230
「ぉぉぉ…………」
感嘆なのか驚嘆なのか……自分でもよくわからんが声が漏れた。
目の前にいるセリアーナ。
淡いグリーンで、踝まで丈のある細身のドレス。
その上から、素材はわからないが光沢のある純白の鎧を纏い、腰には剣帯代わりの金色の鎖に細身の剣が下げられている。
手は二の腕まである白の長手袋。
そして、まだ台に置かれたままだが鎧と同じ素材らしき兜。
……俺の知っている結婚式の装いじゃないな。
「どうしたの?」
目元に化粧を施されているセリアーナが口を開いた。
普段はしているかどうかギリギリわかる位の薄化粧だが、今日は遠目からもわかる位はっきりとしている。
「う……うん。ちょっと思っていたのと違ったから驚いてんの。……似合ってるよ?」
着たいとかは思わないが、これはカッコイイ。
しかし、どういうコンセプトなんだろう?
「平民の結婚式は祝い事でしょう?貴族、それも領主のとなれば違ってきます」
口元の化粧に移り、喋れなくなったのを見たんだろう。
俺の後ろに控えている親衛隊の1人が耳打ちしてきた。
「へー……」
「どのような時でも領地の為に戦うという誓いが込められているのですよ」
「なるほど……」
今でこそある程度安定してはいるが、この国自体開拓して作られた国だ。
何かあるごとに貴族は戦う覚悟を示す様になっているが、結婚式でもそうなのか。
「口紅も目元も真っ赤だけれど、あれも何か意味があるの?」
「そうよ。遠目からでも顔がわかる様に赤を塗っているの。昔は血を用いていたそうよ。戦場でも簡単に手に入るでしょう?」
化粧を終えたセリアーナが鏡を見ながら言って来た。
「殺伐とした理由だね……」
「そうね……これで準備は完了ね。もう迎えが来るわ。セラ、後ろの3人はお前が使っていいから、ここを任せるわ」
「はいよ。こっちは適当にやるからお嬢様は式をしっかりね」
「フッ……言われるまでも無いわ」
自信たっぷりという顔だ。
この人の辞書に緊張って言葉はあるんだろうか?
「……と、来たね」
感心しているとドアをノックする音が部屋に響いた。
◇
いよいよ結婚式当日。
セリアーナ達を送り出した後の俺の役目は、離宮の1室でセリアーナ宛の贈り物の管理だ。
それ自体はいいんだが、もしかしたら襲撃があるかもしれない。
多分無いと思うが、あるとしたらここだけなので、セリアーナが俺の護衛にと親衛隊から3人引っ張って来た。
何も無ければ来客の対応を任せられる。
親衛隊は高位貴族出身の者で構成されている。
俺がやるよりずっといいだろう。
そして俺は受け取りのサインだけすればいい。
平民の小娘如き……と侮られたらどうしようかと思っていたが、王妃様の口添えもあったようで、3人とも親切で実に助かる。
「始まったみたいね」
この3人の代表格のテレサがそう呟いた。
この部屋は窓が無くあまり外の音は聞こえないが、それでも微かにラッパの様な音が聞こえる。
セリアーナ達が入場した合図だ。
結婚式と言っても、教会で夫婦の誓いをして、とかではなく、叙勲、陞爵の一環として行われる。
もちろん今日のメインではあるが、彼女らの為だけに行われているのではなく、しっかり出番まで待たされていたんだろう。
「このままだと何事もなく終わるかな?」
今のところ部屋を訪れるのは、離宮まで入場を許可されている貴族の使いか、入口で荷物を預かった兵士かだ。
机にグテっと伏せていても【妖精の瞳】とアカメ達の索敵は行っている。
少なくとも目につく範囲には怪しい姿は見えない。
巡回の兵士は絶えず行き来をしているし、これで襲撃って言ったらもう……全力でここまで突っ走って来る事くらいか?
足次第だが、もしかしたら兵を振り切ってここまで辿り着けるかもしれない。
「警備はしっかりしているけれど……内部にいる可能性もありますからね。もっとも私達が付いていますから、セラ殿は気を楽にしてくれて構いませんよ」
「そかー……。これ以上楽にするともう寝そうだけど……頼もしいね……ん?」
壁越しにだが、中に入って来た者達の姿が見えた。
入口の方からだし、また荷物かな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




