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アイテムを装備している人差し指以外、親指も含めて全ての指に指輪がはめられた。
指輪は赤、青、黒、白……色だけでなく、模様や太さ、形状も違う。
今は嵌めていない残りの2個もそうだ。
「……これは王都の騎士団の識別証に似ているね。参考にしたのかい?」
向かいに座るセリアーナの隣にやって来たリーゼルが、指輪を見てそう言った。
「識別証……指輪が?」
色で見分けるのかな?
「そう。正確には中央騎士団だね。隊が2つのリアーナと違って、近衛隊や親衛隊の様な特殊な隊から、ウチと同じように1番隊2番隊と言った通常の隊もある。もっとも隊の数も隊員の数もずっと多い。だから自分達で見分けられるようにその隊の指輪をはめているんだよ」
「へー……」
そう言えば、騎士や親衛隊は別としても、王都で見た兵隊は皆同じ格好だった。
どれくらいの人数がいるのかはわからないが、大雑把にでも所属を見分ける何かを用意する方が、全員の顔と所属を記憶するよりは現実的だろう。
でも……。
「服の色とかでは見分けないの?そっちの方が簡単だろうけど……」
「隊によって役割も違うしその方が楽なんだろうけれど、住民にとっては騎士団の人間って事に変わりは無いからね。何かあった時に隊が違うからと通報を遠慮されては困るんだ。だから一目ではわからない様にしているし、そして見分け方の事も公表していない。もっとも事情通を名乗る者達はしっているがね」
「なるほど……」
中々行き届いた住民サービスじゃないか……。
「そして、その識別証が面白いのは、サイズを変えられる魔道具だって事だ」
「面白アイテムだとは思うけれど……それはまた何で?偽造防止とか?」
普通の指輪じゃ駄目なんだろうか?
宝石とかが付いているわけじゃないし、効果もサイズ調整だけとシンプルだが、それでも魔道具だ。
俺のその問いに、リーゼルはそれもあるけれど、と前置きし、苦笑しながら続けた。
「例えば僕とアレクシオ、指の太さが違うだろう?騎士団の者は騎士も兵士も皆鍛えてあるけれど、それでも差があるからね。一人一人に合わせては手間がかかるし、ある程度サイズを決めていても、上手く合っていなければ落としてしまう事もある。試行錯誤した結果、魔道具に行きついたんだ。幸い素材は王都圏で揃うから、新兵の訓練でついでに調達もしているんだよ」
工場での大量生産品とか無いからなー……効率を求めた結果が高級品になってしまったのか。
「王都に滞在していた時にその騎士団が注文を出している工房に制作させたの。思ったより時間がかかったけれど、テレサが用意した物も一緒に届いたし、結果的には良かったかしら?」
王都に滞在って事は、結婚式の頃か。
そんな前から用意してくれていたのか……。
こっちの指輪はセリアーナとして、もう一つの方はテレサかな?
「テレサも……わっ⁉」
「動かないで下さい」
何を用意してくれたのか訊ねようとしたところ、再び手を掴まれた。
もう指輪ははめたけれど……?
「……それは?」
言われた通りじっとしていると爪に何か黒い物をペタペタと……。
机の上に目をやれば、もう一つの方の箱が開けられていた。
中身は、香水のボトルの様な物で黒い液体が入っている。
「マニキュアよ。あまり塗らないけれど私もたまに塗っているでしょう?もっともそれは化粧用じゃ無いけれどね……」
確かにたまに赤とかピンクのを塗っているが……これは黒だ。
それも光沢の無いマットな。
「化粧じゃない……とな?」
「マニキュア代わりにもなりますが、これは爪や指先の修復薬です。平民で使用する者は少ないでしょうが楽師や親衛隊ではよく使われていましたよ。色も色々ありますが、これは薬草の灰と炭を練ったものだそうです」
既に右手を終え反対の左手の爪を塗りながらテレサが答えた。
「……へー。おや?」
塗り終えた右手の爪を見ると、【影の剣】をはめている人差し指の爪と同じ色な事に気付いた。
今までだと人差し指だけ指輪をはめ、おまけに爪が真っ黒だったから、あまり人に見せることは無いが目立っていた。
手を出すと大抵一度はそこに視線が行っていたからな……。
ところが全部の指に指輪をはめて爪を黒く塗れば、人差し指が目立たない。
……このためか?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚