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「おや?隠れてしまって見えませんね。近くに寄っていいですよ?」
部屋に入り、セリアーナが挨拶をした後すぐに面を上げてよいと言われた。
ただ、俺は囲まれている為王妃様の顔は見えなかったのだが、向こうもそうだった様で、そう言って来た。
前を開けられ、エレナが背を軽く押しているが……行くのか?
王子、王女のリーゼルやエリーシャと顔を合わせた時も不意打ちに近かったけれど、王妃様だ。
なんだって……こう……突発的に会う相手じゃ無いよな……王妃様って。
「もっと近くに」
ちょこちょこ近づき1メートル程手前で足を止めるとさらに近づくように言われた。
ペチッと椅子のひじ掛けを叩いているが、そこまで来いって事なのかな?
母親なだけあって2人と顔立ちは似ているが、目つきは鋭い。
その鋭い目でこちらの目をジッと見てくる。
目を逸らしたりしちゃ駄目なんだろうな……。
「聞いていたのと違いますね」
「落とさせましょうか?」
「そうして下さい」
近づいた俺をさらに凝視し一言漏らしたが、化粧の事かな……?
◇
折角施した化粧を落としいざ再び対面と気合を入れるも、すっぴんを見て満足したのか、各人と一言二言交わし、王妃様は侍女や警備の騎士を引き連れ部屋を出て行った。
そしてそのまま俺達は部屋に残りお茶をしている。
あまり派手な調度品は置いていないが、家具はどれもエスタ産で統一されているようで、地味だが安くはない。
絨毯やカーテンの色合いから女性的な印象を受けるし、王妃様のプライベートルームなのかもしれない。
「……あれなんだったの?」
結局俺は未だなんの説明も受けていない。
王妃様かあるいはそのお付きに【ミラの祝福】を、とでも言うのならばまだわかったけれど、近くで顔を見せてそれでお終いだった。
代わりに今はエリーシャの膝に座り彼女に施療を行っているが、いい加減説明して欲しい。
今までもお偉いさんと会ったことはあったが、王妃様ともなればちょっと別格だ。
「お前、先日依頼を断ったでしょう? 今日その相手と王妃陛下はお会いするのよ」
「……うん?」
「わざわざ遣いをやってまで会おうとしたのに、断られたのに対し、特に用もないのに呼びつける事が出来るお母様。どちらが上かしら?」
セリアーナの言葉によくわからんと鈍い反応を返したら、さらにエリーシャが補足を入れてきた。
「いやがらせ?仲悪い相手なの?」
その為にこの大所帯で呼びつけられたんだろうか?
「国名は聞かない方がいいわね。嫌がらせと言えばそうだけれど、もちろんそれだけじゃ無いわ。最近お前の事が外国にも広まって来ているの。国内だけならミュラー家の名前でも十分対処できるけれど、流石に外国ともなるとね……」
あぁ……マネジメントは一切任せてあるからな……。
「マズい相手を断らせちゃったりしているのかな?」
ちょっと不安になりオリアナさんの方を見ると首を横に振っている。
「そんな事はありませんよ。ただ、国内だと本人から直接話が来ますが、外国だと代理人を挟む事が多いですからね。どうしてもやり取りで手間がかかる事が増えてしまいます。その分食い下がって来る事も……。今回のこれは公的なものではありませんが、それでも王妃様と面会をしたという事で、今後はいくらかスムーズになるかもしれませんね」
「……なんとっ⁉」
「お母様もあなたの事を知っていたし、興味はあったそうよ?たまたま時間に少し空きがあったし、今日の予定と都合がよかったからお会いしたのね。もしかしたら、お母様から依頼が来るかもしれないわね」
「おー…………あれ?結局何も説明されずに連れてこられたのってなんだったの?」
俺を連れてきたことに意味はあったんだろうけれど、結局そこがわからない。
「自分の事は教えないようにと言われていたの。恐らく何も知らない状態のお前を見てみたかったのね。でも、気づいていたでしょう?」
「王宮の奥の方にどんどん進んで行ってる時にもしや……?とは思ったよ……まぁいいけどさ。あんま怖い事させないでよね?」
「悪かったわね。少し調査で王家の力を借りたかったのよ。これで頼みやすくなったし、良くやってくれたわ」
セリアーナはあまり悪いと思っていないような顔で謝って来た。
調査……調査ね。
街のかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




