払う事を思い出し落胆に変わったのは、申し訳ないが笑ってしまった。
ちなみに報告する必要は無いからしていないが、俺は既に自力で聖貨を2枚得ている。
すまんな若手達。
◇
さらにあの後2戦繰り返し、帰還する流れになった。
試しはしてみたが、彼等だけでは門番を突破する事は出来ず、結局おっさん達が処理をしていたのだが、あの処理の仕方は見事なもんだった。
走る速さを合わせながら投石を上手く壁側に集め、接近したところで一気に中央突破し、そこからターゲットを集中するのではなく3人がそれぞれ各個撃破。
1対1でしっかり戦えるからこそなんだろうけれど、石が飛び交う中よく戦えるもんだと感心した。
そして今、皆で帰還しているのだが、道中遭遇する魔物は若手達が処理している。
……今更だが、冒険者って強くないか?
ベテランのおっさん達はもちろんだが、若手達も結構強い。
今まで他人の戦闘を見る機会はあったが、ベテランか新人かと極端な者ばかりだったから気付かなかったが……人間ってこんな強いもんなの?
「……みんな強いね」
「んー?まあ、魔物相手にしていると自然にこうなるぞ?この程度は出来ない様じゃ死んじまうからな」
何となく呟いた俺の言葉にそう返ってきた。
しかし……俺がそんな風になる未来が見えないよ……ずっと弱いままな気がする。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚(11)
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚