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「この辺は流石に人が多いね。……その格好で大丈夫なの?」
北の教会、外国人居住地区から始めた街の調査も今日のこの商業地区のある西街で終わりだ。
ただ、他の地区もだが、商業地区と銘打っているからと言って商業施設のみ存在するわけでは無い。
表通りこそ店が並ぶが、裏に入れば倉庫や商人達の住居に、他所からやって来た商人用の宿等が並んでいる。
そんな場所に、鎧こそ付けていないが剣を帯びたごついにーちゃん達が練り歩くのはどうなんだろう……。
俺一人で中和できるだろうか?
「抜かなければ大丈夫さ。そう多くは無いが商人と直接契約をする時は屋敷に向かう事もあるしな」
「ほー……。ん?」
「どうした?」
お喋りをしつつも辺りの調査をしっかり行いながら移動していたのだが、商人達の中でも特に資産のある者達が住居を構える一画に辿り着いた。
貴族の屋敷程ではないが充分大きな屋敷が並んでいるが、その中の一軒に少し違和感を感じた。
この中ではやや小ぶりな3階建ての屋敷だ。
「いや、ここ……魔導士っぽい人がたくさんいるね」
資産家の屋敷が並ぶだけに屋敷には護衛の気配もあったが、恐らく皆平民の冒険者。
魔導士と呼べるほどの魔力を持っている者は皆無だった。
だがこの屋敷は、逆に魔力の高い者が多い。
なんだここ?
「ここは……ああ、「賢者の塔」が所有する屋敷だな」
「ぬ?」
「賢者の塔」は大陸北西部の自治都市で錬金術のメッカ……。
「なんでここに?」
商業地区だぞここ?
「薬師や他の商会との付き合いで、ここに構える方が便利なんだろう。他所の国でも商業地区に屋敷を構える事が多いからな」
「へー……。あ、なら別に変な事じゃないのかな?」
魔導士協会も元は「賢者の塔」の組織だったらしいし、魔導士が多くてもおかしくないのかもしれない。
「……魔導士が多いのはともかく、それだけというのは妙かもしれないな。一応マークしておくか」
「そうだな。ま、冒険者ギルドを当たればわかるだろうさ」
「ふむふむ……ん?」
屋敷を見上げていると、2階の窓からこちらを見下ろす人影が目に入った。
「どうした?」
「メイドちゃんだ」
背の高さから子供。
歳は俺と同じか少し上くらいかな?
街でもメイド姿の女性はたまに見かけるが、若い大人の女性がほとんどだ。
子供のメイドは珍しい。
「どれどれ……、あっと、引っ込んだな」
「人相悪すぎんじゃない?」
「違いない……。衛兵呼ばれる前に離れるか」
俺の揶揄いの言葉に乗っかるアレク。
真面目な話お金持ちの屋敷の前で、男が集まって屋敷の方を見ながら話をしていたらちょっと危険を感じるよな。
皆もそう思ったのか、頷きそそくさその場を離れた。
◇
王都内の調査の手伝いが終わり、後はアレク達の報告書が上がれば晴れてダンジョンに出向くことが出来る。
バトルマニアというわけではないつもりだが、やはり体を動かすのは楽しい。
折角入手した【琥珀の剣】も庭で振り回すだけじゃなく、実戦で使ってもみたい。
待ち遠しいぜ!
「これ美味しいわねー」
「本当ね。ここの店主って確か連合国で修業したって話よね?セラちゃん高かったんじゃないの?」
ダンジョンに思いをはせ、ムフーっと鼻息が荒くなっているところに、おやつ中のメイドさんの言葉が飛んできた。
只今使用人控室でおやつタイムだ。
以前と違って、一応俺は客人になるから本来ここに出入りするのは好ましくないのだが、行動に制限が付いているし、屋敷内くらいなら自由にと目を瞑ってもらっている。
「大銀貨1枚!まぁ、こっちでもあっちでもお金持ってても使わないしね。皆で食べるお菓子に使うのが一番だと思うんだ。届けてくれたお店の人が、西部は東部と違ってバターとかクリームを使ったレシピが豊富とか言ってたね。まだこっちじゃ出すお店は少ないらしいよ」
と、値段を言いつつ今日仕入れた豆知識を披露する。
服や本や傘のメンテナンスやらアレコレ本来なら出費があるはずなのだが、全部じーさん達に出してもらっている。
【ミラの祝福】の取次で、俺への報酬だけでなくじーさん達の懐にも結構な額が入っているとかで、快く払ってくれた。
おかげで使い道のないお金がどんどん増えて行っている。
また美術品でも買いあさるかな……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚