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滞在している離宮の玄関前で漂っていると、馬車が門を抜けこちらに近づいて来た。
馬車に付いている紋章はミュラー家だ。
速度を緩めガタゴトとやって来て、目の前で止まりドアが開いた。
「やー。お疲れさん」
「おう。出迎えか?外で待たせて悪かったな」
降りてきたのは正装のアレクだ。
待ち遠しかった……俺が出入りできる場所は女しかいなかったからな。
皆親切だけれどなんとも気疲れする。
挨拶をしていると到着を知った使用人が中から出て来て、荷物を運んで行く。
彼もこのまま帰還まで離宮で生活するから結構な大荷物だ。
「装備は騎士団の所?」
「ああ。ま城内だし仕方がないのはわかるがな……護衛が武器無しってのは具合が悪いな。まあ、その辺は中で話すか」
「ほいほい」
◇
セリアーナの部屋へ行くと、挨拶もそこそこに【隠れ家】を出すように言われ、アレクと共に中に入った。
強化で増えた部屋は今のところ倉庫扱いだが、中にはアレクの予備用の装備が数セット置いてある。
ルトルを出る前に手入れは済ませてあるが、二月近く放置していたから、念の為点検を行っていたが……大丈夫な様だ。
「改めて思うが……この加護便利だよな。雨季の間手入れをしなかったのに何の問題も無い」
「まあね!【浮き玉】と合わせてオレの生命線だから!」
気温も湿度も最適に保たれている。
生活するのはもちろん、食品から美術品、日用品に武具まで何でも保存できてしまう。
「さて、こんなもんか……入口に積んで構わないか?」
「いいよ。一応武器は鞘に入れた状態にしておいてね」
「おう」
そう言うとアレクは玄関前の廊下に剣や槍を立てかけ始めた。
防具は着脱に手間がかかるからか、鎧ではなく厚手の革のジャケットにしたようだ。
「そこのクローゼットも使っていいよ?中何も入れてないし」
「お?悪いな」
クローゼットはコートを掛けられるようになっている。
ちょっと重たいかもしれないが、壊れはしないだろう。
「使う事あるかな?これ」
片手剣が二本に短剣が三本で槍が一本。
靴箱の上には各種ポーションが積んである。
盾は【赤の盾】が。
しかし……。
「あの魔人の棍棒も中に置いておけば良かったんじゃないの?」
相手を選ばずダメージを与えられるあの武器は頼りになる。
「ん?盾をこっちに置いているからな。護衛の名目でいるんだ。二つ名の由来の両方を所持していないのは妙に思われるだろう?」
「確かに……赤の盾も棍棒も持っていないとなるとね……」
赤鬼要素が無くなってしまう。
「そう言う事だ。よし、完了だ。行こう」
イメージを守らないといけないとか、大変だな……。
◇
「それでは、予定の確認を行います……と言っても大したことはありませんが」
【隠れ家】から出た後、4人でこれからのスケジュールの擦り合わせを行うことになった。
司会はエレナだ。
「記念祭の初日と二日目は、離宮で待機です。式は3日目で、王城の謁見の間で陛下の前で宣誓を行います。私とアレクが付き人として同行しますが、セラ。君は離宮内の来客用の部屋にいてもらうよ」
「はいよ」
式には参加せず、お留守番だが、もちろんやる事はある。
「贈答品が届けられるから、その目録をお願いしたいんだけれど……。アレク」
ここでバトンタッチ。
「ああ。城の外で襲撃の気配は無かったが、王都から出て行ったわけでも無い。となると、動くなら式に合わせてだろうが、親衛隊に加えて騎士団の精鋭が周囲を固めている。お嬢様に手が届く事はありえない。そこで……だ」
そこで話を一旦区切りこちらを見た。
「狙われるならお前だ」
「……なにゆえに?」
俺狙ってどーすんだ?
「まともな判断をするなら、そもそもこの状況で手を出さない。それでもやるとなるとまともじゃ無いって事だ。ただお嬢様はもちろんご家族も式に出席し、同じく守られている。お嬢様の周りで浮くことになるのはお前だけだ」
「……なるほど」
式での襲撃ってのはもう潰れている。
それでも何かやらかす様なまともじゃ無い奴がヤケクソになって俺を狙うかもしれんのか。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚