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「ねー、そもそも彼等は何でまたそんなバカな事やったの?どういうやり取りをしていたのかは知らないけれど、連絡が無いって事は中止って事くらいわかるんじゃ……?」
割と真っ当な疑問だと思う。
まぁ、元々まともじゃ無ければやるとかは言っていたけれど、一応動機位は知りたい。
「金か女だろうな」
「……なるほど?」
随分シンプルな……まぁ、理由としてはある意味真っ当か?
「王都の兵士は、採用試験に合格すれば、国民なら入隊できる。だが、城内勤務の場合は違って王都圏出身の者だけなのだ。そして城内勤務を選ぶものは非常に多い。王都圏出身だからと言って必ずしも採用されるわけでは無い」
「ほう」
じーさんがもう少し詳しく説明してくれるようだ。
流石は王都住み。
「支給される給料は大差無い。だが、城外勤務の場合は王都圏の治安維持の為に、魔物討伐の遠征に出向く事がある。そこで手に入った聖貨は徴収されるが、その分報奨金が支払われる。誰が入手しても等分だから……1度の遠征で金貨3枚から5枚程度か?それが年に数度ある。金を稼ぎたいのなら城外勤務の方が稼げるな」
年に数度って事は、金貨10枚位は稼げるはずだ。
正規の収入がいくらなのかは知らないが、これは大きい。
「大分違うんだね……それでも城内の方が人気あるの?」
「そうだ。お前はジャンルを問わず物語をよく読んでいたな?記念祭の神剣の儀や即位式。今回のセリアーナ達の様に結婚式が描かれていたシーンがあったはずだ。それ等は史実の場合が多い。その物語の舞台に立ち会える……名前は出ないが運が良ければ門番や音楽隊として登場する事もある」
「はー……ロマンティストが多いんだね」
まぁ……ちょっと気持ちはわかるかもしれない。
将来子供や孫に、昔話をしながら自分はその場にいたんだ……とか言えるもんな。
今回の場合俺は……新公爵の結婚式の裏で事件に巻き込まれた侍女……か?
「フっ……」
「ぬ?」
俺が感心しているとそれをセリアーナが鼻で笑った。
何か外したかな?
「間違いというわけでは無いがな……。城内勤務が人気なのは、そのロマンティスト達を狙う為だ」
「ん?」
どゆことだ?
「戦記物や英雄譚ならば男も読むが、城が舞台の物語は恋愛物が多いだろう?平民はおろか貴族でも用が無ければそうそう城には入れん。ところが城内勤務の兵は違う。立ち入れない場所はあるが、それでもある程度自由に出入りできる」
「…………ああ。女ひっかけんのね」
一緒にするのは違うかもしれないが、前世でテレビ局で働いている事をネタに女性に声をかける奴がいた。
娯楽の少ないこの世界。
ナンパの手段としては城内勤務ってのは強力な札だ。
……俺はセリアーナといるから城内に入れているが、もし違えば話くらいは聞いてみたいと思うかもしれない。
「そうだ。といっても……まあなんだ?男女の仲は難しいし、必ずしもうまくいくとは限らない。30を過ぎているのに未婚者ではあったようだしな……そこを付けこまれたのだろう」
冒険者ならともかく、兵士ってお堅い職で30過ぎて独身、それも城内勤務で……モテなかったのかなー……。
本来モテる職で全くモテずに取り残されていくおっさん達。
襲撃犯の特徴のない顔が頭に浮かぶ……。
「兵士は申請すればダンジョンを利用できるが、そこでの稼ぎを考慮してもここ数ヶ月、金遣いは荒かったようだ。女に上手く金を使うように誘導されたんだろう。そして、襲撃の話を持ち掛けられた……。ユーゼフ、当然そこは調べているんだろう?」
「もちろんだ。当人達の交友関係に出入りの店の経営者に利用客……、既に探っている。もっともどこまで辿れるかはわからんがな……」
「国内の貴族や騎士団が関与していない事がわかればそれで構わないよ。後は僕等が領地で引き受ける。そうだろう?セリア」
「そうね。よかったわねセラ。運が良ければお前の手で黒幕を捕らえられるかもしれないわよ?」
「待って?」
4人の事を憐れんでいたら何か話が結構飛んでいたぞ?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚