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ゼルキス領都にある冒険者ギルド。
リアーナのそれと違って、ダンジョンがある分造りも大分頑丈になっている。
あっちも今改築が進められてはいるが……まだまだだな。
少々偉そうなことを考えながら中に入ると、視線が一斉に俺に集まった。
「……ぉぅ」
リアーナは探索は外で行うもので、冒険者ギルドは集会所みたいな雰囲気だが、ここはすぐ下が探索場所。
何というか殺気立っている。
冒険者の実力だけなら、リアーナも負けていないんだが……あっちは緩いからな……酒とか飲んでるし。
この緊迫感……久しぶりだぜ。
とは言え、俺の事を知っている者は多く、すぐに刺々しさは無くなった。
冒険者同士でも縄張りの様な物はあるが、俺はここの出身だし拠点が変わってもよそ者扱いされることは無いだろう。
……無いよな?
◇
よそ者扱いされるという危惧は結論から言うと無用だった。
今日の俺の服装は王都で作った装備で、ミュラー家の紋章の付いたケープとメイド服と言ういわば俺のトレードマークは身に付けていなかったのだが……よくよく考えると宙に浮いている女の子という俺の存在そのものが一種のトレードマークの様なものだ。
去年までこの街にいたし、俺の事を知っている者も多い。
後数年もすれば冒険者の入れ替わりも起こるだろうが、その頃にはリアーナの街のダンジョンが開かれているし、狩りの拠点はリアーナ領になる。
……俺のダンジョン探索も安泰だな。
「よっし……これでいいよ」
そんな事を、上層の手前で顔なじみの冒険者が新人らしき連中を率いて狩りをしているのを見かけ、挨拶ついでの情報交換で確信できた。
「おう。向こうの連中にもよろしく伝えておいてくれ。おいっ!お前らも礼を言っておけよ!」
中々有益な情報だったので礼にと【祈り】を使ってあげたが、新人君達は随分驚いている。
スキルは当然として、魔法だって結構貴重だからな……割とポピュラーな回復魔法にしても、治療院や救護院に行かないと受けられないし、ファンタジー世界の住人だからって、その恩恵を簡単に授かる事は出来ない。
彼等は礼を、と言われ我に返ったのか、頭を下げてきた。
うむうむ。
存分に感謝してくれたまえよ。
「んじゃ、またねー」
彼等に別れを告げ、再び中層を目指すことにした。
20分程話をしていたが、今日はいつもと違って1時間制限も無いし、こういった寄り道も有りだな。
◇
「さぁ……来たぞー!」
中層入口から出てすぐの所にある通路。
ここを通り抜けると広間があり、そこにはオーガの群れがいる。
浅瀬、上層と抜けてきたが、狩りをしている冒険者はそれなりにいたが……俺が察知できる範囲ではその気配は感じられない。
以前ここで狩りをしていた時は、この中層入ってすぐの所は大抵狩りが行われていたのだが……普段ここで狩りをしている連中はまだお休み期間なのかもしれない。
「……それならそれで好都合か」
アカメ達と【妖精の瞳】を発動し辺りを念入りに探ると、通路の出口側に例によってオーガがいる事がわかった。
こいつらは投石組で、その奥からこちらの様子を伺っている集団の姿もはっきりと見える。
この通路の半ばあたりまで行くと警戒され出すから、その手前が開始ポイントだ。
丁度地面が凹んでいる場所があるから、そこを目印にしよう。
通路を進みながらさらに念を入れて、人がいない事を確認する。
前も後ろも人はおらず、念には念を入れて更に奥を見ても人の気配は無し。
これなら誤射の心配も無いだろう。
神経質になりすぎかもしれないが、【ダンレムの糸】ってアイテムは、多分撃たれる事がわかっているならともかく不意を突かれたら防ぎようが無いものだと思う。
とんでもない威力と速度の光の奔流で、防ぐことも避ける事も難しい。
普通ならわけもわからず食らってしまう。
そして食らってしまおうものなら……その事態だけは避けないといけないな。
ダンジョンだとか関係無しに、人殺しは駄目だ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚