2012
エレナが三個の布玉をランダムに放り投げては、俺がその都度【猿の腕】と【蛇の尾】と右足とで順番に弾き返していく。
ほぼほぼ無意識に動かしてはいるが【浮き玉】の操作もあるし、並行して複数の複雑な動作を行っているんだが、我ながら上手くこなせている。
そして、横から黙って俺たちを眺めていたセリアーナは、俺に余裕が出来ていると見たのかエレナと同じく、アレコレと他愛のない質問を投げかけてきたりしている。
ちゃんと意図を理解しているようで、エレナと同じく一言二言で返せるような内容だが……流石に二人の相手をするのは大変だ。
体は全く疲れていないんだが、頭が疲れた。
「ちょっと休憩!!」
俺は布玉を三つとも弾き返したタイミングで両手を挙げて休憩を宣言しすると、二人が何か言う前に俺は窓辺に移動して、そのままソファーに座り込んだ。
「仕方がないわね。エレナ、貴女もこちらに来なさい。貴女から見てセラの動きはどうなのか聞かせて頂戴」
向かいに座っているセリアーナは俺の表情が見えているし、ちゃんと疲労しているのがわかったんだろう。
俺が一息ついている間に、エレナを呼んで話を聞くつもりのようだ。
もしかして……休憩が終わったら今度はセリアーナも参加するんだろうか?
言葉だけじゃなくて布玉でも二対一になる可能性に少々ビビりつつ「……まぁ、いいか」と小声でつぶやくと、とりあえず休むためにソファーの上で崩れていった。
◇
さて、セリアーナがエレナから報告を聞き終えたことで、俺の短い休憩時間も終了した。
まぁ、疲れていたのは頭だからちょっと一息つけば問題無い。
だが……訓練を再開することになったんだが、やはりセリアーナもエレナと一緒に参加するようで、さらに布玉が追加されていた。
感触を確かめるように、セリアーナはエレナがしていたように手の上で布玉を跳ねさせているが、ふと思いついたようにこちらを見た。
「セラ、左手は使わない理由はわかったけれど、右手はどうなの? そちらは普通に扱うでしょう?」
「右手は……【影の剣】だからねぇ。こんな感じ」
俺は二人に見えるように右手の人差し指をたてて小さく振ると、【影の剣】は危険すぎるから部屋の中で発動するような真似はしないが、その場でそのまま普段の戦闘と同じように右手を動かしてみた。
適当に左右にブンブン振ったり、正面に突き出したりだ。
何も知らない人から見たら何をやっているんだろうと思うだろうが……彼女たちならそれだけでちゃんと伝わるはずだ。
初めは不思議そうにその動きを見ていたセリアーナだが、すぐに理解したようで「ああ……」と頷いた。
「仕掛ける場所を狙うには、右手を動かすのではなくて【浮き玉】で調節しているのね」
「そうそう。斬りつけ方とかはちゃんと考えるけど、基本的に【浮き玉】で合わせてるんだ」
「それなら右手を動かすと却って戦いにくくなるかもしれないね」
二人が言うように、狙うポイントだったり仕掛け方はその都度判断するが、基本的な動作自体は決まっている。
動かない的が相手ならともかく、普段の戦闘だと【浮き玉】で高速移動しながら斬りつけるから、速すぎて俺の腕じゃ狙いをつけることは出来ないんだよな。
それなら、動作そのものは決まった物にして、どんな状況でも確実にソレを行えるように……って方針だ。
だからこそ、下手に難易度の高い訓練をすると、却って逆効果になってしまう。
「お前はつくづく変な風に育ったわね……」
セリアーナがしみじみと言うと、エレナが苦笑しながらフォローをしてくる。
「セラは小柄ですし、どうしても普通の戦い方では難しいでしょう。むしろよく自分に合った戦い方を見つけたものですよ」
「出来ることをやってたらこうなった……ってだけなんだけどね。それより、続きをやろうよ」
呆れられても困るが褒められても困る。
俺はさっさと再開しようと促すと、セリアーナが笑いながら口を開いた。
「そうね。私も加わるから、二つ増えるけれど……頑張りなさいね?」
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚