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「後もう一個話があるんだよね。こっちは仕事とは関係無いんだけれど……」
リックの事は置いておこう。
やる気があるのは良い事だ。
「なに?」
「冒険者ギルドで相談事を受けたんだよ。この街出身の冒険者のおっさんなんだけれど、そこの家の子供が冒険者になりたいんだって」
「なればいいじゃない」
「うん。でもまだ12歳らしいんだよね」
「……それは止めた方がいいんじゃないかしら」
セリアーナはさして興味なさ気だったが、年齢を聞くと流石に止めた方がいいと思ったのだろう。
止めた方がいいと言った。
俺もそう思う。
ただ……。
「セラ殿。その冒険者はこの街の出身で、子供もそうだと言ったね?」
オーギュストが俺が話した事をもう一度確認してくる。
「うん。母親もそうらしいよ」
「そうか……」
そこが引っ掛かったって事はこの街の事をよく調べているのだろう。
流石団長殿。
「何か問題なのかい?」
「問題というわけではありませんが、ゼルキス領だったころはこの街で冒険者と言うと底辺職でした。稼げはしますが命を落とす事も多く、他所からの冒険者が中心でこの街出身の冒険者は、言ってしまえばそれしか出来ない者が就く職という認識です」
「……ダンジョンのある街とは大分違うんだね」
王都出身のリーゼルは驚きを隠せない様だ。
ダンジョンはなー……街の中に鉱山がある様な物だからな。
それも、実力と問題を起こさない程度の人格の持ち主って上のお墨付きが無いと入れない場所で、平民でそこに出入りできるのは兵士と冒険者だけだ。
それもあって、冒険者は男の子にとってのあこがれの職業だ。
この街だと、冒険者を目指すのはチンピラもどきか精々孤児院の子供位だろうか?
もっとも、装備を整える事が出来ずあっさり死ぬ事がほとんどらしい。
俺も孤児院にいたままだったら、娼館や開拓村行きを逃れても危なかったな……。
「丁度閣下の婚約の話が出てきた頃からこの街も腕の立つまともな冒険者が増えて来たという事もありますが、先の襲撃を大過なく乗り切れた事。そして騎士団の設立で2番隊に冒険者の一部が組み込まれた事。これらが要因で冒険者への認識が一気に変わったようです」
俺の場合は街の人間からは、冒険者というよりもセリアーナの使いと思われていたから、最初と接し方が変わっていないが、街ではそんなことになっていたらしい。
全然気づかなかったぜ……!
ともあれ、ここからが本題だ。
「んでさ、支部長が言うにはこの街出身の家だけじゃなくて、他の商人とか移住してきた家の子供も冒険者になりたいって子が結構いるらしいんだ。魔境の魔物の強さを考えずに他所の街と同じような感覚で言っているんじゃないかと思っていたらしいけれど、いざ街の冒険者の子供までなりたいって言ってくるとこれはちょっと違うんじゃないかって考えたみたいで、何とかできないか?って言ってるんだよね」
支部長としては冒険者は確保しておきたいだろう。
気を抜かなくても死ぬことがあるし、それだけに慎重だったけれど、今の流れは逃したくないんだろうね。
ただ、荒くれ者の相手は慣れていても、子供の育成ノウハウはもっていないんだろう。
何とかならないか?
と、これは雑談では無く相談として届けて欲しいと言われた。
「ふむ……今のままでももちろんダンジョンが出来てからも冒険者の協力は必要だし、その冒険者が領内の者であるのは望ましいけれど……どうだい?オーギュスト」
「そうですね……兵士の見習達に訓練を施すのでそれに参加させる事も出来ますが……冒険者とは勝手が違いますから上手くいくかどうか……。外の演習に参加させるわけにもいきませんし……」
確かに。
何が問題って、魔物が強いんだよな……この土地。
ダンジョンが拓かれたら、そこの浅瀬で俺がやったようにベテランに付き添ってもらって訓練ができるけれど……。
この街で冒険者が人気でない理由は正にそれだな。
「では、そちらは私達2番隊が引き受けましょう」
と、手の爪を終えて、足の爪に移っていたテレサが言った。
皆が頭を悩ませている中こともなげに言ったけれど、どうするんだ?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】13枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚