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「おらああぁぁぁっ!」
森に響く俺の声。
そして聖貨を右手に持ち、渾身のガッツポーズだ。
ついでに照明の魔法も打ち上げた。
「へっへっへっ……手こずらせやがって…………!」
額の汗を手で拭いながら零れる小悪党っぽいセリフ。
なにも魔物に手こずらされたんじゃない。
勝てる魔物しか相手にしないし、ほぼ一撃で倒している。
何に手こずらされたって、兵士達だ。
1番隊……森の巡回だとかでうろついているし、冒険者達も奥まで行かずに浅瀬にいるから俺の狩場が……稼ぎ場所が……。
領内の平和の為に必要な事だけれど、俺の狩場は残しておいて欲しい。
真面目に稼ごうと思っていたのに、7枚稼ぐのに一月かかるとは思わなかった。
我ながら今まで聖貨を必死に集めていたつもりはなかったが、いざ集めようと思ったのにそもそも魔物と戦えないってのはちょっとストレスだった。
特に意味は無いが何となく誕生日までに集めようと決めていたし、間に合って良かった良かった。
「そんじゃ、帰りますかねー」
魔物の処理を引き受ける隊の笛の音が聞こえたのを確認し、俺も懐から笛を取り出し咥えた。
◇
「勢揃いだね……」
屋敷に戻り聖貨が揃った事と、今日ガチャるぜっ!とセリアーナに伝えると、夜に南館の談話室でと言われた。
その時点で想像は付いていたが、いつもの3人はもちろんアレクにジグハルト、フィオーラと、セリアーナ組が全員集合だ。
「いた方がお前も助かるでしょう?」
「うん」
アイテムであれスキルであれ、発動させるのに何かしらのきっかけが必要になる事が多い。
そうなると、名前から能力を推測する幅広い知識を有するこの3人は有難い存在だ。
だが、彼等が着いているテーブルには、酒とグラス。
後つまみが各種並んでいる。
「……すでに酒が入っている事には目を瞑ろう!」
ガチャなんて他人からしたら見世物みたいなものだ。
何かしら良い物をひいて見物料分位の知識はひねり出してもらわないとな!
「いくぞー!」
前やったのは何時だっけ?
王都に行く前だったから4カ月位かな?
あの時は【琥珀の剣】だった。
良い物なんだろうけれど、中々使う機会に恵まれない。
こと戦闘に関しては、【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】この3つが便利すぎるからな……。
来いよ!新たな主力!
「ふんっ!」
すかさずストップ。
浮かんだ言葉は【魔糸】……。
「くっ……」
王都でジグハルトが当てたやつだ。
あの時の叫び声は忘れられないな……。
ジグハルトの方を見ると、その事を思い出したのか苦い顔をしている。
宙に浮くソレを手に取り見てみると、細い艶のある白い糸がロープの様に束ねてあった、解けば結構な長さになりそうだ。
ただ……俺が持っていてもな。
「魔糸ね……。刺繍でも覚えたら?」
「いや……それはまだちょっと……テレサ、いる?」
セリアーナの言葉にちょっと答えを濁す。
単に布を縫ったりは出来るけれど、刺繍ともなると……。
これは侍女に任せよう……!
「では、ありがたく頂戴します。丁度雨季や冬と屋内の時間が増えますし、皆さんもどうですか?」
「そうね……、悪く無いわね」
受け取ったテレサが他の女性陣を誘っている。
そして、誘われたセリアーナ達も乗り気の様だ。
冬の時間潰しに刺繍とか……貴族っぽい。
そういや正真正銘貴族だったな……。
「そういや、聖貨を使って得られる物は色々あるが、お前は何が欲しいんだ?恩恵品も加護も色々持っているだろう?」
魔糸のショックから立ち直ったのかジグハルトがそんな事を聞いて来た。
「遠距離攻撃の手段が欲しいんだ」
「弓か何かか?【竜の肺】もだが攻撃魔法の威力を増加させるものもあるらしいが……」
俺は攻撃用の魔法はまだ使えないからな……。
その事はジグハルトも知っている。
遠慮しているのか今一歯切れが悪い。
「んー……特にこだわりは無いな。何でもいいや」
この世界物理的な遠距離攻撃手段は、弓か投擲かだが……【隠れ家】っていうミラクルもあるし、ここらでレーザー銃とか出て来ても俺は驚かないぞ!
……驚かないぞっ!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚