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「セラ、お前に仕事があるわ」
「なんぞ?」
冬の3月ももう後わずか。
そんなある日、セリアーナから仕事の話が出た。
水路の点検ももう終わり、そろそろ森に繰り出そうかなと思っていたが……。
「これを見なさい」
1枚の紙きれをこちらに渡してきた。
先程やって来たリーゼルの使いが置いて行った物のうちの1枚だ。
何やら形式ばった文章で書かれているが、街の錬金術師、薬師の名前が連なっている。
「何これ?」
兵士と冒険者の連帯がどーのこーのと書かれているが、錬金術師達が何故これを出してくるんだろう?
「防衛戦があったわね?あれで大分ポーションを消費したでしょう?その際に通常レシピで作った物より効果が高く少量で済むからと、彼等のオリジナルレシピのポーションも使っていたそうなの。あの後しっかり素材の補給があったから、またポーションの供給は元通りになったけれど、相変わらず薬草が不足しているそうよ」
「オレもずっと採集に行ってなかったしね……」
それを聞き頷くセリアーナ。
雨季までは結構真面目に採集に励んでいたが、それ以降は行っていなかった。
ただ、本来なら春まで持つくらいの量は確保していたが、あの非常事態だしな……。
「この街の冒険者がわざわざ薬草を採取しない理由は覚えているかしら?その事も薬師達は理解しているし、兵士と冒険者が互いの領分を侵さないようにしているのもね。だから合同で動いて欲しいと訴えて来たわ。リーゼルもその効果は理解しているし、巡回で兵士が森に立ち入るようにもなったから、新人同士の合同訓練という形で訴えを聞くことにしたの」
「オレは冒険者枠で参加するの?」
「いいえ。兵士、冒険者どちらも新人に任せるそうよ。いくつかのグループに分けて森での行動の訓練も兼ねてね。お前はその際に周辺に魔物がいないかを探って欲しいの」
「あー……。他所での経験の無い人も増えてるんだっけ?」
相変わらず強力なベテランが流れて来ているが、ド素人までやって来ている。
多分開拓による好景気を見込んで成り上がろうって魂胆なんだろうが……中々のチャレンジャー……。
「そう。そのままじゃ使い物にならないだろうし放っておいてもいいのだけれど、治安悪化の原因になられても困るし、それなら少しくらい手間をかけても、役に立ってもらう方がいいの」
「そか……わかった。でも魔物が出てきたらどうするの?オレが倒す?」
俺一人で戦うなら、いざとなれば逃げればいいし問題無いけれど、他人、それも弱いのが一緒となるとちょっと厳しいぞ?
「しばらくは指導者役にベテランを付けるそうよ。お前は指示を聞いておけばいいわ」
あくまで探査係として動けばいいんだな。
「了解。いつから?」
「明日からよ」
……急だな!
◇
「お……。そこの茂みの奥にゴブリンが5体いるよ」
「ん?わかった。聞いたな?次は数が多いから全員で当たれ」
魔物を発見し報告すると、アレクがすぐに指示を飛ばした。
ゴブリンと言えどここのは中々強いし、手堅い采配だ。
「はいっ!」
それを受けた新人達は薬草の入った袋を置き、武器を構える。
まぁ、6対5だ。
問題無いだろう。
さて、昨日聞いたこの合同訓練。
東門から出てしばらく行った所にある訓練場。
集合場所であるそこに集まっていたのは、緊張した面持ちで袋を背負った新人兵士と同じく新人冒険者計6名。
皆10代半ばくらいの若者だ。
そして彼等の前で訓示していたのは指導係であるアレクだった。
面倒見がよく腕が立ち、防御技術に優れ尚且つ俺の扱いに慣れているという事で、初日は彼になったそうだ。
知らされていなかったから驚いたが、ありがたいっちゃありがたい。
「奥にもう1体。オレがやるね!」
返事を待たずに一気に突撃し、頭部を貫き撃破。
振り返ると彼等も丁度倒し終えた様で、周囲の警戒をしていた。
初戦を終えた時、はしゃいでアレクにげんこつ食らっていたからな……。
油断しないのはいい事だ。
「よし。死体を積み重ねたら次に行くぞ」
「はい!」
指示に従いてきぱき行動する新人達。
気を抜いたら死にかねないし、彼等も真剣だ。
ある意味英才教育ともいえるし、これは結構いい施策なんじゃないかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚