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王都に着き屋敷に滞在するようになってから早4日。
降り続いた雨も昨日には止み、今日はすっかり晴れている。
王都の雨季は終わったようだ。
「ていっ!」
左手で握った【琥珀の剣】を庭に刺した杭目がけて振り下ろした。
すると大して力を入れていないのに、ガシャンとガラスが割れたような音と共に刃が砕け、そして……。
「ぉぉぅ……」
その砕けた刃がズバババっと杭目がけ飛んでいき突き刺さった。
「……あ」
解除するとその破片も消え、発動し直すとまた手元に剣が現れる。
面白い。
「ほいっ!」
再び的に切りつけると同じように、砕け、破片が刺さった。
破片は一つ辺り5センチ位の刃状で、大体2センチ程の深さまで刺さっている。
確かにこれなら魔物相手じゃまともにダメージを与えられないし、人間にも致命傷は難しいかもしれない。
ただ、正確というわけでは無いが、切りつけた場所ではなくその対象の狙った部位を目がけ飛んでいくし、牽制には使えそうだ。
武器の割には訓練抜きに誰でもある程度の効果を見込めるこの【琥珀の剣】。
そう聞くと暗殺用にも向いているんじゃないかと思っていたが、これだけ音がするんじゃ無理か……。
まぁ、対人にせよ対魔物にせよ、俺の本命は【影の剣】だし、充分だな。
ゲットしてから一月近いお預け期間を経て、ようやく試すことが出来た。
「腰が入っとらんな」
「ぐっ……い……いいんだよ!どうせオレはいつも浮いてるんだし」
後ろで見ていたじーさんから指導が入った。
まぁ、へっぴり腰だったことは認めよう。
簡単に砕けるから怖いんだ。
「確かにアレならお前の足を補えるが、それでも当てない事には発動しないだろう?護身用に使うならまだしも、魔物との戦いで使うのならしっかり振れる様になっておかなければ意味が無いぞ?」
「ごもっとも……」
全く以て正論だ。
「む?食事の用意が出来たか……ここまでにしよう。準備もあるしあまり時間を掛けられんからな」
裏口から使用人が呼びに来ているのが見えた。
「……はーい」
渋々頷き、先を歩くじーさんの後を追い屋敷に向かった。
……行きたくねぇなー。
◇
王城の敷地内に入り、貴族学院に騎士団本部を通り越し、さらに城門を通りその奥へ行くと、セリアーナ達が滞在する離宮がある。
ここは主に王族の関係者が利用する為のもので、警備は負けず劣らず厳重だ。
そして城の中って事は、恩恵品は正当な理由があろうとも申請しないと持ち込めず、不安だからとか歩くのが面倒だからとかでは持ち込む事が出来ない。
じーさん達は親父さん達との話があるようでそちらへ行き、アレクは護衛の打ち合わせだとかでオーギュストと共に騎士団本部へ。
そして俺は一人セリアーナの部屋で待たされている。
「よく来たわね……お前は何をしているの?」
ソファーにクッションを抱え蹲り、アカメとシロジタを潜望鏡の様に服から伸ばしている俺を見とがめた。
この声の感じは呆れているな。
「……何もかも落ち着かないんだよ」
恩恵品は全部外し、飾り気のないシンプルな物ではあるが、ドレスに靴。
普段とは大分違う格好で、敵じゃないとは言え武器を持った知らない者がウロウロしている所に1人でいるんだ。
これだけ積み重なると、正直帰りたい。
「それは……慣れなさいとしか言えないわね。まあ、いいわ。来なさい」
そう言うと1人掛けの方に座り、自身の膝を叩いた。
「はいはい……。んでさ、どーなのよ?色々大変なの?」
膝に乗り【ミラの祝福】を発動すると抱え込む様にして来た。
お疲れなのかもしれない。
「私はそうでも無いわ。もう結婚相手はリーゼルがいるものね。その代わりアイゼンやルシアナへの話は多いそうね。面会希望も城の中にも拘らず随分来ているわ。お父様達やフローラ様も大変そうよ。2人は他家との付き合い方、特に外国貴族とのね……それを教わっているわ」
親父さん達はある程度前もってわかっていただろうけれど、今までと立場も変わるだろうし、子供達も大変だな。
辺境の武闘派一族が、王家と縁続きか……良いのか悪いのか……。
「何?」
上を向き、セリアーナの顔を見ているといつもと変わらぬ顔。
「ん。何でもないよ」
このねーちゃんは平気そうだな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚