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「テレサさん、貴方は明日も商人ギルドの会合に出向くのかしら?」
「その予定です。騎士団とも話を進めたいとは思っていますが、折角今は領地中から集まっているわけですし、今回の滞在期間はそちらを優先しようかと思っています。……何かありますか?」
項垂れるアイゼン達をそのままに、話を始める二人。
「邪魔にならなければ、アイゼンを同行させてもらえないかしら?いい勉強になると思うの……」
「アイゼン殿をですか?……こちらの用件を優先しますし、何かを教えるという事はしませんがそれでよろしいのでしたら……」
「ええ。それで構いません。アイゼン、聞きましたね?」
「は……はいっ。テレサ殿よろしくお願いします」
急遽明日からテレサに同行する事が決まってしまったアイゼンは、戸惑いつつも何とか返事をした。
こういう風に話をポンポン進めていくところはセリアーナに似ている……いや、セリアーナが似ているのかな?
商人ギルドの会合は参加した事無いけれど、俺も冒険者ギルドの会合に何度か出席したことがある。
真面目に仕事の話をしながらも、ちょくちょく話が関係無い方向へ行ったりもしていた。
で、出席者の中で一番身分の高い者が仕切り役を務める事が多いそうだ。
もちろん代理に任せる事もあるだろうが、いずれはアイゼンもやる事になるだろうし、テレサから学ぶのもいい経験になるだろう。
「結構。では貴方も掛けなさい。いつまでも立ったままでは周りに変に思われますよ?」
ここでようやくミネアさんは隣の席を指し着席を促した。
うん……5分位とは言え立たされているみたいな雰囲気だったからな。
膝に乗せられ、料理を横から口に突っ込まれている俺のアホっぽさの方が目立っていたが、次期領主的にはあまりよろしくない光景だった。
彼もそれを感じていたのか、ホッとしたような表情を浮かべ席に着いた。
今まで俺達しかいなかった休憩エリアにアイゼンも加わった事で、彼に挨拶をしようと今まで遠巻きにしていた者達がやって来て、中々の賑わいを見せている。
脇から眺めているが、先程指摘された点を注意しながら、相手の話を聞いて会話を転がそうとしているのがわかる。
如何せん話題の引き出しが少なく、年上のおばさん相手に間を持たせるなんていきなりは難しいだろうが、何とか様になっているあたり、貴族の教育レベルの高さがうかがえる。
……俺じゃ天気の話に逃げちゃうな。
◇
「テレサさんは厳しい方かしら?それとも甘い方?」
苦戦しつつも応対に奮闘するアイゼンを横目に、2人は何やら教育論を繰り広げている。
伯爵夫妻は家庭教師に一任するっていう、貴族の一般的な教育方針らしい。
ちなみにセリアーナは自分でエレナを引っ張ってきて、勝手に育った結果ああなったそうだ。
エレナは能力は高いが常識人だし……神童とか天才児ってやつなんだろうか?
「私は厳しい方だと思いますよ?教育とは厳しく行うものだと親衛隊で教わりましたし、姫にもそう接しているつもりです」
「……オレ相当甘やかされている気がするけど?」
何言ってんだこの人?
「お言葉ですが、私は決して姫を甘やかしているわけではありませんよ?」
テレサが即座に訂正を入れてくるが……先程から俺に料理を食べさせている姿を思えば、説得力はまるでないぞ?
「そうなの?あまりそうは思えないけれど……」
俺を膝の上に抱えているミネアさんもそう思ったようだが、テレサはそれにも反論した。
「私は今現在、侍女と副官の役に就いていますが、姫は仕事は完璧にこなしていますし、私生活でも咎められるようなことは何もしていませんよ?強いて言うなら食が細い事と寝起きが悪い事くらいですが……些細な事で叱る様な事ではありません」
「…………⁉」
「そう言われるとそうね……。ここにいた頃もダンジョン探索をしながら屋敷の仕事の手伝いもしていたし……」
テレサの言葉に驚く俺とミネアさん。
そして、テレサはさらに続ける。
「姫は動く時間が短いだけで、仕事の成果に関しては文句無しです。セリアーナ様はもちろん、リーゼル様を始め、誰もがそれは認めているのですよ」
そう言えば俺の仕事って事務方の頭脳労働じゃ無くて、切った張ったの脳筋組だった……。
狩りや聖貨稼ぎが楽しくて忘れていたが、あれも立派な仕事だったな。
……俺……優秀じゃないか?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚(8)
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




