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夕食後、昼間長時間付き合わせた礼にと、談話室でエドガーから【琥珀の剣】について話を聞かされた。
リーゼルやエリーシャ達もいるが、エリーシャ付きの2人の侍女を除くと使用人もおらず気楽な席だ。
助かる。
俺は部屋にいたから聞いていなかったが、先日晩餐の席でサリオン家も所有している事がわかり、アレクが上手い事やった結果だ。
……もう少し上手くやってくれても良かったような気はするが、そこは目を瞑ってあげよう。
まぁ、肝心の【琥珀の剣】についてはあくまで家で継承している物であって、彼自身は使った事が無い為わかった事は少なかったが……。
とは言え、砕いても発動し直せば元通りに出来る事や、大体の威力は判明した。
王都についても騎士団の訓練場は使えないから、ダンジョンでぶっつけ本番になるんだろうかと思っていたが、聞いた限りなら、屋敷の庭でも十分そうだ。
魔物相手だと、ゴブリンなどの弱い相手位にしか使えないな。
本当に護身用だ。
そして……。
「500枚⁉」
効果の説明が一段落したところで、入手した経緯も話してくれた。
60年位前に、たまたまガチャを試みた領民から買い上げたそうだが、金貨500枚って……安くないか?
1枚で済む当たりの聖貨を使わない限り、金貨に換算するとガチャ1回200枚だ。
2.5倍だが……、もっとしてもいいよな?
「そう。500枚だ」
俺の上げた驚きの声に頷くエドガー。
ただ、続きがあるようで再び口を開いた。
「金額だけならもっと払ってもいいんだが、にわかに大金を手にすると無用のトラブルを招きかねないからな。よほど格のある物ならばまた違ってくるが、マーセナル領では恩恵品の買取は原則金貨500枚となっている。それにあくまで現金ではそれだけだが、他にもある。2代にわたってその一家は無税になるんだ」
「なるほど……」
確かにポンと大金を渡されても、銀行も無いし危ないよな。
「セラ、2代にわたって無税になるって言うのは大きいぞ」
「ぬ?」
「俺が知っている話だと400枚だったが税の免除は同じだった。そして、その得た金を基に商売を始めたんだ。今ある大商会は国や領地の初期から関わっているからこその発展だが、新興の商会は恩恵品の献上をきっかけにしたところが多いぞ」
「ほーう……」
流石、商家生まれのアレク、面白いネタだ。
堅実に少しずつ切り崩していくのも有りとは思うが、いわば降ってわいたお金だし、税金免除。
投資を考える者がいてもおかしくはない。
平民の投資先なんて、農場作るか商売始めるかだろうし……。
「その商売始めたところはどうなったの?」
「潰れたな。俺の実家が吸収していたよ」
「ぉぅ……」
まぁ、投資はこける事もあるよね。
◇
「雨降ってるねー」
「本当ね。雨季とは言えこの辺りはあまり降らないのだけれど……お前も今日は城に残る?」
「うーん……」
船を降りて2日。
グラードの街を出発し、今日ようやく王都に到着だ。
丘陵地帯は続くものの、崩れる様な道も無く、予定通りに行くだろう。
ただ、想定外と言うほどでは無いが、少々雨足が強い。
王都周辺は、地形なのか何かファンタジーな力が働いているのか、雨季でもあまり雨が降ることは無い。
なのだが、今日はしっかり朝から降っている。
王都に滞在する2ヶ月と少しの間の宿泊先は、セリアーナ達は城の敷地内にある離宮らしい。
そこで色々お勉強をするとか。
王族と縁戚関係になるし、立場とかも変わって来るんだろう。
長男のアイゼンが学園を卒業しても王都に残っているのはその為だ。
じーさんとオリアナさんは既にそれを受けているとかで、屋敷にいる。
俺とアレクはそちらに世話になる予定だ。
その為、俺はやることは無いがアレクは護衛の打ち合わせもあるので城まで行き、そこから屋敷に向かう事になっていたのだが……この雨。
城に残ると恩恵品は使えない上に堅苦しい環境。
1日そこらとは言え、緩み切った今の俺じゃー厳しいな……。
「傘あるし、予定通りにするよ」
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚