2009
俺の部屋に移動すると、まずはエレナは軽く腕を回したり腰を捻ったりし始めた。
一応俺の部屋には彼女専用ではないものの、ここを出入りする彼女たちの服も用意しているんだが、着替えたりせずにその恰好のまま俺のリハビリに付き合うつもりみたいだ。
「まぁ……軽く腕を動かす程度だろうから大丈夫とは思うけど……いいの? 着替えはあるよ?」
「戦闘訓練をする訳じゃないんだしこの恰好で問題ないよ」
念のため確認したが、エレナもそう言っているし……このままでいいんだろう。
それなら……と、準備運動を続けるエレナはおいといて、部屋の中のスペースを空けることにした。
【蛇の尾】と【猿の腕】を発動すると、部屋の真ん中に置かれているテーブルを持ち上げて隅に運んで行く。
【蛇の尾】も【猿の腕】も、どちらも俺の筋力よりはずっと力を出せるため、両腕プラスその二つを使えば俺でも持ち上げることが可能だ。
「器用なものだね。【浮き玉】に乗りながらでもそれだけ動けるんだね」
絨毯の上を引きずらずに運んでいる俺を見て、エレナが感心したように話しかけてきた。
エレナも普段から俺が【浮き玉】に乗って日常生活を送っていることくらい重々承知しているんだが、それだけにこういった滅多に見せないようなことをすると驚くらしい。
「まぁ……動いてない物だしこれくらいなら簡単だよ。【浮き玉】から下りたらどうかはわかんないけどね」
「……普通は馬や馬車のように何かに乗りながら動く方が難しいと思うけれど、君にとっては関係ないみたいだね」
笑いながらそう言うと、部屋の奥の棚に置いてある木剣を二本手に取って、同じ棚から手入れ用の布を二枚取り出し、木剣に巻き付けていく。
怪我防止のためか騒音防止のためか……後者かな?
ともあれ、エレナは布を巻き終わると、具合を試すように木剣を何度か手に打ち付けている。
そして、納得がいったのか一本をこちらに差し出してくる。
「準備は出来たよ。まずは……コレから始めようか」
俺は「そうだね」と答えると、尻尾で受け取った。
◇
まず初めは【蛇の尾】からだ。
構えたエレナに向かって尻尾を巻き付けた木剣を軽く振り下ろしていく。
上段、中段、下段、さらに左右に不規則に振り分けているエレナの木剣の動きに、俺も操る尻尾を合わせている。
それほど速く動かしているわけじゃないから、普通にやる分には特別難しいことではないんだが、それを尻尾でやるのは中々どうして。
尻尾は1メートルほどのサイズにしているが、それでも振り回し方次第では壁や天井にぶつかってしまうから、一振り一振りしっかり集中しないといけない。
実戦での恩恵品の操作は感覚で行うものだが、その前にこうやって一つ一つ動作を確認するのはいい訓練になるな。
俺は気分よくそのまましばらく尻尾を振るっていたが、エレナが木剣を受け止めたかと思うと、クルっと巻き取ってしまった。
「初めより動きが良くなってきたね。攻守を交代しようか」
尻尾から奪い取った木剣を渡して来ながら、そう提案してきた。
「ぬ……了解」
その言葉は予測は出来ていたんだが、それでも返答には少々躊躇いが出てしまった。
戦闘で俺が攻撃を受け止めるなんてことは基本的にないんだが、これもリハビリの一環だ。
俺は受け取った木剣に尻尾を巻き付けると、前に伸ばして構えをとった。
俺が緊張しているのが表情からわかったのか、エレナが笑いながら声をかけてくる。
「要領は先程と一緒だよ。ゆっくり私が木剣を振り下ろすから、それを受けるだけでいい。簡単でしょう?」
「そうだね……っとぉ!?」
ゆっくりではあるが合図も無しに振り下ろしてきた木剣を、叫びながら慌てて受け止めた。
その慌てっぷりがおかしかったのか、エレナは笑いながらさらに腕を振るう。
「上手上手。さあ、ドンドン行くよ」
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




