1998
兵舎に入る前に一の森の様子は確認していたし、その後は中の兵たちに普段の森の様子も説明してもらった。
魔物が森の端をウロウロしていたが、それ自体はそこまでおかしなことではないってことがわかったし、兵たちも魔物にわかるような形で警戒をしている。
定期的に櫓に上がって森の監視もしているようだし、対処出来る兵たちの数もそろっているから心配はいらないだろう。
兵たちに外の櫓に上がるか……と聞かれたが、ここのことは兵たちに任せて大丈夫だろうし、その必要はない。
俺たちの目的はもう果たせたし、屋敷に帰っていいんじゃないか……と思ったんだが、フィオーラが兵の誘いに「折角だから」と乗り気だったため、俺も一緒に付き合うことにした。
案内する兵を誰にするかで少々揉めかけたが、最初に声をかけてきた兵たちにすると俺が決めて、さっさと外に出ることにした。
◇
櫓は兵舎のすぐ側に建っている。
屋根伝いに移動出来るようになっていて、俺の【風の衣】抜きでも雨に濡れることはない。
兵たちは外套や傘を持たずに出て来たのが不思議だったんだが、これなら確かに必要ないだろう。
さらに。
「……ここの櫓ってしっかりしてるよね。梯子じゃないし」
櫓を上っている兵たちに、外から声をかけた。
今までこの櫓の近くを飛ぶことはあっても、地上から上まで移動する機会はなかったので気付かなかったが、他の拠点のように単純に木で組んでいるってわけじゃなくて、しっかりと建材を用いている。
何といっても、彼らが上っているのは梯子じゃなくて階段なんだもんな。
その方が上りやすいのは確かなんだが……手が込んでいるよな。
感心する俺に向かって、兵の一人が森の方を指しながら口を開いた。
「ここでもし異常を見つける時ってのは、向こうに何かが起きている時だろう? 監視をしながらいつでも戦闘に移れるように武装していることがほとんどなんだ。そんな恰好で梯子を上り下りしたくないからな」
彼がそう言うと、俺の隣に浮かんでいるフィオーラも続けた。
「そうね。外の開拓拠点だと魔物相手の対処法は籠城だから、監視兵に武装は必要ないけれど……ここだとそうはいかないものね」
二人の言葉に、今まで俺が参加した魔物の襲撃時の様子を思い浮かべた。
大体領都内の騎士団の兵と冒険者たちと一緒に、街壁から離れた位置に布陣していた。
そして、街壁からの情報を基にした本陣からの指示を、馬に乗った伝令兵が伝える……って感じだ。
「確かにここって人がいなかったかも……」
俺も伝令役として飛び回ることが多かったが、よくよく思い返せば訓練場は待機場所何かに使われても、櫓には人がいなかった気がする。
「まだ布陣が完成する前には、ここからの情報も大事なんだけどな。いざ完成してしまえば、むしろ残っていても危険なだけで役に立たないから、さっさと下に合流するんだ」
「なるほどねぇ……」
「街壁と高さも距離も大して違いが無い上に、向こうの方が大人数で移動も出来るからな。平時の監視がメインの役割だ……ふう……着いたな」
喋りながらも階段を上っていたが、天辺の監視所に上りきったところで、兵たちが壁に備え付けられた照明を点けていく。
フィオーラも手伝い、俺だけ手持ち無沙汰になってしまった。
だから、なんとなしに一の森を眺めていたが。
「……おや?」
「下がって行ったか?」
「うん。といっても……まだここから見えるくらいの位置にだけどね。いつもなの?」
明かりが点いただけなのに、森の端をうろついていた魔物たちが後退していっていた。
「ああ。いざ戦闘になれば勝てないってことがわかっているんだろうな。だから、こうやって隙を見せなければ十分だ」
「パターンを覚えられたりする可能性は?」
「それも考慮して、上ってくる時間は毎日変えています」
フィオーラが疑問を口にすると、一人がすぐに答えた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




