2011
「雨季が明けたらすぐに出発するのかな?」
「……そのつもりだよ!」
「そんなに長い期間じゃないけど、毎日ウチに戻って来るんだし大変だね?」
「そんなことないよ!」
【猿の腕】と右足での布玉の弾き返しに徐々に慣れてきたところで、今度は会話も加えて来た。
内容自体はそこまで返答が難しいものではないが、それでも考える必要があるし、色々操作しながらとなればなかなか難しい。
どうしても返答は一言になってしまう。
それでもちゃんと会話は成り立っているし、エレナもその辺のことはわかっているんだろうな。
「セリア様も君の負担が大きいんじゃないかって心配していたし、あまり無理をしたら駄目だよ」
エレナの言葉に、これまで同様に「無理はしないよ!」と一言で答えたが。
「おや?」
俺は右足を伸ばした恰好のまま空中で停止した。
「うん? どうかしたのかな?」
「いや、セリア様が心配してたってのがね?」
俺が慣れない仕事に忙殺されて……って話はしているが、そんなに心配していたかな?
セリアーナの部屋や執務室での彼女の様子を思い出すが……そんな様子はなかったような気はするんだけどな……と、首を傾げる俺を見てエレナは笑っている。
「セリア様のことだから、君の前で直接は口にしないだろうけどね」
「なるほどねぇ……まぁ、それならしっかり動けるようにしておこうかな」
何だかんだでセリアーナには色々気を使ってもらっているし、エレナが言うように確かに心配かけさせるのはよくないことだ。
まぁ……必ずしも俺が悪いってわけでもないんだが、セリアーナが心配しているような事態にならないようにするためにも、この細かい運動も手を抜いちゃいけないよな。
俺がやる気になったのがエレナにもわかったのか、「続けようか」と布玉を見せてそう言った。
◇
「……貴女たち。先程人であることを忘れてはいけないとか言っていなかったかしら?」
エレナとの訓練に精を出すあまりに、セリアーナが部屋に入って来ていたことに気付けなかった。
「セリア様……いつの間に……あいたっ!?」
急な声に驚いてドアの方に振り向くと、飛んで来た布玉の一つが頭に直撃してしまった。
痛いと言ってしまったが、痛みは全くと言っていいほど無い。
ただ、無防備なところに来たので衝撃は中々どうして。
フラフラと【浮き玉】の高度が下がって行き、絨毯に着地した。
「大丈夫? 気が抜けてしまったね」
こちらにやって来たエレナが手を伸ばしてくる。
俺は頭をさすりながらその手を取ると、再び【浮き玉】を浮かび上がらせた。
「大丈夫大丈夫……ビックリしただけ。エレナは驚いてないね?」
「私はセリア様の様子は把握出来ていたからね。もちろん、部屋に入って来たことも気付いていたよ」
エレナは苦笑しながら顔を横に向けると、セリアーナもこちらにやって来ていた。
「お前は全然ダメだったわね。【妖精の瞳】を発動していないから向こうにいた時は仕方ないにしても……部屋に入って来た時点で気付きなさい。まあ……その二つを解除しなかったことと、剣を落とさなかったことは褒めることかしら?」
そう言って、俺の肩から生えている【猿の腕】と腰から生えている【蛇の尾】を見た。
ちなみにどちらにも木剣を持たせていて、今もしっかりと掴んでいる
「……自分の手ではなくて恩恵品で剣を扱う訓練をするのはお前くらいね」
「初めは【猿の腕】だけでしたが、動きがこなれてくる度に右足、【蛇の尾】と追加していきました」
「右足……ああ、【緋蜂の針】ね? 左手は使わないの?」
「セラは左手はほとんど使わないでしょう。使うにしても【琥珀の剣】ですし、アレの扱いに精密さはそこまで求められませんからね」
「当たりさえすればいい物だし……そういうものなのかしら? まあ、いいわ。見ていてあげるから続けなさい」
俺たちに付き合うつもりなのか、セリアーナはそう言って窓際のソファーに向かって歩いて行った。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚