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東の空が明るんできた頃、ようやくゼルキス領領都の街壁が見えてきた。
ここまでのルートは真っ直ぐ一直線にとはいかなかった。
途中高くは無いが山があり、それを迂回するのに数キロ程回り込んだが……それ以外は街道に沿って移動した。
【隠れ家】での休憩を3度の合計1時間程したが……今は5時過ぎ頃か……?
出発したのが23時頃だったから、実質5時間そこらか。
メーターがある訳じゃないから体感になるが、それでも平均100キロは出ていたと思うから、500キロ程か?
確か、東京から京都がそれ位だった記憶がある。
どんだけ広いんだ……?
通常だと1週間かかるところを6時間そこらで踏破出来た事を喜ぶべきだろうか……?
「さーて……どうすっかな」
街壁の門はこの時間はまだ閉じているはずだ。
壁を越えてもいいし、なんなら検問の兵とは顔見知りだし、声をかけて通してもらってもいいが……今回の目的は誰にも見つからない事。
「むーん……」
この黒ずくめの恰好も、夜ならともかく明るくなってくるとむしろ逆効果だ。
まだ人の気配は無いが、あまりグズグズする訳にもいかない。
「夜を待つか」
この街、特に屋敷の警備の兵は訓練もいつも真面目に行っている。
空からの侵入にそうそう気づくとは思わないが、無理はいかん。
そう決め、領都から1キロほど離れた場所に降り、【隠れ家】を発動した。
◇
モニターから外の様子を伺うと、既に真っ暗で人の気配は周囲に一切無し。
念を入れて数分監視を行うが、人はもちろん魔物もいない。
早朝【隠れ家】に入り、風呂や食事を済ませるとすぐに眠気がやって来た。
昼夜逆転していたのもあるが吹きっ晒しでの長時間の高速移動は、合間に休憩を取っていても堪えた様で、ベッドに入ると夜までぐっすりだった。
「さて……行くか」
再び黒ずくめの恰好に身を包み、気合を入れ【隠れ家】から一気に外に出た。
「ふう……」
この【隠れ家】から出入りする瞬間が一番怖い。
俺が地面に近づく事なんてそうそう無いからな……。
とは言えその緊張の一瞬も終わり、高度を上げ街の南側に向かう。
今日もよく晴れて星空が広がっているし、見つからないように気を付けなければ……。
街の東側は魔物に備え外への警戒が強いが、それ以外は主に内側に向いている。
そこが警備の穴だな。
まぁ、空から侵入するようなのが俺以外いるかどうかは疑問だがな!
ふふん、と少々浮かれ気分で街壁を越え、領主屋敷の敷地内に入り込む事に成功した。
庭には犬を連れた兵がいる為、見つからないだろうとは思うが念を入れて屋根の上から親父さんの部屋を目指そう。
流石に屋根の上なら人目に付く事も無いから【妖精の瞳】も安心して使える。
屋敷の中は大分好き勝手に移動していたが、屋根の上から部屋を見つける様な事は試した事無かったから、コレ抜きだと手こずったかもしれないな……。
◇
部屋の窓から明かりが見えていたからまだ起きているのはわかっていた。
問題はどうやって中に入れてもらうかだったが、下手に姿を隠してノックだけしても、怪しまれてしまう。
かと言って中に聞こえる程の大きさで呼びかけても、警備の兵にも届いてしまうかもしれない。
と言う訳で、ここは窓の前に姿を晒してノックだ。
兵に見つからないように手早く済ませなければ……!
コンコンと窓枠を叩くと、部屋の中には一人だった事もあり、すぐに自ら窓を開け中へ入れてくれた。
「こんばんわー」
「うむ。よく来たね」
……全く驚くそぶりを見せなかった。
俺の事はもちろん知っているが、屋敷に滞在してそれも昼間とかならともかく夜中なのにだ。
「あの……ひょっとして気付いていました?」
上手くコソコソ潜入できた自信があったんだが……バレてたのかな?
「いや、驚いたよ。他の人間にはやらない方がいいかもしれないな」
事も無げに笑いながら答える親父さん。
そのまま執務机につくとこちらを見た。
「娘から、秋頃に使いを寄こすと手紙にあった。君の事だろう?」
セリアーナか……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】13枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚