1994
「ちょっと待っててね!」
向こうの雰囲気から何か問題が起きたわけではないってことはわかるんだが、俺が商人たちに冒険者を集めて何をしていたのか説明をしているタイミングでこうなると、何事かと思うだろう。
俺は商人たちに一言断って、フィオーラたちの下に向かうことにした。
冒険者たちは何やら嬉々として受付で書類にサインをしていて、フィオーラは一歩下がった位置でその様子を眺めている。
「何があったの? 向こうの皆がビックリしてたよ?」
「あら、ごめんなさいね? 報酬額が決まったところなんだけど……」
そう言って、はしゃいでいる冒険者たちに視線を向ける。
「いくらにしたの?」
雨の中とはいえ調べる場所は安全な領都内の東門近くで、時間も三十分足らずだったし、若手の冒険者たちだ。
思い付きの緊急な依頼だったとはいえ、そこまで高額にならないはずだが、あのはしゃぎようを考えると……大銀貨辺りか?
わからん。
首を傾げていると、フィオーラが何ともない声色で答えた。
「一人当たり金貨一枚になったわ。悪くないでしょう?」
「っ!? ……銀貨はないにしても……大銀貨一枚か二枚あたりと思ったんだけどね」
若手ならそりゃー……はしゃぐのも無理はない。
「……なんでそんなに高いの?」
フィオーラ個人の裁量で支払うのならともかく、冒険者ギルドを通している以上はそこまで相場から離れた金額にはならないと思うんだが……何故こんなことに?
「まあ……それは後で説明するわ。とりあえず、彼らに報酬は支払われるから、安心しなさい……あら? どうしたの?」
フィオーラが話の途中で俺の後ろに向かって声をかけた。
どうしたのかなと振り向くと、先程俺が話していた商人たちがこちらにやって来ている。
その中の一人……先程最初に口を開いた商人が前に出て来た。
誰もそのことに口を挟んだりしないし、どうやら彼らの中の代表みたいな存在らしい。
その彼がフィオーラに何があったのかを訊ねた。
もっとも、冒険者の様子が気になるというよりは。
「何やら若い冒険者の方々に仕事を依頼されたようですが……我々もお手伝い出来ることはあるでしょうか?」
フィオーラが絡んだ美味しい仕事だと思ったのかもしれない。
一枚噛めないか……とでも考えているんだろうな。
そういうのじゃないんだけどな……と考えながら、どう答えようかとフィオーラを見ると、こちらを見て小さく頷いた。
任せていいんだな……と、俺は彼女の横に移り前を開けた。
「今日は臨時で彼らに手伝ってもらったの。今後も似たような案件はあるかもしれないけれど……騎士団との合同任務になるはずよ。だから、貴方たちに依頼が回るかはわからないの。ごめんなさいね?」
フィオーラがそう言うと、彼らはすぐに納得して引き下がっていく。
どうやら中断した俺の話も、今ので解決したようだ。
俺が言ってももう少し粘られるような気がするが……説得力の差か?
それとも……と考えを進めようと思ったが、今はいいかと、だらしない顔で下がって行く商人たちを眺めていた。
◇
商人たちへの説明を終えた後、冒険者たちといくらか言葉を交わして解散となった。
急な依頼ではあったが、小遣い稼ぎと呼ぶには十分過ぎる報酬だったし、まぁ……大丈夫だろう。
もっとも……報酬抜きでも別に問題無かった気もするけどな。
「どうかしたの? ジッと人の顔を見て」
俺の視線に気付いたフィオーラが訊ねてきた。
「大したことじゃないよ。ただ、皆美人さんには弱いんだなって思ってね」
ジッとフィオーラを見ながら言った俺の言葉に、彼女は「何を言っているの」と苦笑しているが……冒険者ギルドでの光景を思い出しても、その考えは間違いないと思っている。
冒険者たちも商人たちも、フィオーラの言葉にあっさり従っていたが……アレはそういうことだよな?
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




