2017
「こっち側に一の森の魔物が来るのはやっぱりマズい? まぁ……北の森の南側でも小型の妖魔種がちょっと入って来ただけで大変なことになったけど……」
俺は北の森で遭遇した、一の森の魔物が混ざった群れのことを思い出した。
そこまで苦戦しなかったが、ちょっと入り込んできただけでそこの群れの戦い方も変わっていたし、面倒なことは間違いない。
だが。
「それを想定して数を集めたら対処出来そうじゃないかな? 拠点の防衛も間に合うと思うし、雨季が明けたら冒険者とかもまた立ち寄るでしょう?」
森中の群れ全体で襲ってきたら流石にどうにもならないが、そういう可能性もある……ってことを想定したうえでなら、群れの一つや二つくらいなら十分対処出来るはずだ。
俺の言葉にオーギュストは頷くが、すぐに「だが……」と話を続ける。
「それは我々が一の森の魔物が相手でも対処出来るからだ。直接戦闘した経験でもなければ、それだけで人は近寄ることすら避けるだろう」
「魔境の魔物ってのはそれだけインパクトがあるんだね……。でもさ、他所の人はともかくウチの冒険者とか商人でも?」
オーギュストが部屋の人払いをしているのは、そのネガティブな情報をまだ広めたくないからだってのはわかるが、リアーナの人間だったら一の森の魔物でも浅瀬から出てくるような魔物なら対処出来るのは理解しているはずだ。
まぁ……そもそもこの部屋に出入り出来る者が簡単に聞いた話を漏らすかどうかって気もするが……と考えていると、オーギュストが苦笑しながら口を開いた。
「君が考えている以上に魔境の魔物という付加価値は高い。一の森の魔物と同じ強さの個体がこちらにいたところで、それは魔境の魔物ではないからな。冒険者にとっても商人にとっても旨味はないだろう。人払いをしたのは、騎士団の意見を固めるのには私たちだけの方がいいだろう?」
「そんなもんかな……」
今回の件は他所の人間の安全にも関わりかねないし、執務室でしっかり議事録とかを残しておくのなら、前段階の打ち合わせとはいえ参加する者は限定しておいた方がいいのかもしれない。
俺は「まぁ……いいや」と呟くと、机の上の別の書類に手を伸ばした。
◇
「おや?」
オーギュストの部屋に来てから二十分ほど経った頃、外が急に騒がしくなってきた。
「到着したようだな」
「もう少しかかるかなと思ったけど……早かったね」
北門から領都内に入ってからでも十分以上はかかるはずだし、一時間はかからないにしても、三十分以上は待つつもりだった。
「この天気だ。近くまで来てから伝令を送ったんだろう。もっとも、彼らもその恰好のままでここに来るわけではない。まだしばらくかかるだろう」
外套程度じゃこの雨は完全には防げないだろうし、ずぶ濡れになっているはずだが、家に戻るわけにもいかないからここで着替えとシャワーを済ませるんだろうな。
「大変だねぇ……」
俺には無縁の問題だけについつい他人事のように言ってしまったが、オーギュストもちゃんと理解しているようで、苦笑しながら話しかけてきた。
「屋敷の地下訓練所ほどではないが、ここの浴室も悪くはないぞ? もっとも、君が利用することはないだろうがな」
「わざわざここを使わなくても屋敷まですぐだしね。それより……ここの施設も中々充実してるんですね」
地下訓練所のシャワー室は、屋敷に滞在する貴族のご婦人が利用することを想定しているわけだし、施設もサービスも比べるわけにはいかないだろう。
そのことを知っているオーギュストが「悪くない」というくらいだし、ここの浴室も中々凝っているんだろうな。
「任務中に屋敷に向かう機会も多いだろう? もちろん汚れは落とすが……それでも完全にとはいかない。気を付けても地下通路を汚してしまうかもしれないからな。フィオーラ殿が手配されたんだ」
フィオーラの手配ってことは設計も彼女がやったんだろうし……そりゃ凝ってるはずだ。
多分……オーギュストが言ったように地下通路が汚れるのが嫌だったんだろうな。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚