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「やるぞー!」
両拳を頭上に掲げ、聖像に向き合った。
「いいからさっさとやってしまいなさい」
俺の気合の声をどうでもいいように流すセリアーナ。
「むぅ……」
ジグハルトは理解してくれるのか苦笑して肩を竦めているが……まぁいいか。
出発前夜。
アイテムやスキルの情報は多いにこしたことは無いからと、いつもの3人に加えジグハルトとフィオーラもいる状態でガチャに挑むことにした。
2人にはまだ【隠れ家】の事を話していないが、また【強化】が来る事なんてそうそう無いだろうし、万が一来てもその時はその時だ。
出来れば20枚貯めて2回挑みたかったが、合同訓練が続き俺が1人で倒すような機会は少なく、1回分しか貯まらなかった。
まぁ、背水の陣ってやつだ。
この1回で今度こそ遠距離手段を射止めてやるぜ!
「ふんっ!」
捧げた聖貨が消え、脳内に鳴り響くドラムロール。
何か久しぶりに聞くなこの音。
さぁ、良いの来てくれよ!
「ほっ!」
あまり引っぱらずにストップだ。
直後頭に浮かんだ文字は【琥珀の剣】。
剣……剣か。
遠距離じゃ無さそうだな……。
そして、眼前に浮かんだ小さい輪っか。
あれ?
また指輪?
「よっと……」
浮いたそれをキャッチし、手のひらに乗せよく見てみる。
……半透明の黄色……ああ、琥珀色か。
琥珀色の細い指輪で、【影の剣】よりもうちょっと華奢な感じだ。
「何が出たんだ?」
アレクとジグハルトが興味津々といった様子で近寄って来た。
2人はこれが何か知っているかな?
「指輪だけど【琥珀の剣】だって。知ってる?」
「……⁉【琥珀の指輪】か」
「お?知っているのかアレク」
「話に聞いただけですが……。これはお嬢様の方が詳しいんじゃありませんか?」
揃ってセリアーナの方を向くと、頷いた。
「まずは開放しましょう。来なさいセラ」
「ほい」
◇
「見た目は変わらないね。どんな物なの?」
開放を済ませたが【影の剣】と同じく見た目は変わら無い。
指にはめるとジャストサイズになるのも同じか。
「発動すると剣が現れるわ。貸しなさい」
それだけ言うと俺から指輪を抜き取り、自分の左手の指にはめた。
「おや?」
フッと手を振るったかと思うと、いつの間にか細身の剣が手にあった。
50センチ程の透き通った刃で、ガラスのような印象を受ける。
「私も見るのは初めてね。エリーシャ様の侍女が付けていた指輪があったでしょう?あれは【琥珀の盾】という名で、これと対になっていると言われているわね」
エリーシャに【ミラの祝福】を使った時に側に控えていた二人。
何かアイテムを持っていたとは思ったが、そんな名前のだったのか。
「あちらが守りに対して、こちらは攻撃だけれど……。切りつけると刃が砕けるの」
「ん?」
見た目通り脆いのか?
「その砕けた刃が切りつけた相手に突き刺さるそうよ。武器ではあるけれど、護身用といった方がいいかしら?」
「へー……。強そうだけれど、護身用なの?」
ガシャーンっと砕けた刃がズドドドドっと敵に突き刺さる……。
前世のゲームや漫画での戦闘シーンでありそうなイメージが頭に浮かぶ。
結構強そうなんだけれど……?
「必ず命中するそうだけれど、破片の一つ一つが小さく殺傷能力は低いらしいわ。どこの国だったかしら……確か西部の公爵家では代々、第1夫人に受け継がれていると聞くわね。訓練を必要としないしいつでも身に付けてられるから、いざという時に使うんじゃないかしら?」
「へー……。訓練がいらないってのはいいけれど、魔物には使え無さそうだね。どうしよう……お嬢様が持つ?」
折角だけれど、懐剣みたいな物だろうし俺が持っていてもな……。
どこぞの国の公爵夫人が持っているのなら、セリアーナだってそうだ。
「いいえ。お前が持ちなさい」
だが断るセリアーナ。
「いいの?いや……ちょっと面白そうだとは思うけれど」
「お前、人間相手に加減できないでしょう?野盗程度なら構わないけれど、生け捕りにしたい時に困るわ」
「……なるほど」
何というか俺は極端な装備だからな……人間相手に戦闘をしたことは無いが、野盗相手だろうと確かに使うのはちょっと躊躇ってしまう物ばかりだ。
そう考えればこれは俺向きともいえる。
当たりじゃないか!
「ああ、明日はもう出発だから、それを試すのは王都に着いてからにしなさい」
「⁉」
お預け期間長くない⁉
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚