1989
俺のすぐ上にいたフィオーラが入り口前の冒険者たちに声をかけると、全く気付いていなかったのか、彼らは俺を相手にした時と違って面白いくらいに慌てふためき、揃って入口の扉の前まで下がって行った。
「フィ……フィオーラ様もいらっしゃったんですか……」
そして、一人が上ずった声でフィオーラに声をかける。
別におかしなことを言っていたわけでもないのに、そこまで怖がるような相手なんだろうか……?
「そうそう。オレはフィオさんのお手伝いなんだ」
とりあえずこの空気をどうにかしないとと思い、彼らに説明をすると、「お……おう……」と額の汗を拭いながら頷いた。
そこまでビビるような相手かな……と不思議に思って首を傾げていると、立ち直ったのか一人が口を開いた。
「フィオーラ様、もし必要なら自分たちも手伝えますが……」
「何でしたら中の連中にも声をかけてきますよ」
さらに続いた一人がフィオーラの返事を待たずに冒険者ギルド本部の中に入ろうと踵を返したが、流石に俺が待ったをかけた。
「待ってよ。まだ何するかも聞いてないでしょ?」
俺の言葉に、扉に手を伸ばしていた彼は「おっと……そうだったな」と言って戻って来た。
その彼を見て、周りの冒険者や兵たちが笑っている。
コイツら……怖がっているとかビビってるとかじゃなくて、もしかして舞い上がってるのか?
「まぁ……いいか。フィオさん、どうしようか?」
一応勝手に仕切りはしたが、実は俺自身も何をしたらいいのかよくわかっていない。
どうしたもんかな……とフィオーラに指示を仰ぐために彼女を見ると、苦笑しながら彼らの方に進んで行った。
「街壁の手前に水路が巡らされているでしょう? そこに魔力が漏れていないかを調べに来たの。これから照明の魔法をいくつか水路に落とすから、貴方たちも一緒に見て頂戴」
フィオーラがそう言うと、揃って「わかりました!」と威勢良く返事をした。
そして、先程先走って本部に入ろうとしていた彼が、人手を集めるために再びそちらに向かって行く。
雨の中外に出て行くことになるのに、随分やる気になっているな。
ダンジョン内の手頃な狩場が大手に押さえられているとか言っていたし、不完全燃焼なのかな?
俺が扉を眺めて首を傾げていると、冒険者たちがフィオーラに話しかけていた。
「その……フィオーラ様。手伝うと言いましたが……魔力の漏れなんて俺たちでもわかるんでしょうか?」
俺なら【妖精の瞳】があるし、じっくり見ればわかるだろうが……普通の人間だとどうなんだろうな?
もちろん、リアーナでダンジョンに潜れるほどの稼ぎがある時点で並の冒険者よりも実力は上なんだろうが……それでもフィオーラのように魔力の扱いに長けているならともかく、そうじゃないだろう。
彼らも不安になったのか、声に先程までの勢いが無くなっている。
だが。
「問題無いわ。もし水路に魔力が漏れているのなら、照明の魔法の光り方が違って見えるのよ。私たちは先に行って準備をしておくから、後から来た者たちに今の言葉を伝えておいて頂戴」
「なるほど……わかりました!」
フィオーラの言葉に安心したのか、また声に力が戻った。
彼らに向かって頷くと、フィオーラは「行きましょう」と言って水路がある方に向かおうとした。
フィオーラが【風の衣】の範囲から出てしまわないように、俺は慌ててその後を追っていく。
◇
とりあえずの準備として、街壁のすぐ手前を流れている水路にフィオーラが照明の魔法をどんどん撃ち込んでいっている。
光量は抑えめで水路からすこし漏れている程度で、特に何か特殊な工夫を施しているようには見えない。
ただの照明の魔法だ。
「……これで何かわかるの?」
「ええ。後で説明してあげるわ。貴女の恩恵品を使えば簡単だけれど……一ヵ所ずつしか見れないし時間がかかってしまうのよね。人手を借りられて良かったわ」
フィオーラはそう言って、別の場所に移動していった。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚