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「ね、魔王種の素材が必要なのはわかるし、それを自分達で揃えたいってのもわかるけれど……どんな風に倒すの?話聞いてると何かオレも参加することになりそうなんだけれど……」
俺……マジで雑魚専なんだぞ?
「この加護の存在は今日知ったが、それでもお前は元々参加予定に入ってたぜ?」
驚愕の情報に愕然とする俺を見てジグハルトは笑っている。
そりゃ見学出来るならしたいとは思っていたが、自分も参加するとなると……。
「安心しなさい。貴方に期待している役割は上空からの支援と他の部隊への連絡よ」
と、フィオーラがなだめる様に言って来た。
「倒すだけなら俺とフィオだけで十分なんだが、何といっても魔境の魔王種だからな……。他所の魔王種よりはタフだろうし、もしかしたら止めを刺す前に逃げられるかもしれない。そうならない様に騎士団の力を借りるんだ。ただ、互いに距離が開いているし周辺の魔物の対処もある。だからその部隊間の連携をお前に任せたかったんだ」
「……ほう」
なるほど……。
確かにどこで戦うかは知らないが、どうせ山か森の中だろう。
馬なんかより俺が部隊間を飛び回るのが速いし確実だ。
「それはわかったけれど……倒すのは2人で出来るんだね」
当然の様に言っているが、危惧している事が自分達がやられる事じゃなくて逃げられる事って時点で、なんか凄い……。
「まあな……だが、それはあくまで屋外で俺達のコンディションを維持できる範囲にいる、比較的弱い個体を対象にした場合だ。もちろんそれでも他所の魔王種よりは強力だが……ココを利用できるとなるともう少し格上を狙っていいかもしれないな……」
顎をさすりながらニヤリと笑うジグハルト。
あの顔は絶対少し上とかじゃなく、もっと冒険するような顔だ。
「人員もこの場の者なら好きに使っていいし、そこの判断は貴方に任せるわ。ただ、セラ。お前は参加するのはほぼ確定しているから、そのつもりでいなさい」
「……はーい」
俺が悩んでいる間に、すでに話は終わったとばかりにジグハルトはアレクを伴い別の部屋を見に行き、フィオーラは本棚を。
テレサはエレナとキッチンに向かい、セリアーナは席でお茶を飲んでと、めいめい自由にしている。
まぁ、領地の為には必要な事だし、他所に出て行く気も無い。
役割だって連絡係だ。
きっと危ない目にはあわないだろう。
……あわないよな?
◇
「あれ?」
雨季も終わりにさしかかったある日。
南館からリーゼルの執務室がある本館に向けて、てくてく歩いていると階段を上って来るジグハルトとフィオーラに出くわした。
この時期は談話室や食堂で見かける事はあるが、こちらで顔を合わせるのは珍しい。
向こうは既に気付いていたようで「よう」と手を挙げてきた。
「こっちに来るのは珍しいね。どうかしたの?」
同じくこちらも手を挙げ、話しかける。
「少し調べたいものがあって、書庫を使いたいの。その許可を領主様にとりに行くところよ。貴方はどうしたの?歩いているなんて珍しいじゃない」
「今日はテレサが冒険者ギルドの会議に出席するから、【浮き玉】の練習も兼ねて貸してるんだ。で、オレは朝食済ませたところだよ」
2番隊の仕事として、アレクと一緒にテレサは朝から冒険者ギルドに出向いている。
馬車を使ってもいいのだが、屋根付きの通路で繋がっているのだし折角外に出るのだからと、昨晩のうちに【浮き玉】を貸している。
その為今日は屋敷を歩きで移動しているのだが、歩いている俺がよほど珍しいのか、会う人会う人ことごとくに驚かれてしまっている。
「……もう昼を大分過ぎているのだけれど?」
「起きて最初のご飯は朝食だよ……?」
呆れ顔のフィオーラに適当な答えを返す。
この体起こしに来る人がいないとマジで起きれないんだよな。
セリアーナは用事がある時以外は起こす事は無かったが、テレサは毎朝律儀に起こしに来る。
それに慣れて油断しきっていた……。
「朝飯でも昼飯でも何でもいいさ。お前も執務室へ行くんだろう?」
「おわっ⁉」
ジグハルトはひょいと片手で俺を抱え上げ肩に乗せると、執務室に向かい始めた。
行先は一緒なのに置いて行くのも気が咎めるが、俺の足に合わせる気も無いし……ってところかな?
「うん。よろしくー」
まぁ、理由は何であれ折角だし運んでもらおう!
ちょこちょこ練習にテレサに貸し出すだろうし、その間は人に運んでもらうのも有りだな!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚