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【ダンレムの糸】
全長は2メートルと少しで重さは50キロ程の長弓だ。
発動すると弦が現れ、それを引くと光の矢がつがえられる。
一射撃つごとに10分の、謂わばチャージ時間を要するが、その威力は非常に高く、光の矢が一直線に……まさに糸を引いたかのように突き進む。
ネックはその重さと引きの強さだ。
【祈り】を使わなければアレクですら相当きつかったらしい。
威力は凄いんだが、最前線に立って指揮もするしあまり彼向きでは無かった。
使うか聞いてみたが、固辞された。
ジグハルトにも聞いてみたが、弓が引けなかったらカッコ悪いからと冗談めかして断られた。
……まぁ、あの人は自分で魔法撃った方が強いんだろうけれど、何というか大分使用者を選ぶアイテムだ。
とは言え、訓練場での試用は盛況に終わった。
周りで見ていた兵士はもちろん、冒険者見習の子供達にもいいモチベーションになったんだろう。
随分訓練も張り切っている様で、このまま行くと当初想定した10人を超える人数が残りそうだと、支部長が喜んでいた。
「おいっちにー!さんっしー!」
まぁ、ぶっちゃけそんな事はどうでも良いんだ。
この【ダンレムの糸】は念願の遠距離武器。
はっきり言って、弓として正規の使い方をするなら、とてもじゃないが俺には扱えない代物だが……腹案がある。
あまり行儀の良い使い方じゃ無いだろうが、他のアイテムと組み合わせる事で、俺もビームを撃てるようになる。
「にーにっ!さんっしー!」
その為にも柔軟だ!
リーゼルの執務室で皆が仕事を頑張っている中、俺も負けずにソファーの上でストレッチを頑張っていると、使用人がやって来た。
セリアーナ宛に荷物が届いたらしい。
「わかったわ。こちらに運んで頂戴」
「かしこまりました」
それを聞き一礼し部屋を出て行った。
「こちらに持って来させるのは珍しいね。何か重要な物かい?」
「大したものじゃ無いわ。注文は出していたのだけれど……王都から運ばせたから少し遅れてしまったの」
リーゼルの問いに肩を竦めるセリアーナ。
王都からか……たまにミネアさん経由で届く事があるけれどそれかな?
「休憩にしましょう」
そう言いセリアーナは席を立った。
◇
待つことしばし、俺の目の前の机に置かれたのは二つの木箱。
一つはパソコンのキーボードの様なサイズで、厚さは5センチ無いほどの長方形。
もう一つは10センチ程度の立方体。
箱自体にも模様が彫られ蓋には蝶番が付いていて、開ける様になっている。
ただの容器ってわけじゃなくて、部屋に飾られていてもおかしくない様な出来だ。
部屋の向こう側からリーゼル達も興味深げにこちらを見ている。
「セラ、そちらを開けなさい」
自分の席から応接エリアに移って来たセリアーナが、長方形の箱を指して言った。
「ほい」
びっくり箱じゃ無いよな?とドキドキしながら開けると、中にはカラフルな指輪が、一個二個……十個。
これ宝石箱か……?
「これは?」
「少し遅れたけれど、お前のよ」
俺の……。
「……誕生日か⁉」
つい先日俺は11歳になったが、それか!
一昨年はケープで去年は服を色々……何だかんだで毎年貰ってるな!
しかし指輪か……。
「ありがとう!……でもなんでこんなにたくさん?」
この2年、貰ったのは実用的なものばかりだ。
この指輪もただのオシャレ用って事は無いと思う。
「姫、手を」
セリアーナが答える前に、隣に座ったテレサが俺の手を取り指輪をはめた。
「あ、うん……んんっ⁉」
俺の手は小さいし指も細い。
【影の剣】や【琥珀の剣】はサイズが指に合わせて勝手に調整される。
だから、俺も着ける事が出来るが、普通の指輪だと難しい。
セリアーナもその事がわかっているのに何故?と思ったが……。
「この指輪……なに?」
今はめられた指輪……サイズが変わった。
最初はぶかぶかだったのに今は俺の指にぴったりだ。
「魔物の骨と腱で作られた魔道具よ。装着する者の指に合わせてサイズが変わるの。凄いでしょう?」
やや自慢げなセリアーナ。
「……いや、凄いと言えばこの上なく凄いけれど」
それに対して俺はわけわからんと言った顔で応えた。
正真正銘フリーサイズだ。
それもガチャ産じゃなくて、人の手で作り出したってんなら、驚異の技術だと思う。
……思うけれど……一体これをどうしろと……?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




