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夏の1月。
早いもので王都に着いてからもう一月以上経っている。
当初は雨季という事もあって、出かける事も無ければ来客も無く、ベッドと同化してしまうんじゃと危惧していたが、相変わらず1人でフラフラ出かける事は出来ないが、何だかんだやる事があって楽しめてはいる。
こういうのんびりした時間ってのもいいもんだ。
まぁ、しょっちゅうダラダラしている気もするが……屋敷でも用のある時は、先日の飛び込みの様なことを除けば前日に報せてくれるし、気楽なもんだった。
だったんだが……。
「あの……どこ行くの?」
昼食後、寝室に引っ込んでうつらうつらとしていたら、いきなり部屋にオリアナさんを含む数名がやって来て、訳の分からぬまま、ミュラー家のではないが、どこかで見た事ある様な紋章の付いた馬車に放り込まれてしまった。
一応【浮き玉】を始め恩恵品全般は身に付けたままだけれど、何処に連れて行かれているのか……なんか城に向かってるけれど。
「王宮からのお召しです」
……王宮?
「お城?」
「少し違います。城内にある王族の住居の事ですよ」
「へー……」
……んん?
「え、オレ城に行くの⁉」
そうですと頷くオリアナさん。
俺部屋着なんだけれど……ベッドで横になっていたから服に皺や寝癖も付いている。
「大丈夫ですよ」
髪に手を当てたり服を伸ばす俺を見てそう言うが……。
距離にしたら高々数百メートル。
その道程を、普段は歩く速さと大差ない馬車がガンガン突っ走り、これまた普段なら停止させられる城門もフリーパスだ。
いかん……展開が早すぎる。
城壁の中に進むとさらに壁があり、そこの門を通ると所謂お城があるが、それは謁見や役人が働く場であって居住用の建物では無く、そこを通過するとセリアーナ達が滞在している離宮があるが、その手前に同じくらいの大きさの建物があったのだが、そこが王宮だった。
城に近いし、庭園らしきものが見えていたから何かなとは思っていたが、ここが王宮だったのか……。
◇
王宮に入ると、そのまま風呂場に運ばれて行き、オリアナさん監督の元磨き上げられ香油らしきものを塗りたくられ、そして化粧を施された。
と言っても精々ソバカスを隠すのと口紅を塗った位で、大したことはしていない。
……鏡位は見せて欲しい。
そして靴を履いているんだから歩かせてほしい。
その後はいつの間にか合流していたセリアーナとミネアさんに恩恵品を取り上げられ、初めて見る服を着せられ、エレナに抱えられて、会話も無いまま奥へ奥へと進んで行った。
【浮き玉】はセリアーナが、残りは装飾の入った小さな箱に入れられジーナが持っている。
まぁね……流石にこの面子が揃っていて尚且つ王宮……ここまで来るとどこに向かっているのかはわかる。
王妃様かぁ……。
リーゼルやエリーシャ、それと王太子の母親が第1王妃で名前がレナス様って事は知っているけれど、それしか知らないぞ。
いいと言うまで黙って頭下げて置くようにと言われたけれど、もう少し心の準備をする余裕が欲しかった。
あまり恐ろしい人ではなく、むしろ気さくな人柄と聞く。
エリーシャやリーゼルを見てもその評判は本当なんだろうが、それでもね……。
女性騎士が侍るドアを抜け、さらにその奥へ進むとまたドアがあり、そこでようやく一行は足を止めた。
警備こそ厳重だけれど全体的に質素というか、広さにしても一般の感覚で言えば充分広いが、屋敷で俺が使っている部屋と同じくらいだ。
奥まった場所にあるし出入りするには不便だろうに、本当にここなんだろうか?
「……ねえ……むぐっ」
せめてもう少し説明を……と言いたかったのだが、エレナが空いている方の手で俺の口を塞ぎ、その後、指を立て口元にあて、喋らない様にとジェスチャーをした。
程なくして中に入るよう促され、そのまま中へ向かった。
ようやくそこで降ろして貰えたが、手は繋がれたままだ。
皆に周りを囲まれ、中の様子はよくわからないが、香水なのかお香なのか、お高い香りが部屋の中を漂っている。
「よく来ましたね」
部屋の様子も気になるが、言われた通り大人しく頭を下げていると、部屋の奥からお声が。
ちょっとエリーシャに似ているが、少し低いかな?
多分王妃様だ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚