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「それで、お前の方は何か変わりはあって?」
やや急な話の切り替えかたな気もするが、エレナの方を見ても変わりは無し。
気にしなくていいのかな?
「オレの方は……お客様扱いでダメになりそう。周りが全部やってくれる……。雨止んだばかりだからまだ出かける用事は済ませて無いけれど、それも買い物が中心だって言ったらじーさんが屋敷に呼ぶから外に出る必要はないとか言うし……」
傘のメンテナンスはルトルでは難しいからと、王都の商業地区にある工房の紹介状を書いてもらっていた。
商業地区は以前の手入れで怪しげな所は一掃してあるとかで治安に問題は無いが、それでもそもそも子供が1人でうろつくような場所ではないという事で、誰かと一緒に、と言われている。
気にし過ぎな気もするが、万が一の可能性も避けたいという気持ちもわかるので、それ自体はいいんだ。
ただ、アレクが忙しいからじーさんに頼もうと思ったら……そうなってしまった。
工房の職人、新しい甚平用の生地、よさげなお菓子の新作等々、既に手配を済まされてしまい後は屋敷で待つだけだ。
「やる事が無いんだよ……」
ご婦人方がお茶会開くのもわかる。
手軽に出来る事ってそれくらいなんだ。
そして俺の【ミラの祝福】が盛況な理由も。
信用の出来る屋敷で、少しのお金を払えば美容ケアとお喋りが楽しめ、他所での話のタネになる。
そりゃー来ちゃうさ。
「お嬢様を狙う連中で腕の立つ者達は船を使う事で置き去りに出来たと思うけれど、王都圏にもまだ数はいるだろうからね。その連中が集まって来ていてもおかしくは無いから、アレク達の調査が終わるまでは我慢しようね」
「いつもオレが起きる前に出かけてたから何してるのか知らなかったけれど、そんなことしてたんだね……」
「今は何もしていないから排除する事は出来ないけれど、それでもマークする事に意味はあるからね。もう何ヵ所か目を付けているそうだよ」
「へー……」
「それがいち段落したらダンジョンに出てもいいわ。それまではおじい様方のいう事を聞いて大人しくしておきなさい」
「ぉぅ……」
「今年の記念祭は戦技会もありますし、調整もかねて前入りする者達も多いでしょうし、時間はかかるかもしれませんね」
俺の事はそっちのけで話を弾ませる2人。
戦技会は、大森林同盟初期の4ヵ国が持ち回りで主催する武闘会で、今年はこの国で開かれる。
西部から参加する者も多く、東部での一大イベントの一つらしい。
よくある武闘会は仕官を目指す者が多いそうだが、この大会は貴族の推薦を受けたものが出場する。
貴族のお抱え戦士のお披露目会の様な物だ。
主催国は参加せずホスト役に専念する当たり、あまり殺伐とした大会じゃないらしい。
そんなわけで、参加者は比較的お上品な場合が多いそうだが、彼等に挑み名を上げようとする者もいるとかいないとか。
アレクがどんな調査をしているのかわからないが、俺がダンジョンに行けるのはもう少し後になりそうだ。
◇
「セラ、動いてはいけませんよ」
「むぅ……」
寸法を取られている際に、ついもぞもぞ動いてしまいオリアナさんから注意を受けた。
セリアーナとの面会を終えて数日。
相変わらずアレクは忙しい様で、俺は屋敷内で時間つぶしの日々だ。
もっとも雨は止んだ事で、多少はやる事のバリエーションが増えた為、何とか駄目にならずに済んではいる。
毎日1組に施療をして、土産をもらい小遣いを稼ぎ、ゴロゴロする忙しい日々を送っているが、今日は何でか仕立て屋を呼び、俺の服を仕立てることになった。
「もうすぐですからね」
と、採寸をしているおばちゃんが言った。
この人の他に、記録をする人に生地や素材を手にした人など、合わせて5人いる。
「いくら式に出席しないとは言え、あなたも控室に出入りするわけですからね。恥ずかしく無い恰好をしなければいけませんよ」
「はーい……」
俺が払うわけでは無いけれど、控室に行くためだけの服を仕立てるとかちょっと勇気がいるぜ……。
「きゃっ⁉」
と、すぐ後ろでおばちゃんが悲鳴を上げた。
「どうしました!」
「なに?」
「あ……失礼しました。その……襟元から影が……」
あぁ……。
「それ、オレの従魔です。気にしないでね」
俺は採寸されるのに向いてないかもしれないね。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




