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「【影の剣】の事は知られていないけれど、お前が多くの恩恵品を持っている事を知っている者は多いわ。目端の利く者は少しでも装いに違和感があると、そこを警戒するの」
セリアーナの説明が続く。
右手の人差し指を立てているのは【影の剣】を模しているんだろう。
木を隠すなら……ってやつだな!
耳にも髪にも付けているし、さらに指に10個も着けているとは流石に思われないだろう。
【琥珀の剣】は俺が所持している事を特に隠していないし、【琥珀の剣】自体も護身用としてそれなりの知名度があるらしい。
だから指輪の有無を見るだろうが……。
「これだけやれば、ファッションと思われるのかな?……オレのセンスが誤解されそうだけれど……」
これなら爪は注目されても指輪は大丈夫そうだ。
箱に入ったままの残りの2個の指輪を見るが、どちらもストレート。
今はめている8個もだが、全体的にクラシックなデザインが多い。
「指輪のデザインを選んだのはエレナよ」
「ああ……ちょっとそんな気がした」
色合いに対して品が良いデザインだ。
「お前もこれから一人で外に出る事が増えるでしょう?ソレはお前が持っている武器の中で一番確実なのだから隠せている間はそうしておきなさい」
「ほい!」
しかし、マニキュアか……。
パンクかゴスロリか……俺の戦闘用の服も考えたらパンク寄りかな?
理由が理由だし黒なのはいいとして、これって毎日塗ったり落としたりするんだろうか?
わかんねぇ……。
◇
「こちら……ですか?」
馬車から降りたテレサは、ロブの店を見て少し驚いている。
この人も立派なお貴族様だが、王都圏でとは言え親衛隊として働いていたから、街を歩き自分で買い物に出る事くらいはあっただろう。
だが、ここの様な裏道の怪しげな店を利用したことは無かったのだろう。
「そう。ごめんくださーい!」
ここは俺が先陣を切ろうじゃないか。
「うるせぇっ‼目の前でデカい声出すなっ!」
「ぉぅっ……」
ドアを開け中に入るなり怒鳴られた。
まぁ、入ってすぐのところが作業台だからな。
今日もそこに座って、革を弄っている。
「ん?何だ今日は赤鬼はいないのか。誰だそっちの姉ちゃんは?」
顔を上げこちらを見たが、俺の後ろにいるのがアレクじゃ無い事に気付いたようだ。
「オレの副官のテレサ」
「リアーナ騎士団2番隊セラ副長付き副官のテレサ・ジュード・オーガスです。お見知りおきを」
テレサはツンと澄ました顔で、簡潔に名乗った。
「お……おう……」
貴族……それも領地持ちだ。
そんなのがいきなりやってきたら驚くよな。
「ここではオレの副官で侍女でもあるから、あまり気にしないでね?」
「そ……そうか……。ああ、まあわかったよ」
まだ少し動揺している様だが……、まぁいいか。
「あ、そんでさ、今日は作って貰いたいものがあるんだ」
「あ?ああ……まぁ、今はまだ余裕あるが……なんだ?」
もうすぐ雨季になる。
普段客がいないこの店も、雨季明けや冬になると武具の補修の仕事が入ったりと忙しくなる。
店に入った時に弄っていた革も、それに向けての準備だろう。
カウンターの奥を覗けば材料と思しきものが積まれている。
だが、まだ雨季に入る前の今ならまだ大丈夫なはずだ。
「こんなのを2個作って欲しいんだ」
そう言ってロブに渡したものは、ゴーグルのスケッチだ。
最初はスタイリッシュでカッコいい物を目指したのだが、何だかんだで実用性……特にレンズ部分を頑丈にと描き直していくと、最終的にスキー用のゴーグルみたいな物になってしまった。
まぁ、それを着けて人前に立つわけじゃないから別に良いんだが……。
「どれ……ああ、これなら鉱山で似たようなものが使われているぞ?それじゃ駄目なのか?」
「うん。それだとレンズ部分が脆くてね。もっと正面からの風に強い頑丈なやつにして欲しいんだ」
「ふん……まあ何とかなるか。ただレンズはウチじゃ扱わないから商業ギルドに依頼するから、その分余計にかかるぞ?」
「うん。お金は大丈夫!それよりも、いつ頃になりそうかな?雨季明けには必要になるんだけれど……」
雨季が明けたらゼルキスに行くからな……その時には出来ていて欲しい。
「ああ、問題無ぇよ。5日もすりゃ出来るだろう。完成したら屋敷に届けるが、それでいいな?」
「おおっ早い!それじゃ、お願い。……あ、蛇のマークは入れてね」
これは忘れちゃいけない!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚