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「西部の複数の勢力が私の命を狙っているわ」
「大人気だね……」
個人に命を狙われるとかはこの世界でもあるが、国、それも複数から狙われるとかそう無い事だ。
「光栄な事ね。彼等は私を自らの手で殺し、そしてその事を広く伝えたいの」
「うん」
そうする事で大森林同盟の東部開拓を阻止するらしい。
やればこうなるぞって、見せしめみたいなものだ。
西部と一括りにしてあるけれど、別に全ての国と険悪な関係なわけじゃない。
ただ、西部の盟主格の国の意地と思想でそうなっていて、ついには教会を取り込んでまで積極的に溝を深めて来ている。
「だから場所や手段も選ぶのだけれど……フフフ」
おかしさが堪えられないのか、話の途中で笑い始めた。
大口開けたりこそしないが、口元とお腹を押さえ、クスクス笑っている。
「どしたのさ?」
今の話のどこにそんなお笑いポイントが……?
「フフ……。山を迂回するか越えるか、お前も気にしていたでしょう?きっと彼等もそうね。本来王都へ行くにはそのどちらかを選ぶしかなかったのだから……」
「あー……どっちにいるかはわからないけど、待ち伏せが空振りになっちゃうんだね」
ピンときた。
冬じゃないから凍死はしないだろうけど、雨季の山の中で待ちぼうけとか壮絶だ。
敵ながら同情……はしないな……うん。
「それだけじゃないわ……フフフ……」
また笑い始めた。
「そんなに面白いことなの?」
「ルトルを出てからずっと追跡を受けていたのは気づいて?宿泊するたびに入れ替わったりと手間をかけてはいたけれど……」
「気づかなかったよ……商人とか冒険者じゃないの?」
ブンブン首を振り答えた。
ルトルから領都、領都から麓の村まで一行から少し距離をとって商人達がついてきていたのは途中で確認していた。
俺達と一緒なら野盗は手を出さないだろうし、魔物が現れたって倒してくれるだろうし、安全は確保できる。
そこらへんは護衛付きのお貴族様の旅ではよくあることだ。
ゼルキス領内の商人じゃないし、このまま王都までついてくるのかな?とかは思っていたが、いきなりどっか行ってしまったからさぞ驚いているだろう。
足元みられるだろうけれど、冒険者の数は足りているから護衛は頼めるだろうが……そこは諦めてゼルキスの冒険者にお金を落としていってもらおう。
「彼等のさらに後ろから来ていたのよ。私達の出発を見届けてから先手を打って鳥を使っていたわ。ただそれもフーシャの街まで」
フーシャの街。
山越えか迂回かの分岐点にあった街の名前だ。
「山と森があるからね……」
だんだん言わんとする事が分かってきた。
麓の村は正確には、山の裾野に広がる森の麓にある村だ。
空を飛ぶ魔物が多く生息し、従魔といえどもそこを突破させるのは伝令という役割を考えると現実的じゃない。
他所との情報の伝達が遅れてしまうゼルキスの悩みの原因でもある。
で、どうやっているかというと、騎士が頑張って走る。
魔物が多数生息する山を。
俺達が麓の村に向かった時点で山越えと考えたはずだ。
そこでも先手を打つために情報を届ける必要があったが、待ち伏せをするためにも騎士でもないのに馬を飛ばして山へ向かうような目立つことはできない。
自分の足で一生懸命走ったんだろうなぁ……。
セリアーナからしたら、自分を殺そうとしている者達がそんな滑稽な真似をしていたら、そりゃー、おかしいだろう。
いつの間にか笑い方がクスクスからニヤニヤに変わってきている。
しかし、これって王都との往復路での襲撃が不可能になったってことだ。
帰りもこのルートを使うだろうし、当然守りはしっかり固められているだろう。
他所の国でその守りを突破するだけの人数を集めようものなら、襲撃以前に捕縛されてしまう。
だからこその奇襲なんだろうけれど……、見事に潰れたな。
昨年冬の防衛戦の様に、突発的にどこかが妙な事を仕掛けてくることもあるからまだまだ油断はできないけれど、後特に気を付けるべきはダンジョンを拓いた時か。
狙われるってわかっているのに妙に鷹揚に構えていると思ったけれど、こうなる事がわかっていたからなのかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚