2008
雨季が明けたら俺は久々に単独で一の森を探索することになる。
右足の怪我はもう完治したし【緋蜂の針】を使った戦闘も可能になっている。
昔から【浮き玉】と【緋蜂の針】と【影の剣】を組み合わせた戦闘は散々行っているし、少々間は空いてしまったがリハビリなんかしなくても、一戦二戦突っ込めばすぐに勘を取り戻せる。
先日の一の森での戦闘でもすぐに問題無く戦えたし……もう元通りと言っていいだろう。
ただし、他の恩恵品との組み合わせは別だ。
今までも狩りから遠ざかることはあったが、今回のように負傷での長期離脱はなかったし、改めてそれぞれの動作をしっかりと確認をしておきたかった。
そういったことを、俺を捕獲しているエレナに向かって説明しているんだが……。
「それでも、せめて作業は一つ一つ分けていかないかい? ストレッチはストレッチ。読書は読書。そんな風にね?」
どうやらエレナは、先程のストレッチをしながら尻尾を使った読書がお気に召さなかったようで、中々俺を離してくれない。
「いやいや……日常生活で使えるくらい自由自在に動かせるから、外で魔物相手に咄嗟に動かす時にも役に立つんだよ。エレナも尻尾使ってみない?」
俺としては決してふざけているわけではないしアレでも大真面目なリハビリだったんだ。
それを理解してもらうためと……ついでに、俺以外誰も試そうとすらしない尻尾を普及しようとエレナに勧めてみた。
「私じゃ使い道が無いからね。遠慮させてもらうよ」
だが、エレナは迷う素振りすら見せずに即断った。
さらに。
「エレナに変な物を勧めないで頂戴」
俺たちの話が聞こえていたのか、セリアーナがこちらを見もせずにそう言ってきた。
【猿の腕】などもそうだが、ちょっと変わり種の恩恵品を勧めると大体セリアーナに止められるんだよな。
エレナの膝の上で唸っていると、「そういえば……」と話しかけてきた。
「私は昨日はこちらに来ることが出来なかったから、簡単な報告しか受けていないんだ。一の森の件も含めて教えてもらえないかな?」
「話題を変えて来たね? まぁ……いいよ」
【蛇の尾】や【猿の腕】などの良さをもう少しアピールしたかったんだが、エレナがそれらを使う機会がないことも事実だし仕方がない。
俺はエレナの言葉に頷くと、昨日の話をすることにした。
◇
さて、時折セリアーナから飛んでくるツッコミをあしらいながら、俺はひと先ずエレナに昨日のアレコレを話し終えた。
エレナも俺の雨季明けのスケジュールを知って、先程のリハビリの意味を把握出来たようで「仕方がないね……」と、俺を掴んでいた両手を放してくれた。
もっとも、エレナ的にはあの姿は無しだったらしく、ソファーから下りないように肩に手を回される。
「雨季明けの狩場は魔物が動き回ってるから危険なんだけど……元々君は一人で行動する方が向いているから平気かな?」
「どうせオレが探索するのは浅瀬だからね。奥まで行かなければ余裕余裕」
倒さない魔物との接触を避けながら……だから好きに動き回るわけにはいかないが、それでも浅瀬の魔物ならベストコンディションなら逃がすことなく倒し切るのは難しいことではない。
「君が狩場で気を抜くようなことはないのはわかっているけれど……しっかりと体の動かし方を思い出しておかないとね」
部屋を軽く見まわすと、俺を膝から下ろして立ち上がった。
「私がつき合うよ。ここだとちょっと手狭だね。地下の訓練所に行くほどでもないし君の部屋でいいかな?」
エレナは運動に相応しい恰好ではないが、剣を振り回すわけじゃないし十分だろう。
「尻尾とか腕を軽く動かすだけだしね。それじゃー……っと!」
俺も「よいしょっ!」と気合いを入れると、ソファーから下りて床に転がしていた【浮き玉】に手を伸ばした。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚