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「うわーぉ…………」
オーガの群れの生き残りを倒した後、広間の様子を調べているが……自分でやったことながらこの破壊痕には引いてしまう。
サッカーコートが余裕で入る広間に、入口から斜めに100メートル近い轍の様なラインが引かれている。
幅は1メートル程で、深さは20センチと言ったところか?
徐々に威力は減衰していったようで、その跡は壁の近くでは3分の1程になっているが……壁には抉れた跡と崩れ落ちた破片が積もっている。
「……これ気を付けないと本当に人を巻き込むな」
振り返って入口の方を見てみると、壁に空いた穴から通路が見えるが、着弾跡を見てみると高さは3メートル程の所にある。
ホップアップする様な代物じゃ無いし、発射時に俺が振り回された結果ずれてしまったんだろう。
そしてそのライン上にいたであろうオーガ達は核もろとも撃ち抜かれたのか、俺が処理するまでも無く死体は残っていなかった。
生き残っていたオーガ達の数はちょうど10体だった。
大抵20体弱で群れを作っている事を考えると、さっきの一発だけで10体近くを倒した事になる。
壁に削られ威力は減ってもオーガを一撃で倒すこの威力。
コントロール出来る様にならないと危なっかしいことこの上ない。
まだまだオーガの群れが巣くっている広間はたくさんある。
魔物達にとっては災難な事かもしれないが、もうちょっと実戦で試射を重ねる必要がありそうだな……!
うへへ……。
◇
ゼルキス領都のダンジョン中層は、半ば辺りから所謂強化種といった、通常よりも強い個体が出始めるそうだが、手前は通路で繋がった複数の広間で構成されている。
極まれにオオカミが混ざる事もあるが、基本的に20体弱のオーガの群れが現れる。
構成はどこもほぼ一緒で、数体の投石組と後方に控える本隊だ。
「はっ!」
通路出口から投げつけてくる石を全て避け切り、投石組の最後の一体の首を刎ね飛ばした。
奥に控える本隊の数は12体。
やや少なめだが、その分群れのボスを中心に一つに固まっている。
数が多いと群れから更に三つか四つに分かれているが、これは好都合だ。
このオーガの群れはおもしろいもので、投石組も同じ群れのはずなのに、独立して動いている。
本隊はどこかが襲われると互いに庇いあったりするが、投石組は壊滅するまで放置されているいわば捨て駒。
その為そちらを先に片づけてしまいさえすれば、じっくりと狙いをつける事が出来る。
【ダンレムの糸】を構えている俺を見て一応警戒してはいるものの、仕掛けてくる気配はない。
「照準よーし!」
弓を引き絞り、ターゲットを射線上に合わせる。
気持ちターゲットの左側を狙うのが確実に命中させるコツだ。
狙いは群れのボスとその前後にいる3体で、合計4体だ。
一度にまとめて倒す事だけを考えるともっと巻き込めるラインはあるが、何組かと戦ってみたのだが結局ボスを最初に確実に倒すのが一番効率がいいとわかった。
ボスと数、どちらを選んでも全滅させることは可能だが、折角なのでボスを先に仕留めてから群れの残党を刈り取る訓練だ!
普通の矢と違い、【ダンレムの糸】の矢は放った後も帯のように伸びて、少しの間手元に残るが、その際に威力に押され少し右斜め上に弓本体が回転してしまう。
それが狙いが少しずれてしまう原因なんだろう。
アレクの様に自分の筋力だけで扱えるのなら何とかなるんだろうが、こればかりは宙に浮いている俺には無理だ。
引っ張られてしまうのを無理に押さえ込もうとしても、より不規則にずれてしまう。
だから……。
「ほっ!」
一声出して右足を弦から離すと光の矢が放たれた。
唸りを上げながら的に向かって直進しているが、弓がその威力に負け右に回ろうとした。
「ふっ!」
弓に当ててある左足と上端を掴む両手で高さだけはずれないように調整する。
変な構え方だから横軸は無理でも縦軸だけなら俺でも調整可能だ。
「よしよし……」
元々ターゲットの少し左側を狙っている。
それが右にずれる事で、いい具合にその前後を巻き込みながら直撃した。
一瞬でボスを含む数体がやられた事でオーガ達は動揺している。
こうなってしまえば後はもう、ただの作業だ。
「行くぞ。アカメ、シロジタ」
駄目押しをするべく背中から傘を抜き、ヘビ達に号令を出しながら群れ目がけて突進した。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚