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低い笛の音が辺りに響き、それを合図にリーゼルが乗る馬車が出発した。
すぐに俺達が乗る馬車もだ。
この2台に、クマの頭を始めとした荷物を積んだ分が1台の3台編成だ。
窓から外を見れば頭を下げ見送る使用人の列。
さらに少し離れた位置にはジグハルトとフィオーラがいる。
彼等はお留守番。
一緒に来てくれると頼もしいが、何かのっぴきならない事態が起こった時に力尽くで解決できる存在として、残ってもらうことになった。
【竜の肺】は預けてあるし、まぁ……よほどの事があっても大丈夫だろう。
「……」
「何?」
ジッと見ていたのに気付いたのかセリアーナがこちらを見た。
「結局どのルートで行くのさ?」
山を迂回か突っ切るか、どちらを選択するのか実は未だに知らなかったりする。
「まだ秘密よ。私はお前がペラペラ喋るとは思っていないけれど、他はそう思うかわからないでしょう?私、リーゼル、エレナ、アレク、オーギュスト。領都ではお父様とお母様、それと騎士団長の3人だけしか知らないわ」
「まぁ、何聞かれても知らないって答えていいのは気が楽だけれど……」
一応これでも先輩や貴族相手には気を使っている。
対応の仕方に悩まされずに済むのは助かる。
ただ、一応俺も何かあった時に備えての覚悟を決めておきたいんだが……。
「お前も退屈しないで済むはずだから、楽しみにしておきなさい」
「……?」
どういうこっちゃ?
◇
ルトルを発って1週間。
ようやく領都に着いた。
急ごうと思えば2日位は巻けただろうが、万が一の事があると洒落にならないから慎重を期したんだろう。
朝出て日が傾く前に宿泊先へ。
のんびりした旅だった。
「何も変わって無いね」
「一目でわかるほど大きく手を加える様な事はもう無いでしょうね。もっと何十年かしたら色々建て替えたりもするでしょうけどね」
東門からこの街に入る事なんてそうそう無かったから、ちょっと新鮮な気分になるかもとか思っていたが……何にも変わりないな!
と、そこに窓をノックする音が。
アレクだ。
「どうしたの?」
「どうも中央通りからお嬢様を一目見ようと住民が並んでいる様です。対応をお願いします」
「あら、大人気……」
「当然ね。セラ、代わりなさい」
真ん中に座っていたセリアーナと席を代わり、窓側に移ってもらった。
しかし、結婚の事は住民も知っているのか。
セリアーナは領主一族として、よく街に出ていたからやっぱ人気がある。
他の2人の事はよく知らないが、結構プレッシャーだろうな……。
◇
屋敷に着くとセリアーナ達は親父さんの部屋へ向かった。
ここに泊まるのは今日だけで、明日には出発するし、予定はびっしりだ。
そして俺は俺でセリアーナの部屋でお仕事中。
「エレナ様とアレクシオ様はご実家に泊まるのよね?」
「うん。お父様とお話をするーとか言ってたね」
ルトルでも充分手柄をあげたし、式は何時になるかはわからんが、今日正式に婚約をするそうだ。
元婚約者はどうしているかは知らないが、セリアーナ、リーゼルそして親父さんがこの話を纏めたんだし、どうにもならんだろう。
「セラちゃんは何かそういった話は無いの?」
メイドさん達とうんうんと頷いていると俺に矛先が。
「何も無いねー。おっさん達にはモテてるけど……。はい終わり。次お願いしまーす」
モテようともモテたいとも思わないが、なんも無いな。
年近いのと関わること自体無いしな……。
まぁ、そんな事は横に置いて仕事だ仕事。
「次はこれね……」
お喋りがてらやっているのは、セリアーナ宛の贈り物の目録作りだ。
部屋いっぱいに積まれた箱。
その中を検めている。
明日ルトルに送らせるが、大半はこの屋敷に置いて行き、残ったそれらは使用人達に下げ渡されることになる。
それでも返礼の為に残しておかなければならない。
……不毛だ。
「セラちゃんはお嬢様の結婚式には出るの?王都でも有名なんでしょう?」
「いや、オレは控室でお留守番だって。外国の貴族様達もたくさん来るらしいしねー」
さすがにおばちゃ……女性が多いとお喋りの種は尽きない。
話があちらこちらに飛んでいく。
黙ってやるよりは退屈しないかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚