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「随分と運任せなことを考えるものだ……。暇なのかな?」
笑いを誘うような言い方で肩を竦めるリーゼル。
結構余裕あるな。
「人為的な事はわかったわ。ならやったのは何処かしら?」
セリアーナはそれに付き合う気は無い様子。
仕掛けてきた相手の心当たりを聞いて来た。
「何処、とは言えません。ただ、教会は違うと思います」
「……違うの?」
この街で何かやって来るなら教会位しか思いつかないけれど……。
わからない事が多すぎるから黙っていようと思ったけれど、ついつい口に出してしまった。
「ああ。お前が早期に発見した事やジグさんがいた事で被害は最小で済んだが、正直あのクマを止めるのは相当の犠牲が出てもおかしくなかっただろう?」
「うん。ちょっと倒せる気はしなかったよね……」
ジグハルトの方を見るとフッと笑いながらグラスを掲げた。
「……蹴りてぇ」
「おい……」
本音がうっかり漏れてしまったが、あのまま暴れられたら、この街の頑丈な街壁でもそのうち破る事が出来ていたと思う。
「そうなった場合、街の構造からまず最初に襲われるのは教会地区だ。あいつらが実際にどこまでやるかはわからないが、自分達の身に危険が及ぶような真似をするとは思えないだろ?襲撃の前後数日を調べたが、教会関係者が街から逃げたりもしていない」
「……ほう」
「そうだね。確かに教会地区に僕達を快く思わない連中が集まっているが、彼等の目的は人の手、自分達の手で東部の開拓を阻止する事だ。今回の様に魔物の襲撃での被害は彼等の狙いとは違うし、却って兵を送り込まれて戦力が強化されてしまう」
2人の説明で納得できた。
この街での教会の目的は、自分達が主導権を握る事と、聖貨を効率的に集める事。
その一環でセリアーナを狙っている様だけど、街の崩壊は狙いとは違うはずだ。
「教会が違うのはわかったけれど、結局どこがってのはわからないのよね?」
セリアーナも納得した様だが、結局そこに戻ってしまう。
「帝国や連合国は教会と連携を取っていますし、おそらく小国家群のどこかでしょう。そこから商隊の護衛に混ざってやって来たんだと思います。雨季明けで人の動きも多くそこから全てを調べるのは少々無理があります。ダンジョンならまだ探索届等で調べられますが、森への出入りともなると流石に……」
「そうね……。流石に人の出入り全てを規制するわけにはいかないし……」
「兵の森への巡回を定期的に行わせる事にしたが、代官のままできる事はそれくらいか。来年を待つしかないかな……?」
「ええ。言い換えれば少数しか送り込めません。魔物に慣れていない西部の傭兵なら奥まで行けないでしょう。領主になる来年以降は防げるはずです。……だからこそ今年手を出してきたのかもしれませんね」
こっちもだけれど……相手も色々考えてるんだな。
その後も南北拠点の防衛の仕方などについて真面目に議論を交わしていたが、ジグハルトだけでなく全員が酒を口にし出した時点で俺は退席した。
まぁ、この魔物の襲撃の片付けもいち段落したし、明日は来客や出かける予定は入っていない。
しっかり息抜きしてもらおう。
◇
「……」
「……何か言いたいことでもあるの?」
何も言っていないが、視線から邪推したらしい。
全く……。
ベッドを使わせてもらっているから、深夜に部屋に戻って来たのは知っていた。
部屋の中からだから誰かまではわからなかったが、メイドの誰かだと思う。
その彼女に部屋の前まで付き添われてはいたが、その時は割と平気そうではあったけれど……。
「お嬢様さ……お酒弱いんじゃない?」
セリアーナの額と腹部に手を当て【祈り】と【ミラの祝福】を発動する。
久しぶりの二日酔い治療だ。
「……弱くはないのよ?」
強くは無いのか。
確かワインを果汁で割ったのを飲んでいたけれど、あれそんなに強いのかな?
それともカクテルみたいに口当たりがいいからついつい飲み過ぎてしまうとか……。
「まぁ、ほどほどにね?殿下とか他の人は大丈夫かな?ルバンとか今日、自分の拠点に帰るんでしょう?」
「そうね……私が終わったら2人の様子を見て来て頂戴……」
「はいよ」
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚