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上手く核を破壊できたのか、ゴブリンの死体がサラサラと崩れ、消えていく。
ダンジョンの魔物は魔力だか魔素だかで出来ていて、核を壊せばこうなる。
放置していたら腐敗するようだけれど、仕組みはよくわからない。
外の魔物はちゃんと死体が残るらしいが不思議だ…。
まぁ、考察は後にしよう。
我ながら上手くやれたと胸を張り、どーよ!とばかりにエレナの方を振り向くと、何やら目を丸くしこちらを見ている。
割とアホっぽい顔だけど大丈夫?
「どしたの?」
確かに上手くやれたと思うが、昨日の事はアレクが報告しているだろうし、そこまで驚くような事とは思えない。
どこかにまだ魔物が隠れているのかと周りを見るが何もいない。
「君のソレ…そんなに速く動けるのかい?」
そっちか!
そういえば屋敷ではせいぜい俺の小走り程度のスピードしか出していなかった。
さっきのは50キロ近くは出ていた気がする。
…でもまだ行けそうな気がするんだよな。
本当にいつか限界チャレンジすべきなんだろうか?
まぁ、置いておこう。
「そうそう。まだ上がありそうだけど、どれくらいかはオレにもわかんないんだよね」
「そうなんだね…もう少し1人で戦ってもらっていいかな?危ないようなら助けに入るから」
「?わかった」
もう少し把握してからの方が合わせやすいとかなのかな?
まぁ、俺も一人で不意打ち以外の戦い方の練習もしてみたいし、丁度いいかな?
話しながら進んでいると、前から今度は2体現れた。
「やれるかな?」
「よゆーよゆー」
ゴブリン達もこちらに気づいたのか襲い掛かってくる。
まずは手前か「奥を狙いなさい!」む?
後ろからの指示に狙いを変えて、手前のゴブリンを無視して奥の方を目指し一気に上昇し加速する。
来るとは思わなかったのか、驚いた顔をし動きが止まったままだ。
そのまま先程と同じように頭を断ち切り、残りのもう1体を、と振り返ると既にエレナが倒していた。
なるほど…この要領か。
「上手くいったね。君の【浮き玉】なら多少離れていても一気に詰められるから、奥から狙っていこう」
「はいよ」
家庭教師を務めていただけあって、教え方がわかりやすい。
折角だし連携の基本を教わろう。
◇
「お!」
壁と天井に赤いラインが引かれている。
ここから先は浅瀬の奥と呼ばれるエリアだ。
予定では中頃までだったし、耳を澄ますと奥の方で微かにだが、人の声がする。
今年から冒険者になった連中が探索しているのかもしれない。
てことは、引き返すのかな?
「ここまでだね、引き返そう。帰りは私が前に出るから、君は合わせて欲しいんだけど、できるかな?」
ついに後衛か…。
入れ替わって以降ここまで俺が前に立って、エレナは時折後ろから「右」だの「奥を」だのの指示と共に【緑の牙】を槍の様に伸ばして援護をしていた。
要は縦の動きだけ気を付けておけばよかった。
だからこそ、指示があるとはいえ後ろからの援護にも対応できていたのだが…。
「あのさ…」
「ん?どうかしたかい?」
「鞭みたいにブンブン振り回すやつ。あれに合わせるとか無理だよ?オレ」
ファンタジーな世界だし、魔法も有ればそれこそアレクみたいな人間離れしたゲームや漫画キャラの様な力の持ち主もいる。
エレナもどちらかというとゲームや漫画の世界のキャラだ。
ただし、力ではなく技術が。
何かもう技名叫んでいてもおかしくなかった。
「そ…そうかな?それじゃあ剣として使った方がいいか…」
何か残念そうな顔をしているけど、やる気だったのかよ…。
確かにアイテムの使い心地を試すのも目的だったが、あれに合わせるのは…。
「わかった。じゃあやる時は教えて。近づかないから」
「⁉もちろんだ。任せてくれ!」
よっぽどやりたかったのか、声が弾んでいる。
まぁ、アイテム楽しいからね…気持ちはわかる。
「さあ、行こう!」
ちょっと張り切り過ぎな気はするけど、帰り俺出番あるのかな?