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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
8章・再び王都でアレコレと。
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「それではこちらにサインをお願い致します」


目の前に置かれた譲渡証の一番下にある欄。

お役人に見守られながらそこに俺の名前を書き、次いで保管先である屋敷の主のリーゼルとセリアーナも続いた。


「……はい。これで完了です。お待たせしてしまい申し訳ありません」


サインを確認した後、こちらに頭を一度下げ布に包まれた板状の物を恭しく差し出した。


縦50センチ横30センチ程だろうか?

思ったより小さいかな?


「はい。私、セラが確かに受け取りました」


最近似たようなやり取りをしたが、今回は襲撃は無しだ。


「それでは、私共はこれで失礼致します」


もう一度頭を下げ、退出していった。


「小さい絵1枚なのに随分大袈裟だよね……」


それを見送りながら、ついつい本音が漏れてしまった。


王妃様からの報酬の絵。

王都を出発する前日になったが、ようやく届けられた。


譲渡証は1枚だったが、作者のプロフィールや王家に贈られた経緯、どのような場で使用されたか等が記された冊子も付いている。

それ等の作成に時間がかかったらしい。


ちょっとした思い付きで要求した物が思った以上に大事になってしまった……。


「昔の事になるけれど、王族だったり役人だったりが、宝物庫の収蔵品を勝手に売りさばいてしまった事件が何件かあったんだよ。小さい絵1枚と言ったね?大物と違ってそう言った物の方が無くなっても気付かれにくいんだよ。だから小物の方が管理が厳しいんだ」


「なるほど……」


リーゼルの説明でこの面倒な手続きは納得できた。

美術品抱えて森や山を抜けるわけにも行かないし、街道を通るしかない。

そんな状況で隠し持って移動するなら、小物になる。


……やらないけれど、大怪盗・セラ様ならできそうだな。

まぁ、それは置いておくとして。


「開けてもいい?」


この一連のやり取りの間、肝心の絵は隠されたままだった。

王家から下賜される場合は中身を検めたりはしないそうだ。

タイトルは譲渡証に記されていたからわかったが、どんな絵なのかはわからない。


「もうお前の物よ。好きになさい」


そう言うと、セリアーナは冊子を手に取った。

リーゼルは知っている様だが、彼女も見た事ない作品なんだろう。


「では……」


まず目に入ったのは額縁だ。

木製では無く乳白色で、妙にツルツルしている恐らく何かの骨。

それに絵が収まりガラスの蓋がしてある。


それだけで普通の絵とはちょっと違う気配だ。


そして肝心の絵は……。


「ミラの休息だっけ?」


ベッドに腰を下ろした赤い衣装の女性が、小姓に鏡を持たせて、侍女に髪の手入れをさせている。

「ミラの審判」だとか格式ばったシーンが多いが、これは随分とラフな姿だ。


画材は何を使っているのかわからないが、衣装の赤や、黒い影等がキラキラと煌めいている。

顔料かな?


「……これは何の意味が込められているん?」


肖像画や風景画と違ってこういった絵には何かしら意味が込められている場合が多いが……何だこれ?


「今から90年程前に描かれた絵だね。魔物の討伐で王族や貴族の女性も戦場に出ていたが、国内が落ち着き始めたという事もあって、女性は家に入り芸術を始めとした文化活動の支援を行って欲しいという意味も込めて、当時の画壇の大家が贈ったそうだよ」


「……何か説教臭いね」


「あっはっはっ!母上も同じことを言っていたよ。君とセリアに、開拓に夢中になり過ぎないようにと伝えたいのかもね。まあ、深い意味は無いはずさ」


俺の反応が面白かったのか楽しげに笑っている。

一方セリアーナは無言で冊子を読んでいる。


「何か面白い事書いてあったの?」


「面白いというよりも……いえ、そうね。面白いわ。セラ、ここの赤と黒は何で塗られていると思う?」


セリアーナは冊子から顔を上げ、絵の赤と黒い箇所を指した。

キラキラしていると気になった所だ。

敢えてそこを指すって事は何か特殊な素材なのかもしれないが……。


「わかんない。宝石とか?」


「違うわ。黒は竜の血で赤はルビーを竜の胃液で溶いたものだそうよ。宝石って溶けるのね。額縁は手の指の骨……随分驕った物ね」


セリアーナは感心しているのか呆れているのかわからない様な声で言った。


「王族や貴族の生活スタイルに口を出すんだ。相応の物を差し出さないと首が危ういよ。もっともその頃から変化が表れているし、上手くいったようだけれどね。……ああ、もう役割は果たしているし、遠慮なく受け取っていいんだよ?」


この絵が、貴族文化の分岐点に関わっていそうな事にちょっとビビっていた事が顔に出ていたようだが、それに気づいたリーゼルが気にするなと言った。


……重要文化財くらいの格はありそうだよな。

ど……どこに飾ろう?

セリアーナの部屋でいいかな?

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚

エレナ・【】・【緑の牙】・4枚

アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだか持ってるのが怖くて博物館に寄贈したくなっちゃいそうな絵ですねぇ。歴史に関わる小物が出てくると世界観が感じられて嬉しいです。
[一言] 怪盗もそうだけど王妃と会うときにやたら警戒されたように暗殺者や工作員として考えると非常に危険。 セラの能力と特徴を考えると警備側からするととても面倒くさい。
[一言] けっこうすごい物だった
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